ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク
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『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(The Lost World: Jurassic Park)は1997年のアメリカ映画で、映画『ジュラシック・パーク』の続編。
マイケル・クライトンの小説『ロスト・ワールド -ジュラシック・パーク2-』の映画化だが、その内容は原型をとどめないほどの大幅な変更がなされている。そのため、映画公開の際には、原作のファンから強い批判を受けた。
前作の『ジュラシック・パーク』の評価が高かったため期待された本作品は、反動で酷評される結果となった。そのため、第18回ゴールデンラズベリー賞においては最低続編賞、最低脚本賞、最低人命軽視と公共物破壊しまくり作品賞の3部門にノミネートされた。ただし、いずれも受賞を逃している。
ちなみに監督のスティーブン・スピルバーグにとって自作の続編で再び監督を担当したのは今のところ『インディ・ジョーンズ』シリーズと本作のみである。 (『激突!』と『続・激突! カージャック』は邦題だけが関連付いているだけで、元々は全く関連のない別作品)
目次 |
[編集] スタッフ
- 監督:スティーブン・スピルバーグ
- 原作:マイケル・クライトン
- 製作:キャスリーン・ケネディ
- 脚本:デビッド・コープ
- 撮影:ヤヌス・カミンスキー
- 美術:リック・カーター
- 音楽:ジョン・ウィリアムズ
- SFX:ILM
[編集] キャスト
- イアン・マルコム:ジェフ・ゴールドブラム
- サラ・ハーディング:ジュリアン・ムーア
- ケリー・カーティス:ヴァネッサ・リー・チェスター
- ニック・ヴァン・オーウェン:ヴィンス・ヴォーン
- エディ・カー:リチャード・シフ
- ジョン・ハモンド:リチャード・アッテンボロー
- アレクシス・マーフィー(レックス):アリアナ・リチャーズ
- ティモシー・マーフィー(ティム):ジョセフ・マッセロ
- ピーター・ルドロー:アーリス・ハワード
- ローランド・テンボ:ピート・ポスルスウェイト
- ディーター・スターク:ピーター・ストーメア
- ロバート・バーク:トーマス・F・ダフィ
- アジャイ・シドゥ:ハーヴェイ・ジェイソン
[編集] 登場する恐竜
劇中で種小名が出ているものは属名と中黒(・)で繋ぎそれも記した。原則として劇中での登場順に並べてある。
- コンプソグナトゥス・トリアシクス Compsognathus triassicus ※C. triassicusは現実に存在しない架空の種である。
- ステゴサウルス Stegosaurus
- パラサウロロフス Parasaurolophus
- パキケファロサウルス Pachycephalosaurus
- ガリミムス Gallimimus
- マメンチサウルス Mamenchisaurus
- ティラノサウルス・レックス Tyrannosaurus rex
- トリケラトプス Triceratops
- ヴェロキラプトル Velociraptor
[編集] 舞台となった島
舞台となったのはソルナ島(Isla Sorna)という島で、スペイン語で『皮肉の島』という意味を持つ。この島は『Las Cinco Muertes』(五つの死)と呼ばれる、『C』を描くように連なる5つの島々の一つで、前作の舞台となったヌブラル島の南西140kmにある。『五つの死』の島々は北西から順に『Isla Matanceros』(虐殺の島)、『Isla Muerta』(死の島)、『Isla Sorna』(皮肉の島)、『Isla Tacano』(嘘つきの島)、そして『Isla Pena』(苦しみ・刑罰の島)からなる。
ソルナ島には、観光ではなく恐竜の飼育とクローニングを目的とした研究施設が建てられている。この島で育った恐竜はいずれヌブラル島の新たなアトラクションとして運ばれる予定であったが、ハリケーンによって施設は壊滅状態となった。その際に研究員によってジャングルに解き放たれた恐竜たちは独自の繁栄を遂げた。
