厚み (囲碁)
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囲碁における厚みとは盤上に於いて影響力を及ぼす石のことである。
「厚み」は「薄み」に対する対義語である。囲碁で「薄い」というのは連絡が十分取れていない形のことであり、相手に分断される可能性を持っている。囲碁では分断されると、相手を取り込んでしまわないかぎり、別々に生きなければならず、危険が大きい。これに対し、連絡を十分にした「厚い」形は、切られはしないものの局所的に手数をかけすぎていて、全体として偏った着手かもしれない。 だが、広大な空地を目の前にした厚みは話がちがってくる。その空間にはいずれ石がやってくるために、そこで起こる戦闘を、切断を気にせずに有利に戦うことができる。また、相手が恐れて戦闘を控えたならば、模様をまとめて大きな地を得ることができる。厚みはこういった戦略的性格を強く持っている。
[編集] 概要
囲碁に於ける厚みとは何なのか?これを完全に定義しきることは難しい。プロ棋士が「これは厚みである」と考えたたとしても別のプロ棋士が「これは厚みではない」と考える場合もありうる。
これは黒の星に対して白が三々入りしたときの定石の一形である。このワカレ(進行)で白は隅に10目ほどの地を得、それと交換に黒は厚みを得た。この厚みは下辺および中央に向かって影響力を及ぼしおり、対局が進行する中で様々な利益をもたらすことが期待される。
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例えば、前の図に左下の星に黒が加わった場合と単に左右の星に黒がある場合とを比較してみる。下辺が黒の勢力圏であることは同じであるが、その強度には大きな違いがある。白が下辺に割って入ろうとした場合、右図ではさして苦労がなく活きることが出来るだろうが、左図では下辺だけでは眼を作るのが困難であり、盤中央へ逃げ出さなくてはならない。逃げることが出来たとしてもその間に打った石は白がただ単に逃げるだけの石であったのに対して、黒の石は地を作ったり、あるいは更に厚みを作ったりすることが出来る。
囲碁格言に「厚みに近寄るな」「厚みを囲うなかれ」とあり、厚みの近くに石を置くことを戒めている。例えば上図において、白、黒ともに赤丸の位置に打つような手がそれである。白が打てば厚みに近寄ることになり、これは前述のように活きることに苦労するために良くない。また、黒が打てば厚みを囲うことになり、これはより多くの利益を見込める厚みを自ら小さく閉じ込めてしまうことになり良くない。
厚みと似た概念に模様・勢力があるが同じ概念ではない。