修羅の国
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修羅の国(しゅらのくに)は、漫画「北斗の拳」に登場する架空の国家。
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[編集] 概要
北斗神拳と北斗琉拳の発祥の地であり、ラオウ、トキ、ケンシロウの生まれ故郷。現実世界における中国にあたる。 カイオウが恐怖政治を敷いており、事実上、作品のクライマックスの舞台となった。
[編集] 社会制度
統治形態は封建制に近く、三人の羅将(全員が北斗琉拳伝承者)を頂点に、郡将、村長、修羅(後述)、一般人…という階級を形成する。 また羅将同士にも序列が示唆されており、事実上はカイオウを中心とした絶対王政と見ることも出来る。
男子には12歳から15歳までの間に100回の死闘を行う通過儀礼が義務付けられており、このため「男子の生存率は1%」と評される。 これを完遂した者は「修羅」と呼ばれ、国名の由来ともなっている。 修羅になってある程度の戦績を積むと、名前、花嫁、領主権などを与えられる。 12歳以降に敗北した者は基本的に対戦相手に殺害されるが、死亡に至らず生き残った場合は両足を切断された上で生存を許される。 この脱落者は「ボロ」と呼ばれ、各種特権を失って低階級に置かれる。
女子はリンを見るに物品に近い扱いを受けているが、これはこの時代においては特に珍しくない(例:アイリ)。 また、修羅でもボロでもない男子が見られ、国民全員が100戦をするわけではないようである。このことについては「カイオウの法が末端地域には及んでいない」「100戦は市民だけの義務」など様々な考察がある。
[編集] 文化、風俗
少年漫画ゆえ話し言葉は日本語で統一されているが、随所で漢語が使用されており、これが公用語と思われる。 カイオウやヒョウがサンスクリット語で会話する場面も見られるが、これはどちらかといえば北斗琉拳の風習であろう。 人名については、修羅として実績を積むまで名乗ることが許されない。ただし修練段階の児童が名を呼ばれるケースがあるため、修羅の名は字や号に相当するものと推察される。
婚姻制度は厳格で、
- ある程度連勝した修羅を二人で戦わせ、勝者に選りすぐった美しい娘を与える。その際、儀式として、花嫁の血を一滴垂らした酒盃を授ける(アルフ)
このような手続きが確認されている。ただし、場面によっては
- 交際による婚約(ヒョウ)
- 村落を来訪し、徴募する(サモト)
- 周囲の男を殺し、略奪する(ヌメリ)
などの描写があり、地位や状況に応じた婚儀が行われるようである。
修羅を中心に、殺されることを消滅と捉えず、強者の血肉となって生きるとする考え方がある。 また、敵から逃げることと愛を説くことを悪徳としており、違反者には死が与えられる。
修羅は辮髪や禿頭が多く、黒の革鎧らしきもので首から下の全身を覆うのが一般的。 拳力や社会的地位の低い修羅(修羅予備軍の児童を含む)は仮面を被る傾向にある。 ボロは全身をボロ布と覆面で覆うが、文官として修羅に仕え、奢侈な衣装を身に着ける例も見られる(ハンの侍従など)。
北斗神拳と北斗琉拳(劉家拳)の因縁から、いつかラオウが帰還して国を救うと言う伝説がある。「北斗神拳」でなく「ラオウ」個人なのは、カイオウの情報操作によるもの。
[編集] 地理、交通
中国大陸と推定されるが、核戦争に伴う地殻変動で現実世界とはかなり異なる地勢になっているようである。 日本から渡れる海が一つしかないらしく、国土に砂漠が多いこともあり、太平洋の大部分が干上がって陸地面積を著しく拡大した可能性がある。 その一方、羅将ハンの居城から「国中に」伝達の赤水が到達したとされており、領土が大河の流域に留まっている可能性も高い。
沿岸は修羅によって厳重に警備されており、部外者が侵入した場合は一切の弁明を聞かずこれを殺害する。ただし、修羅の国の人間が出国することは難しくないらしく、日本に渡航を試みたケースがある(若年時のシャチ、新劇場版の芸妓など)。
陸地ではバイクや馬による移動が主流なのは他国と変わらないが、私有列車などの比較的発達した移動手段も確認される。
[編集] 歴史、民情
もとは中国領であったものの、作中二十世紀末に軍事国家の侵略を受け荒廃。 ジュウケイがラオウら三人を送り出す。 やがて核戦争が勃発するに及んで、国家や文明は崩壊。 中国と言う国名も、拳法の歴史を語る際に使う程度の死語となる。
戦争終結後は日本同様に無法地帯と化したものと思われるが、カイオウを中心とした北斗琉拳の高弟3人が拳で権力を握り、早々に国家システムを再構築(詳細な年代は不明ながら、シャチの幼年期には既に修羅の国が完成している描写がある)。 この時から前述のような男子生存率1%の過酷な地と化し、修羅の国と呼ばれるようになる。 国家体制の完成直前、ラオウが一度来訪し、それ以後カイオウの手によってラオウ伝説が流される。 前後して沿岸に修羅が配置され、鎖国体制が完成。
民衆は内心ではこの体制に反発しており、ラオウ伝説を信じてその来航を待ち望んでいた。 ケンシロウが来航して第三の羅将たるハンを倒すや、早合点して一斉に武装蜂起。 大勢が修羅に鎮圧され、絶命する。 その一方、ヒョウのような心ある羅将を信奉する者もおり、ことヒョウの准将ナガトや4人の腹心に至ってはヒョウがカイオウ打倒を決意した時にはその尖兵になろうとまで決意していた。
最終的に、ケンシロウとの戦いの果てにカイオウ、ヒョウ、ハンの3人の羅将全てが死に、カイオウに仕える多くの修羅が死亡したこともあって体制が崩壊し、恐怖政治と鎖国状態に終止符が打たれた。