予言
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予言(よげん、prediction)とは、読んで字の如く、ある物事について、その実現に先立ち「あらかじめ言う」ことである。一般的には、その中でも「合理的には知ることのできない」未来を語ることを指す場合が多く、占星術やチャネリングといった疑似科学の領域で用いられることが多い。
未来の事象を扱う場合でも、自然科学や社会科学(身近な例では天気予報、地学的な地震予知、計量経済学)のモデルに則ったものは、予言とは呼ばないことが多い(例外については後述)。
啓示宗教における預言(prophecy)と本項で扱う予言(prediction)は本来的に異なる概念である[1]。しかし、預言や神託には、未来を語ったものも含まれており、その部分については予言に分類することができる[2]。
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[編集] 予言の的中
予言の的中を示すには、合理的には予測されない事象について、「いつ」「どこで」「何が」起こるかを事前に記していることが、十分条件となる。前記の十分条件を満たしていると広く認められている資料は、2007年までには確認されていない。
疑似科学では、事前に残された抽象的な言葉(予言)を、事後に事実に合わせて解釈をすることや、多く語った中で数例的中したといった偶発的な的中も、予言の的中あるいは成就と表現されることがあるが、認知心理学などではこれらは予言の的中とはみなされない[3]。また、疑似科学の分野においては、予言の的中をもって予言者の特異な能力の発露、あるいは超常的な情報伝達が行われた証拠とされることもあるが、的中それ自体からそれが偶然によるものかそうでないかを線引きすることはできない[4]。
バタフライ効果が知られてからは、確定的な未来を事前に語ることは困難であるとされている[5]。不可知論では、予言という概念を認めていない。
この点や、予言に用いられる方法に課題もあり、予言は疑似科学に分類するのが一般的である。
[編集] 大予言
予言・大予言は、日本では五島勉の著作である『ノストラダムスの大予言』で一躍有名になった[6]。 以降、(パロディ的な用法も含めて)『○○(の)大予言』といった表題の著書は、数多く刊行されている[7]。予言と大予言の境界についての明確な基準はない。
[編集] 正当な的中例とは見なし得ない予言
[編集] 事後予言
事後予言(じごよげん)とは、ある出来事が起こった後に、事前に見通していたかのように捏造された予言のことである。上で述べた、曖昧な予言に事後の解釈を付け加えるものも、これの一種と位置付けられる。言うまでもなく、事後予言は予言というよりも単なる詐術であり、米国の占い師の中には、事後予言が露見して信用を失った者もいる。ほか、アガスティアの葉も事後予言に属する要素を含むと指摘されている。
[編集] 自己成就予言
自己成就予言(じこじょうじゅよげん)とは、予言をした者もしくはそれを受け止めた者が、予言の後でそれに沿った行動を取る事により、的中するように導かれた予言の事である。ジェロラモ・カルダーノの最期や、ノストラダムス2世の最期と伝えられる逸話などが当てはまる。また、より身近な例として、星座占いや血液型性格分類、銀行の取り付け騒ぎも、示された結果を受け止めた者が、(意識的にせよ、無意識的にせよ)それに沿った行動を取る事で、当たっていると錯覚しているケースのあることが指摘されており、これも一種の自己成就予言と言える。この語は、社会心理学の用語としても用いられる。
[編集] 主な予言者・予言書
[編集] 予言者
ここでいう「予言者」は、予言者と称している、あるいはそのように見なされている人物である。また、上記の定義の通り、アブラハムの宗教などにおける預言者は、ここには含めない(聖母の出現関連なども対象外である)。
- エピメニデス(ギリシア)
- フィオーレのヨアキム(イタリア)
- ピエール・ダイイ(フランス)
- ノストラダムス(フランス)
- ツィプリアン・レオヴィッツ(現チェコ)
- 高島嘉右衛門 (日本)
