共鳴
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共鳴
- 物理現象としての共鳴:本項で詳述する。
- 化学における共鳴:量子力学的共鳴を「共鳴」と略称し、これにより化学結合について説明することが多い。共鳴理論に詳しい。
- 天文学における共鳴: 軌道共鳴を見よ。
- 仮借としての共鳴:他人の思想、信条に共感することを物理用語を仮借して「共鳴する」と日常的に言い表す。つまり「共鳴」は「共感」の比喩的表現である。
共鳴(きょうめい)とは、物理的な系がある特定の周期で働きかけを受けた場合に、その系がある特徴的な振る舞いを見せる現象をいう。特定の周期は対象とする系ごとに異なり、その逆数を固有振動数とよぶ。 物理現象としての共鳴・共振は主にResonanceの訳語であり物理学では共鳴、電気を始め工学的分野では共振ということが多い。
共鳴が知られることになった始原は音を伴う振動現象であると言われるが現在では、理論式の上で等価・類似の現象も広く共鳴と呼ばれる。(バネの振動・電気回路・核磁気共鳴 etc.)[1]
きわめて通俗的な説明としては、ある物体Aの振動エネルギーが、別の物体Bに移る現象だとしてもよい。
A(振動)→B 、 A→(振動)B
しかし、A・Bが電波とアンテナような場合必ずしもAは物体でなくともよく、自己共鳴的な現象では必ずしもAの存在は必要とされないまた、核磁気共鳴のような場合は摂動磁場の振動に対する磁性の変化として現象が現れるため振動やエネルギーの移動があるわけではない。
共鳴が起きた場合、理論式の上では系を特徴付ける物理量が0や無限大になる場合が多い。 また、外部からの振動が与え続けられる場合、振動を受ける側に破壊的現象が起こる場合がある。 (ハウリングやタコマナローズ橋の事例)
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[編集] 力学的共鳴
あらゆる物体には固有振動数(その物体にとって振動し易い振動数)がある。外部から振動が与えられるとき、与えられる振動が固有振動数に近づくにつれ物体の振幅が急激に増大する。この現象を「共鳴」または「共振」という。 遊具の「ブランコ」の、動きの調子に合わせて力を加えると次第に揺れが大きくなる様子が参考になる。
楽器や発声にあっては、発音体(発音物質、弦やリードなど)の振動がより大きな物体(筐体、共鳴腔)に伝わり共鳴することで、より人間が聞きやすい音に変化する。すなわち、発音体単独の時よりも、聴覚上大きな音が得られる。これは音色の変化でもある。楽器によっては共鳴によって安定した音高を得ている。
[編集] 電気回路の共振
電気回路にコンデンサとコイルを直列または並列に接続すると、特定の周波数に対して交流抵抗が0または無限大となる共振回路が有名である。
[編集] 素粒子論的共鳴
素粒子に関する加速器による実験では特定の衝突エネルギーのところで、反応の頻度(反応断面積)が急激に大きくなることがある。この際には生成した複数のハドロンや中間子が複合した状態を形成していると考えられる。この状態を共鳴状態にあるという。これらの状態は非常に短寿命であり、強い相互作用によってより寿命の長いハドロンや中間子へと崩壊する。
[編集] 量子力学的共鳴
量子力学においてはある状態がエネルギーの期待値が近い2つ以上の状態の線形結合で近似できるとき、2つ以上の状態が量子力学的共鳴状態にあるという。この考え方はヴェルナー・ハイゼンベルクによってヘリウム原子の状態について提唱され、ライナス・ポーリングにより化学結合全般へと拡張された。