ミゼットマン (ミサイル)
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ミゼットマン(MGM-134 Midgetman)は、1980年代から1990年代にかけてアメリカ空軍が開発していた小型大陸間弾道ミサイル。冷戦の終結に伴い開発中止された。
[編集] 概要
1980年代の半ばにおいて、アメリカ空軍は自らが保有する大陸間弾道ミサイルの生存性に対し、懸念を抱くようになった。ソビエトの潜水艦発射弾道ミサイルが増勢してきており、それらがアメリカ近海より発射された場合、ミサイルサイロに格納されたアメリカのICBMは発射前に破壊される可能性が大きくなってきた。固定式のサイロではなく、ミサイル発射機を移動方式とすることにより、ミサイルの位置を秘匿すると同時に、生存性を向上させることが目指された。この方法は、ソビエトの移動式のICBM、SS-24(鉄道移動式)とSS-25(車両移動式)と同等のものでもあった。
ミサイルは車両移動方式のものであり、車両に搭載するために比較的小型のものとなっている。全長はピースキーパーの21.6 mと比較し14 mと短く、搭載弾頭もMIRVではなく単弾頭であり、半数必中界は90 mが予定されていた。搭載車両は、索引車とミサイルを搭載したトレーラーで構成されている。ミサイルの発射は、キャニスターを立ち上げて行い、ガス圧によりミサイル本体をキャニスターより打ち上げるコールドランチ方式であった。ミサイル搭載車両は時速88 km以上で移動でき、平時には基地内にいるものの、有事に基地より出動することが考えられていた。
1984年より小型大陸間弾道ミサイル計画(SICBM, Small Intercontinental Ballistic Missile)として検討が開始され、1986年より本格的な開発が開始された。開発はマーティン・マリエッタ社が行った。最初の試射は1989年に行われたが、完全な成功を収めることはできなかった。1991年4月にヴァンデンバーグ空軍基地で2度目の試射が行われ、こちらは成功を収めた。ただし、冷戦の終結に伴い、必要性が疑問視され、1992年4月に開発が中止された。
[編集] 要目
- 全長: 14 m
- 直径: 1.17 m
- 重量: 13.6 t
- 射程: 11,000 km
- 機関: 3段式固体燃料ロケット
- 弾頭: W-87-1核弾頭 1基(核出力:475 kt)-Mk21再突入体に搭載