- エドガー・ケイシー (アメリカ)
- ジーン・ディクソン (アメリカ)
- 藤田小女姫 (日本)
- ハサン・シャーリーニー (チュニジア)[8]
- ジョン・タイター(ウェブサイト上)
- ジョセリーノ (ブラジル)
- ジョゼフ・マクモニーグル (アメリカ)
[編集] 著者不明の予言書など
表示されている著者とは無関係の偽書であることを疑われているものも含む。
[編集] その他
一般には予言と見なされていないが予言的なメッセージが込められていると主張する者がいるもの。
[編集] 自然科学における「予言」
自然科学の領域でも、「予言」の語が用いられることはある。これは、ある仮説が正しいとした場合に、必ず存在するはずの未発見の物質や、未観測の現象を想定する時に用いられる。自然科学における「予言」は、仮説の妥当性を検証する上で重要な意味を持つ。ほぼ同じ意味で予想といわれることもある。
このような「予言」の例としては、ドミトリ・メンデレーエフが、元素周期表によって、当時未発見だった元素の性質を予言したことや、アルベルト・アインシュタインが、一般相対性理論によって、当時未確認だった重力レンズを予言したこと、ディラックによる陽電子の存在の予言などが挙げられる。日本人初となった湯川秀樹のノーベル賞受賞も、素粒子物理学における中間子の存在を予言したことが評価されてのものであった。
[編集] フィクションと予言
[編集] 予言としてのフィクション
時として、フィクションの中で語られたことが、現実でも起こることがある。その要因は、偶然の一致にすぎないものや、作者の緻密な分析の賜物であるものなど、様々である。「予言的」な小説家としては、ハーバート・ジョージ・ウェルズの名がよく知られている。
[編集] フィクションの中の予言
「予言」がストーリーの主要部分に関わるフィクションもしばしば見られる。
[編集] 作品の例
- 第四間氷期 - 安部公房のSF小説。
- ポストの中の明日 - 藤子・F・不二雄の漫画短編。同じ作者による予言をテーマとした他の短編には、「大予言」「アチタが見える」などがある。
- オインゴ・ボインゴの大冒険 - 荒木飛呂彦の作品。『ジョジョの奇妙な冒険』第3部に登場したネタの一つ(予言書のスタンド)が単著となったもの。
- スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
[編集] 脚注
- ^ 千代崎秀雄『世紀末的情況と終末預言』(いのちのことば社、1992年)pp.78-82、小杉泰『イスラームとは何か』(講談社現代新書、1994年)p.32。なお、日本での「預言」と「予言」の用字については預言者#訳語の問題を参照のこと。
- ^ 千代崎、前掲書
- ^ 菊池、後掲書、passim
- ^ 菊池、後掲書、pp.32-33
- ^ 山本弘『トンデモノストラダムス本の世界』宝島社文庫、pp.99-101
- ^ 海外ではエドガー・ケイシーやジーン・ディクソンによる予言も有名である[要出典]
- ^ Amazon.co.jpで「大予言」を検索すると、382冊の著書がヒットする - 2007年1月現在
- ^ チュニジアの占星術師(ダイアナ妃の死・アラファト議長の謎の死・ヨハネ・パウロ2世の死去・ロンドンの同時テロ・フランスの暴動(?)・(ブッシュ大統領の暗殺)などの予言で知られる[要出典])
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 菊池聡 『予言の心理学―世紀末を科学する』 ISBN 458418349X
- ジョルジュ・ミノワ著、菅野賢治 平野隆文訳『未来の歴史―古代の預言から未来研究まで』ISBN 4480861157
- ジョゼフ・デスアール アニク・デスアール 著、阿部静子 笹本孝訳『透視術―予言と占いの歴史』ISBN 4560058660
- 山田高明 『トンデモ予言者大集合』 ISBN 4584183589
- 志水一夫 『大予言の嘘―占いからノストラダムスまで その手口と内幕』 ISBN 4887181124 ISBN 4887184670 (改訂版)
- 山本弘『トンデモ大予言の後始末』 ISBN 4896914694