[編集] その他
原作小説との最大の違いは、終盤の捕獲されたティラノサウルスがアメリカ本土で暴れまわるシークエンスであるが、これは原作のタイトルの由来ともなったアーサー・コナン・ドイルの小説『失われた世界』が1925年に映画化された際、アパトサウルス(当時はブロントサウルスと呼称されていた)のアメリカ上陸シーンが追加された事へのオマージュと考えられる。
[編集] 寸評・矛盾点
今作は、原作を大幅に変更し原作のファンを失望させただけでなく、前作『ジュラシック・パーク』の続編ということで期待した視聴者にも落胆の隠せないものだった。 主な原因として、以下のような点が挙げられる。
- サラの不可解な行動
- 「草も踏んではいけない」と語るサラがステゴサウルスの仔に触る、ティラノサウルスの仔を治療する。これは明らかにその発言とは矛盾している(というより島に調査に入る時点で矛盾している)。
- T-レックスの仔をさらった事により、トレーラーが破壊された挙句、エディ・カーが死亡する。
- T-レックスの嗅覚についての知識があったにもかかわらず、T-レックスの仔の血が付いた上着をずっと羽織っている。結果、T-レックスの親はキャンプを襲い、多くのハンターや職員が死亡する。
- 人命軽視
- 生け捕りにされた恐竜の檻を壊す、ハンターの銃から弾を抜いておく、人の死に無関心など一貫して人命よりも恐竜を優先する主人公達の言動はあまりにも理解し難いものであった。
- 前作とのギャップ
- 前作は公開前に、スピルバーグが監督すること以外に内容の予想がつかず、また彼の代表作『E.T』の印象から、恐竜と人間の交流をテーマにした作品だと思う人も少なくなかったが(海外映画雑誌でも著名人にこのような予想を書かれている)、実際は科学技術の暴走と人間の驕りに対する警鐘が根底に流れるテーマであり、描写的にも後半のヴェロキラプトルからの逃避劇など予想外な展開が多く、いい意味で予想を裏切られる出来であった。
- しかし今作は、襲い来るT-レックスから集団で逃げ惑う人間達など前作になかった描写が盛り込まれたものの、後にキャストの設定などに矛盾点を浮き彫りにし酷評される原因の一部になっている。
- 武器の不使用
- 恐竜達を捕獲する雇われた大勢のハンター達は、銃火器を多く装備していたにも関わらず、まったくと言っていいほど撃たずに、T-レックスやヴェロキラプトルに倒されていく。また、全員とも撃つ前から逃げ出したり、小型機関銃で応戦しているシーンもあるにはあったが、まったくT-レックスには通用していなかった。
- 武器の性能
- 機関銃の弾では、分厚いT-レックスの皮膚は通さないと考える事も出来るが、後半ではT-レックスは麻酔銃を撃たれて眠らされている。麻酔銃が通用するのに実弾が通用しないとは考えにくく、また一部のシーンでは象撃ち銃を持っているハンターが映っていた。
このように、前回にはなかった恐竜への人間の反撃をハンター達に期待をしている人も多かったと思われる[要出典]が、そのような展開は最後までなかった。舞台が突然アメリカ本国に変わる展開[1]にはある程度の評価はされたものの、この点に関しても『ゴジラ』との類似性を指摘される結果になってしまった[2]。前作がスリラー的に上手く作られた内容だっただけに、今作においてそういう部分を演出しきれてない点も、酷評される原因の一つと思われる。
[編集] 関連項目
- 『ロスト・ワールド -ジュラシック・パーク2-』(原作・1995年)
- 『ジュラシック・パーク』(前編・1993年)
- 『ジュラシック・パークIII』(続編・2001年)
[編集] 日本語吹替
[編集] 脚注
- ^ これについては公開前にリークがされている。月刊「ホビージャパン」の映画コラムでも予告され、『インデペンデンス・デイ』を見たスピルバーグが、そうか、こんなに人が死ぬ映画がいいのか、と思ってそうした旨記されている。
- ^ ただしこれは、同時期に製作されていた『GODZILLA』に対して苦言を呈した程ゴジラに対して造詣の深いスピルバーグの、同シリーズに対するオマージュだとする説もある