体育座り
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体育座り(たいいくずわり)または、体操座り(たいそうすわり)とは、小学校において、児童が集団行動を取るときの姿勢。地面に尻を付かせ、膝を立てた足を両腕で抱える。立たせていては、貧血を起こす児童がいることから考案されたと思われる。体育のみならず、全校朝会、児童集会、野外活動でも用いられ、学校生活では床面や地面など平面に座る際のごく標準的な座り方である。
地方によって多様な呼び方があり、関西地方では脚部の形状から「三角座り」と呼ぶ。全国的には「体育座り」が主で、局地的に「体操座り」と呼ばれる。同じ字面でも、「たいいく」の地域と短音化した「たいく」の地域があり、清音の「すわり」と濁音の「ずわり」の違いも見られる。また、TOKIOの松岡昌宏は、本稿の座り方を「体育座りA」と習い、他に片膝立ちの「体育座りB」も教わったと「メントレ」のトーク中に述べている。
号令は「着席」とそれに類する「腰を下ろしましょう」「座ってください」で体勢を作る。解除の号令は「起立」とそれに類する「立ちましょう」「立ってください」。座りやすい反面、立ちにくい。両手を腰の斜め後方に出し、前傾しつつ腕を突いて立ち上がる。足を交差すると前傾しやすくなるため、直前に足を交差するように指導する教師もいる。
しゃがむ姿勢より前後方向の安定性が高く、下り斜面でも安定して座れる。実際、すべり台を滑っている姿勢は、体育座りから腕を振り解いた状態である。左右のバランスは、膝や足を若干離すことによって安定する。手遊びを防ぐために両手を膝の前で組ませる。起立の号令にすばやく対応するため、指を組ませずに片手で反対の手首を握るよう指導する教師もいる。
全国統一の規格はないので、崩れた姿勢も多数見られるが、体育的配慮ではなく「聞く態度」をはじめマナーの面で注意を促されることが多い。腕を解いて手遊びする場合、後方に体をそらせる場合、脚を開いて下を向く場合などがマナー違反として指導対象となる。
一方で、膝を抱えきれない肥満体の児童もごくわずかにいるため、姿勢が保持できない場合は強制されない。体育以外の私服着用時には、スカート姿の女子がパンチラ防止のために裾ごと太ももを抱えたり、それができないミニスカートの女子が正座や横座りになったりすることが多い。事情が事情だけに正しい姿勢を矯正する教師はほとんどいない。しかし礼儀や集団の見栄えには影響するため、来賓を迎える入学式・卒業式などの厳粛な儀式行事の場合には椅子を用いる。
屋外では、私服で特に顕著だが、砂や草が着衣に付着するために嫌われる姿勢である。起立した途端に大多数の子供が尻を叩いて埃を払う光景はよく見られる。集団行動の中では、少なくとも起立後の礼が終了するまで我慢するように指導される。
なお、体育座りも、半ズボンタイプ着用が前提だったと思われる。ハーフパンツタイプ着用で体育座りをしたら、ももの周辺のアクセサリーが重くてずり落ちてしまうからである。