介護サービス事業者の種類
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介護サービス事業所は、介護保険制度において、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となったもの(要介護者等)に対し、これらの者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービス(総称して介護サービスという)を提供する事業所。
一般には、一定の要件を満たして都道府県の事業所指定を受けた指定介護サービス事業所を指すが、広義には、保険者(市町村)がそのサービスについて一定水準を満たすと認め、在宅給付を行う基準該当介護サービス事業所も含まれる。
介護保険法では、在宅の要介護者等に対し介護サービスを提供する#居宅サービス事業者と、要介護者を入所させて介護サービスを提供する#介護保険施設が定義されているが、これらを包括した概念である介護サービス事業者は定義されていない。
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[編集] 指定居宅サービス
[編集] 訪問介護事業所
- 訪問介護員(ホームヘルパー)が居宅を訪問して、入浴、排泄、食事等の介護等、日常生活上の世話、掃除、洗濯、通院等のための乗車又は降車の介助等を行う。(通院等のための乗車又は降車の介助のみのサービスは認められない。)
サービス内容により、身体介護、生活援助、通院等乗降介助の3つに分類される。
[編集] 訪問入浴介護事業所
- 看護職員や介護職員が居宅を訪問して、浴槽を提供して3名が1チームとなり入浴の介護を行う。
[編集] 訪問看護事業所
- 医師の指示に基づき看護職員が自宅療養している人を定期的に訪問し、健康チェックや療養の世話・助言などを行うサービス。
[編集] 訪問リハビリテーション事業所
- 医師の指示により理学療法士や作業療法士等が居宅を訪問して、理学療法、作業療法、その他の必要なリハビリテーションを行う。
[編集] 通所介護事業所(デイサービス)
- 通所介護施設等に通い、健康チェック、入浴、食事、リハビリの提供等の日常生活上の世話、機能訓練を行う。
平成18年4月より中重度者、医療依存度の高い方が利用できる「療養通所介護」もある。
[編集] 通所リハビリテーション事業所(デイケア)
- 要介護認定者等が介護老人保健施設、病院、診療所等に通い、要介護認定者等に理学療法、作業療法、その他必要なリハビリテーションを行う。
[編集] 短期入所生活介護事業所(短期入所療養介護と共に「ショートステイ」という)
- 要介護者等が老人短期入所施設等に短期間入所し、当該施設において、要介護認定者等に入浴、排泄、食事等の介護、その他日常生活上の世話、機能訓練を行う。
[編集] 短期入所療養介護事業所
- 要介護認定者が介護老人保健施設、療養型病床群等に短期間入所し、当該施設において、要介護認定者等に看護、医学的管理の下における介護、機能訓練その他必要な医療および日常生活上の世話を行う。
[編集] 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 認知症の状態にある要介護者について、その共同生活を営むべき住居において、入浴、排泄、食事等の介護等の日常生活上の世話及び機能訓練を行う。
[編集] 特定施設入所者生活介護事業者
- 介護対応型の有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)に入所している要介護者等について、介護サービス計画に基づき、入浴、排泄、食事等の介護、その他の日常生活上の世話、機能訓練及び療養上の世話を行う。
[編集] 福祉用具貸与事業所
- 厚生労働大臣が定める福祉用具の貸与を行う。
[編集] 居宅介護支援事業所
- 介護保険において要支援・要介護と認定された人に対して、在宅サービスの適切な利用等が可能となるよう、要介護者等の心身の状況、その置かれている環境、意向等を勘案して居宅サービス計画(ケアプラン)を作成し、当該居宅サービス計画に基づく在宅サービスの提供が確保されるよう、事業者等との連絡調整その他のサービスの提供を行い、および要介護者が介護保険施設に入所する場合に、介護保険施設への紹介、その他のサービスの提供を行う。
- 実際には、居宅介護支援事業所に所属する、介護支援専門員(ケアマネジャー)がその業務を行う。
- 他の介護サービス事業者と異なり、要支援・要介護と認定された人に対するサービスの費用は、介護保険から10割が給付される。
[編集] 介護保険施設
[編集] 指定介護老人福祉施設
- 施設サービス計画に基づき、可能な限り、居宅における生活への復帰を念頭に置いて、入浴、排泄、食事等の介護、相談及び援助、社会的生活の便宜の供与その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることを目指した施設
- 介護保険制度の施行により、老人福祉法による特別養護老人ホームが介護保険法の指定施設となったものである。現在も施設の固有名称としては、特別養護老人ホームというのがほとんどである。
これは、例えば高齢者虐待が生じたケースの場合、老人福祉法を根拠法として行われる行政処分である「措置」による入所利用が可能性として残されているからで、より範囲の広い特別養護老人ホームという呼称を用いている事情がある。
[編集] 介護老人保健施設
- 施設サービス計画に基づき、可能な限り、居宅における生活への復帰を念頭に置いて、入浴、排泄、食事等の介護、相談及び援助、多少のリハビリや医療等を通して機能訓練、健康管理等を行い入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることを目指した施設。指定介護老人福祉施設との違いは、リハビリスタッフや看護師、医師等の配置基準が指定介護老人福祉施設より多い。またそれに伴い指定介護老人福祉施設より多少料金は高く設定されている。尚、リハビリ等が指定介護老人福祉施設より充実していることで、より在宅復帰を念頭にいれているため、入所期間は指定介護老人福祉施設と違い終身制ではないこと等が挙げられる。
- 介護保険施設の中で老人保健施設に「指定」とつかないのは、介護老人保健施設の開設根拠が介護保険法中に規定されているため、改めて指定を受ける必要がないからである。
[介護老人保健施設における包括医療について]介護老人保健施設入所中の医療は原則包括医療になる。例えば療養上必要な処方薬等は、原則として介護保険からの給付になる。介護老人保健施設は、「症状が安定期にある」ことが入所条件の一つとなっているので、他の病院等に受診することは「通常ではない状態」として扱われる。そういう趣旨の受診を行うときも一定のルールあり、当該利用者入所先の介護老人保健施設の医師が、受診先の医師に診療情報提供書を添えることが必須の事項となっている。介護老人保健施設入所中の利用者がこのように入所先以外の医療機関に受診することを他科受診と呼んでいる。
現行制度では、老人医療の1割分を受診をした当該利用者が負担し、その他の受診に関わる費用の残りの分は施設が負担することになっている。
参照:平成18年版 介護老人保健施設他科受診の手引き[http://www.shaho.co.jp/shaho/search.php?Lc=011&Mc=061]*
[編集] 指定介護療養型医療施設
- 一般病院等での集中治療は既に必要ないが、在宅に戻るには医療依存度の高い患者が入院する施設。患者の医療依存度は、指定介護療養型医療施設>介護老人保健施設>指定介護老人福祉施設という順になり、患者の医療依存度によりどこの施設が適当かを考える必要がある。あくまでも介護保険適用の施設のため、名のとおり治療というより療養が必要な患者が入院する施設となるが、一般的に病院に併設されている形態をもつ。
- 指定介護療養型医療施設という介護保険上の類型は2011年度末で廃止され、2012年度以降は介護保険が適用される入所施設は指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と介護老人保健施設の2類型となることが予定されている。