碁石
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碁石(ごいし)は、囲碁、連珠に使用する用具で黒・白2色の円形の石。2色で一揃いとなり、ゲームを行なう上では黒181、白180を用意する(ただし、この個数にルール上の意味はなく、対局中に不足した場合は適宜補充する)。囲碁を行なう上では単に石と呼んだりする。碁笥(ごけ)ないし碁器(ごき)と呼ばれる容器に入れておく。連珠では「珠」と呼び、白112個、黒113個を用意するが、実際には60個程度ずつで差し支えない。
大きさは白石が直径21.9ミリ(7分2厘)、黒石が直径22.2ミリ(7分3厘)。黒石のほうが若干大きいのは、白が膨張色でやや大きく見えるため。この大きさで、人間の目にはほぼ同じ大きさであるように見える。厚さは6mm~14mm程度まである。一般に、厚いものほど高級品とされる。
碁石に関する日本最古の文献は風土記(733年頃成立)に見られ、常陸国風土記に鹿島のハマグリの碁石が名産として記述されている。また出雲国風土記に「玉結浜」の伝説があり、この海岸からは碁石に適した石が採れたという。奈良県の藤原京で発掘された碁石は丸い自然石で、材質は黒石が黒色頁岩、白石が砂岩。7世紀末~8世紀始めに使用されていたと推定される(週間碁)。自然石の碁石は江戸期まで使用され、本因坊道策が幼いころ使ったという碁盤と自然石の碁石が現存している。
正倉院に所蔵された聖武天皇愛用の碁石は紅牙撥鏤碁子(こうげばちるのきし)と名づけられ、直径1.6cm 厚さ0.8cm。当初は600枚が収められたと伝えられるが現存は252枚である。象牙を染めて花鳥の文様を彫り付けたものであり、色は緑と紅色である。源氏物語絵巻では碁石は黒と白のものが使用されていることがわかる。
現在は黒は黒色の石を用い、那智黒石(三重県熊野市で産する黒色頁岩または粘板岩)が名品とされる。白はハマグリの貝殻を型抜きして磨いたものである。碁石の材料となるハマグリの代表的な産地は古くは鹿島海岸や志摩の答志島、淡路島、鎌倉海岸、三河なども碁石を産した。鹿島のハマグリは殻が薄く、明治期の落語の速記本に「せんべいの生みたく反っくりけえった石」と描写されるように、古い碁石は5mm以下の薄いものが多い。その後、文久年間に宮崎県日向市付近の日向灘沿岸で貝が採取されるようになり、明治中期には他の産地の衰退とともに市場を独占し上物として珍重されたが、現在では取り尽くされてほとんど枯渇してしまっている。現在一般的に出回っているものはメキシコ産である。 黒石に対してハマグリ製の白石は非常に値が張る。貝殻の層(縞のように見える)が目立たず、時間がたっても層がはがれたり変色したりしないものが高級品である。
ハマグリの碁石は庶民が気軽に買えるものではなく、明治期には陶器や竹製の安物の碁石が存在した。大正時代にガラスの碁石が試作されたが、当初は硬化ガラスではなく普通のガラスだったので極めて割れやすいものだった。その後プラスチックや硬質ガラス製の製品が出回ったが、安価な用具の大量生産が囲碁の普及に果たした役割は大きいと言える。近年では持ち運び用のマグネット製のものもある。高級品でメノウ製のものもある。
中国では古代には木で碁石を作ったらしく、中国呉の時代(222~280)に書かれた「博奕論」(韋曜)に「枯棊三百」 と記されている。「枯棊」とは、木でできた碁石のことを指し、日本の寛永年間(1624~1644)の「玄玄棊經俚諺鈔」という解説本には、「碁石は元と木を似て造る、故に枯棊と云う」と注記している。また碁石は300個が定数であったことも記されている。時代が下ると、高級な碁石は「玉(ぎょく)」と呼ばれる一種の宝石から作られた。中国[[唐代の「杜陽雑編」という書物に、宣宗帝年号大中年間(847~860)に日本一の碁の名手である日本の王子が来朝し、中国一の名手と対戦する逸話の記載がある。日本の王子は日本には冷暖玉という宝石の碁石があることを物語り、「本國の東に集真島有 島の上に凝霞臺とて臺上に手譚池あり 池中に玉子を出す 製度によらされども自然に黒白明分有 冬ハ暖く夏は冷也 故に冷暖玉とぞにいふ 日本の王子入唐して此石を冷暖玉として唐朝へ進上せらると載たり」と記されている。 玉の碁石は割れやすく、日本のように音を立てて盤に打ち付けるということはなかった。中には石一個が銀貨二枚に相当するとされるほど高価なものもあったが、かつての名品の多くが、碁は退廃的として攻撃された文化大革命時代に収集家より奪われるなどして散逸してしまった。
[編集] 碁笥
古くは合子(ごうす)と呼び、碁石を入れておく容器で、現在はクワやクリの木などをくりぬいた丸い容器を使う。江戸時代の碁笥は缶のような筒型をしており、孟宗竹を輪切りにして製作した碁笥も多く見られた。表面は木地を出すことが多いが、凝ったものには蒔絵や鎌倉彫を施したものも見受けられる。
[編集] グリーン碁石
通常の碁石は白と黒の2色を用いるが、目に優しいとされる緑系の色を用いたグリーン碁石もそう多くはないものの使用されている。これは作家の夏樹静子が発案し広めたもので、黒の代わりに濃い緑を、白の代わりに薄い緑を用いている。 素材は硬質ガラスで、厚さは使いやすく9mmで作られている。 普通の白黒の碁石に比べて値段は高い。日本棋院の一般対局室の一部でこれが使用されている。