包括政党
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
包括政党(ほうかつせいとう、英:catch-all party)とは、特定の階級に限定せず、幅広い階層からの支持を獲得するために、多岐にわたる理念と総花的な政策を掲げた政党。大衆政党・国民政党と類似するが、一党制の国家政党でも成立しうる余地はある。
19世紀の政党は特定の名望家によって構成され、都市と地方間など特定の利害のために動くことが多かった。普通選挙によって農民や労働者にも選挙権が与えられると、彼らの階級を代表する政党が形成されるようになり、利害対立は一層激化して、やがてその中で社会的な不満を抱く層と結びついたファシズムが政権を掌握する隙間を生むことになった。
これに対して大衆民主主義の中で特定の階級のみを支持基盤とするのではなく、全市民の共通する利益の獲得を目指す基本政策を軸に据え、更に個々の階級の利害に則した政策を付加していくことで全ての階層の支持を得ていこうとする考え方が生まれた(ただし、それが全て民主主義志向の政党であるとは言い切れないが)。これが包括政党である。
特に1959年の西ドイツにおいて当時の社会民主党が労働者階級の政党を脱却して包括政党を目指すことを宣言したバート・ゴーデスブルグ大会の例は良く知られており、野党の地位に留まっていた同党が7年後に連立政権に参加して後には政権政党の地位を築くに至ったことで、包括政党化の重要性が認識されることとなった。
だが、一方で各党間の政策の差異が減少することによって、政策の中身よりも党首や候補者の言動を判断基準として投票を行う有権者が増加するなどの弊害もある。