マイケル・ケイン
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サー・モーリス・ジョゼフ・ミクルホワイト CBE (Sir Michael Caine, 本名Sir Maurice Joseph Micklewhite CBE 1933年3月14日 - )は、イギリス(イングランド)・ロンドン出身の俳優。芸名はアメリカ映画『ケイン号の叛乱』(1954年 エドワード・ドミトリク監督)から採ったという。
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[編集] 経歴
南ロンドンのロザーハイドで生まれ、キャンバーウェルで育った。第二次世界大戦中はノーフォークへ疎開。戦後、兵役でベルリンや韓国に赴いた後、舞台監督の助手などを務めながら演技を志し、後にはロンドンの演劇学校に学んで、舞台俳優となった。
デビューしたときの芸名はマイケル・スコットであったが、同名の俳優がいたためその名を変更しなければならなかった。ロンドンのレスタースクエアの電話ボックスでエージェントと芸名変更の話をしていたとき、辺りを見回すとオデオンで偶然『ケイン号の叛乱』が上映されており、その芸名をマイケル・ケインに決定した。彼はインタビュアーに、そのとき上映されていた映画が『101匹わんちゃん大行進』だったなら芸名は「マイケル・101・ダルメシアン」だったろうと冗談を言ったことがある。
1956年、『韓国の丘』の脇役としてスクリーンデビュー。下積みが長かったが、1964年の『ズール戦争』の陸軍中尉役で注目され、1965年にはレン・デイトンのスパイ小説を原作とした『国際諜報局』で主演。この映画では007のアンチテーゼである、眼鏡を掛けたシニカルなサラリーマンスパイのハリー・パーマーを飄々と演じて好評を博した。ハリー・パーマー・シリーズは続編2作が作られ、ケインは一躍人気を得る。クールでシニカルなキャラクターは、その後もケインの得意とする役柄となった。
続いて主演した『アルフィー』のプレイボーイ役では全米映画批評家協会賞最優秀男優賞を受賞、アカデミー主演男優賞候補となった。シリアスな文芸作品での演技には特に評価が高く、『探偵/スルース』、『リタと大学教授』、『愛の落日』でもアカデミー主演男優賞候補となるが、受賞したのは『ハンナとその姉妹』、『サイダーハウス・ルール』での二度の助演男優賞である。
叙情的なシリアスプレイから、コメディでの好色でとぼけた役まで、その演技の幅は広く、輝かしい受賞歴を誇る名優中の名優であるが、ギャラさえ十分なら仕事を選ばない主義で(自分で堂々と公言している)、時に『スウォーム』、『ポセイドン・アドベンチャー2』、『沈黙の要塞』などのいささか珍妙な作品や、『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』のような怪作にも出演している。最初のアカデミー助演男優賞の受賞の際、『ジョーズ'87/復讐編』(ビデオ題名『ジョーズ4/復讐編』)の撮影でバハマ滞在中であることを理由に授賞式を欠席したのは有名なエピソードである(ちなみに、同作は1987年度のラジー賞では7部門にノミネートされ、マイケル・ケイン自身も、幸い(?)受賞は逃したがワースト助演男優賞にノミネートされた)。帰国後、テレビのトークショーに出演し、「制作者のみんな、オスカーをもらったからって、ギャラをふっかけないから安心してくれ。」と発言した。2000年のアカデミー賞授賞式では、出演作の多さを司会のビリー・クリスタルに「授賞式の休憩中にも1本撮るのかい?」とネタにされた。
スパイ「ハリー・パーマー」役で著名となったケインは、ジェームズ・ボンド役を演じたショーン・コネリー、ロジャー・ムーア、ピアース・ブロスナンと共演し、主役を演じた経験がある(コネリーとは『王になろうとした男』、ムーアとは『ダブルチェイス』、ブロスナンとは『第四の核』で共演)。
俳優活動への評価から、1993年には英国女王エリザベス2世からCBE勲章(Commander of the British Empire)を授賞された。更に2000年には長年の活動を称えられてナイトに叙され、Sir(サー)の称号を受けた。
[編集] 私生活
1955年にパトリシア・ヘインズと結婚するが1958年に離婚。1973年に再婚したシャキーラ・ケインは、夫の主演作『王になろうとした男』に特別出演している。
チェルシーFCのサポーターでもある。
[編集] 主な出演作
- ズール戦争 - Zulu (1964)
- 国際諜報局 - The Ipcress File (1965)
- アルフィー(全米映画批評家協会賞最優秀男優賞) - Alfie (1966)
- 泥棒貴族 Gambit (1966)
- 10億ドルの頭脳 - Billion Dollar Brain (1967)
- 大侵略 - Play Dirty (1968)
- ミニミニ大作戦 - The Italian Job (1969)
- 空軍大戦略 - Battle of Britain (1969)
- 最後の谷 - The Last Valley (1970)
- 狙撃者 - Get Carter (1971)
- 探偵スルース - Sleuth (1972)
- ドラブル - The Black Windmill (1974)
- 王になろうとした男 - The Man Who Would Be King (1975)
- 鷲は舞いおりた - The Eagle Has Landed (1976)
- 遠すぎた橋 - A Bridge too Far (1977)
- カリフォルニア・スイート - California Suite (1978)
- ポセイドン・アドベンチャー2 - Beyond The Posseidon Adventure (1979)
- 殺しのドレス - Dressed to Kill (1980)
- キラーハンド - The Hand (1981)
- デストラップ・死の罠 - Deathtrap (1982)
- リタと大学教授(ゴールデングローブ賞主演男優賞、英国アカデミー賞最優秀男優賞) - Educating Rita (1983)
- ハンナとその姉妹(アカデミー賞助演男優賞) - Hannah and Her Sisters (1986)
- ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ - Dirty Rotten Scoundrels (1988)
- ダブルチェイス/俺たちは007じゃない - Bullseye! (1990)
- ブルー・アイス (製作も) - Blue Ice (1992)
- 沈黙の要塞 - On Deadly Ground (1994)
- ブラッド & ワイン(サンセバスチャン映画祭男優賞) - Blood & Wine (1996)
- リトル・ヴォイス(ゴールデン・グローブ賞助演男優賞) - Little Voice (1998)
- サイダーハウス・ルール(アカデミー賞助演男優賞、俳優協会助演男優賞) - The Cider House Rules (1999)
- クイルズ - Quills (2000)
- デンジャラス・ビューティー - Miss Congeniality (2001)
- オースティン・パワーズ ゴールドメンバー - Austin Powers in Goldmember (2002)
- 愛の落日(ゴールデン・サテライト賞主演男優賞、ロンドン批評家協会賞主演男優賞) - The Quiet American (2002)
- ウォルター少年と、夏の休日 - Secondhand Lions (2003)
- バットマン ビギンズ - Batman Begins (2005)
- 奥さまは魔女 - Bewitched (2005)
- トゥモロー・ワールド Children of Men (2006)
- プレステージ The Prestige (2006)
- スルース SLEUTH (2007)1972年に自ら主演した「探偵スルース」のリメイク。前作では妻の愛人役で出演していたが、今作ではもう一方の主人公とも言える夫である小説家の役として出演している。