劇団雲

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劇団雲（げきだんくも）は、日本の劇団。1963年 1月に結成された。

[編集] 概要

[編集] 現代演劇協会・「雲」の結成

1963年1月14日、芥川比呂志以下、「文学座」の中堅・若手劇団員29名は文学座に退団届を提出し、元文学座文芸部員で評論家の福田恆存と、財団法人「現代演劇協会」を設立し、同協会附属の「劇団雲」に全員参加することを表明した。福田は、「雲」結成を新芸術運動とし、「築地小劇場以来の新劇の亡霊を排し、新しい演劇の創造を目指す」をスローガンに掲げ、「これは単なる劇団の分裂ではない。より大きな構想を持った、芸術上の動きである」と語った。

この集団脱退劇は、日本の演劇界始まって以来の大事件として多くのマスコミも関心を寄せた。脱退に至るまでの行動はすべて極秘裏に進められ、座の幹部の中村伸郎、杉村春子らは、まさに寝耳に水で、当日になるまで全くこの集団脱退を感知できていなかった。「文学座」集団脱退の背景には、ベテランと中堅・若手陣とのズレがあったと言われる。1962年の『守銭奴』公演中、楽屋に、「演目の決定は劇団員の総意を反映させよ」「馴れ合いの配役反対」などと書かれた現状不満を訴える無署名のビラが張り出された。さらに、劇団の左翼化傾向、政治運動への介入（当時の新劇は、おおむね左翼に根ざしていた）への反発も一因であった。

福田は「雲」の創立声明書で、「今日、新劇は早くも当初の理念と情熱を失い、しかも拠るべき伝統はついに形成されず、依然として混迷のうちに停滞しながら、その不満をもっぱら独善的な自己満足のかげに糊塗しているかに見えます」と、当時の既存新劇を批判した。

[編集] シェイクスピア劇

1963年3月、ウィリアム・シェイクスピア作、福田の翻訳・演出による『夏の夜の夢』を旗揚げ公演として、「劇団雲」はスタートを切った。その後もシェイクピア劇を中心に公演を行うが、「雲は翻訳劇ばかりでダメだ」（岩田豊雄、文学座創立者のひとり）との声も聞かれるようになった。

シェイクスピア劇は「雲」のレパートリーの支柱になったが、それらの作品は、シェイクスピア学者の第一人者である福田が手がける舞台だけあって、高い評価を受ける。「雲」の流れを汲む「劇団昴」と「演劇集団円」も、シェイクスピア劇を積極的に上演した。

[編集] 福田と芥川

1965年、芥川が病気療養から舞台に復帰し、翌年に遠藤周作作『黄金の国』で初めて演出を手掛けて好評を得た。この頃から、「両雄並び立たず」で、福田と芥川の演劇観の違いが表に現れる。

1967年、福田は現代演劇協会内に、「雲」とは別に新たに「劇団欅」を結成した。起用する俳優を外部から呼ぶなど、「雲」と別行動を取り、協会内に二つの劇団を抱えることになる。「雲」は芥川をリーダー（責任者）として、主に芥川の演出で翻訳劇から遠藤周作、安部公房らの書き下ろし作を上演し、「欅」は、福田作・演出による翻訳劇中心の公演を行うなど、色合いの違いを見せるようになった。さらに、「雲」の中でも、加藤和夫、稲垣昭三、内田稔ら福田に近い俳優は、「雲」を離れて「欅」に移るなど、福田と芥川の心はますます離れていった。

[編集] 現代演劇協会・「雲」の分裂

1975年、協会所属俳優（雲、欅劇団員）の外部出演マネージメント部門設立を巡って、賛成の芥川と、反対の福田の意見が真っ向から対立した。この件に関し、理事長の福田が協会員全員にアンケートを実施し、半ば強引に回答を要求したため、芥川らが反発。それまでに蓄積された両者の演劇的方向性の違いもあり、同年7月31日、舞台『美女と野獣』公演終了直後、ついに芥川以下、仲谷昇、神山繁、岸田今日子ら「雲」所属の俳優39名と、裏方スタッフ数名が現代演劇協会に脱退届を提出し、翌8月1日、「演劇集団円」結成を表明した。芥川は「円」結成の記者会見で、「福田理事長を頂点とするピラミッド型の組織の中で一種の酸欠状態を生じ、もはや創造的な活動は困難であると判断して新しい集団の結成に踏み切った」と、福田との溝の深さを吐露した。「雲」には、小池朝雄、北村総一郎ら一部のベテラン・中堅と、若手俳優の計23人の俳優が残留したが、「雲」、及び「欅」は同年末をもって解散し、翌1976年1月、福田を中心に「雲」の残留派と「欅」を統合し、現代演劇協会附属「劇団昴」を新たに結成した。なお、加藤治子、名古屋章、山崎努ら一部の俳優は、どちらにも属さずフリーを選択した。