医局
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医局とは、主に大学医学部・歯学部・病院等においての各「研究室」、「診療科」、「教室」ごとのグループ組織のこと。
大学病院内だけの組織だけでなく、大学病院を頂点として関連病院等も含めた一大グループ組織であることが多い。
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[編集] 構成
以下に旧来よりの一般的な医局の階級の一例を示す。
[編集] 人事
医科大学・歯科大学附属病院では、各診療科の医師・歯科医師の人事については大学病院ではなく各医局の長である教授が実質的人事権を持つことが多い。なお、附属病院における医局と学部における講座は実質的に同一であることを考えれば、各講座の医師・歯科医師の人事については大学ではなく各講座の長である教授が実質的人事権を持つことが多いと読み替えることができる。
上記人事は病院内での職場配置だけでなく、関連病院への派遣も含まれる。すなわち関連病院は診療科ごとに医師・歯科医師の人材の供給を大学に依存している。公立病院であっても例外ではなく、このことを問題視する声もある。
特に自治体の設置する病院など公的な性質の強い病院の場合は、医師を含め職員の採用は本来求人を公に行い、学歴に関係なく実績や能力のあるものが採用されるべきである。ところが医局による人事では、全てが病院と直接関係ない地元の医学部教授に一任され、時には採用される医師の意向さえ無視し教授の独断で就職させられることもあり、問題となってきた。
教授を頂点とする医局のシステムは、診療科の診療方針全般、及び上記のように関連病院の人事について決定権を持つため、治療薬の選択、医療機器の導入、各医学部による関連病院の実質的な支配など大きな利権が生じる余地があると長年批判の対象となってきた。しかし、2004年の新研修医制度導入などの厚生労働省の政策により、近年の医局の影響力低下は著しい。以前ならば大学の医局に入局した卒後医師の多くが、都市部の大病院での研修を希望した結果、医局に入局する医師の数は激減している。このため医局の指導力と絶対的人事権が崩れ、恵まれない環境でも医師が出向せざるを得ない、との状況は過去のものとなった。その結果、大学病院自体の人手が不足し、さらに地方の関連病院や過疎地の診療施設へ赴任する医師が激減している。特に地方の医大において、こういった傾向は著しい。
一連の厚生労働省の施策は、いままでの悪しき習慣としての医局を破壊し、権力を削ぐという点では一定の成果を挙げたものの、地方の基幹病院の統廃合とレベルアップの方策がないままに、医局による医師派遣を必要としてきた地域医療の崩壊をもたらしているとして、功罪半ばと言える。そのため、院長になる資格として、僻地医療を経験した者とする制限を設けようという動きもある。
[編集] 近年の傾向
研修医は、卒業後、卒業大学、または他の大学の医局に入局する義務はないが、多くの場合、どこかの医局に属することになる場合が多い。知識・技術を向上させる上で医局での教育システムが重要であることと、後期研修のできる職場を自分で探すのは大変だからである。近年では医師不足の傾向があり就職は大きな問題点とはならなくなりつつある。
[編集] 例外
国立大学とその附属病院でありながら、こうした旧態的な医局制度を持たない存在として筑波大学と同附属病院がある。当時の大学運営部が権力の掌握の為、権力機構となりうる医局を排除した為である。その為独特の研修医制度を持っており、専門診療科以外の病棟での研修も行われる。