ホンダ・CBR1100XXスーパーブラックバード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
|
CBR1100XX SuperBlackbird(シービーアールせんひゃくダブルエックス スーパーブラックバード)は本田技研工業が製造していた4ストローク、排気量1,137ccのオートバイである。CBRシリーズにおけるフラグシップとして扱われていたが、現在は国内販売、輸出共に終了している。
目次 |
[編集] 概要
本田技研工業が1996年にCBR1000Fからのフルモデルチェンジで登場。その際、世界最速の航空機であるアメリカ空軍の偵察機「SR-71」の愛称である「ブラックバード」に因み、それを超えると言う意味で「スーパーブラックバード」というペットネームが与えられた。そのため、当車のプロモーションビデオでは米空軍の協力を得て、空軍基地にてCBR1100XXとSR-71が競演を果たしている。
コンセプトとしては、
- 超高速域での快適な居住性
- 圧倒的な絶対性能
- 大排気量車でありながらミドルクラス並みのハンドリング
を兼ね備えた、世界最高性能の量産市販車ということであった。
2軸バランサーを採用した新設計の1137cc水冷直列4気筒エンジンは、当時世界最高の164psを達成。開発当時のライバルであったカワサキのZZR1100よりも高速性能に優れたが、最高速度は実測で300km/hにわずかに満たなかった[1]。
発売当時、世界最速の量産市販車の名を欲しいままにしていたが、1999年にスズキからGSX1300Rハヤブサが登場し、続いて2000年にはカワサキからニンジャZX-12Rの登場によって世界最速の座を譲ることとなる。2001年のオートバイの最高速度の上限を300km/hとする自主規制が始まったこともあり、2007年の生産中止まで大きなモデルチェンジも行われず、ハイスピードツアラーとしての性格が強まっていった。
また、次世代の燃料燃費向上技術であるVCM(Variable Cylinder Management:気筒休止システム)の開発車両として使われており、雑誌媒体ではインプレッションも公開された[2]。
[編集] 車種履歴
[編集] 初代
空力を徹底的に追求したフルカウルボディに上下2段のヘッドライトを採用。D-CBSと呼ばれる前後連動ブレーキを標準装備。1998年にはレッドの色調が明るくなり、寒冷地におけるオーバークールを防ぐためラジエターのバイパスが追加された。1998年モデルまではキャブレター仕様であり、CBR1100XXの中で唯一チョークがついているモデルである。最高速度域は変わらないものの、2代目以降のインジェクションモデルよりも加速力、レスポンスが鋭い。初代ブラックバードはキャブレター仕様の市販オートバイとしては加速や最高速が最も速いモデルである。また、低速ギアにおいて約6000rpmから一気にレッドゾーンまで吹け上がると同時に加速力もさらに増すため、パワーバンドを常用するユーザーや一部のコアな加速マニアの間では「ロケットエンジン」「ミサイル加速」などと評されることもある。FI化された2代目以降もこの特性は受け継がれているが、キャブレター仕様のような急激なレスポンスではなく、乗り味は非常に滑らかになっている。
なお、初代にはダイレクトエアインテーク(ラムエア)は付いていない。 しばしば間違われるが、ヘッドライト下にある金網のついた吸気口はオイルクーラーに走行風を送るものである。 ラジエーターの後ろにオイルクーラーが付いているため、そのままではオイルクーラーに冷風が当たらないため、この様に空気の流入路を設けてある。(発売当時のオートバイ専門誌『ヤングマシン』より)
[編集] 2代目
1999年に登場。最大の変更点は吸気にダイレクトエアインテークとフューエルインジェクションが採用されてチョークレバーが廃止になった他、イモビライザーのH・I・S・Sが採用された。また、連動ブレーキの特性も見直された。燃料タンクの容量が2リットル増え24リットルとなったが、キャブレターモデルよりも実燃費は悪くなった。また、1998年モデルまで不具合が多発したレギュレータも熱対策された。エンジン特性も見直され、「どこからでもスムーズに加速する」「どの回転数でもパワーバンド」「モーターのようなフィーリング」などと評され、人気を博した。
ラムエアが導入されたことにより、オイルクーラーはヘッドライト下からラジエター上に変更された。またエキマニの材質が鉄からステンレスになり、取り回しも1番と4番、2番と3番が連結した4-2-1-2と変更された。合わせてラジエターや冷却ファンの形状も変更された。1998年モデルまでは水温計の針が中央位置を超えると冷却ファンが回るようになっていたが、1999年モデル以降は針が上まであがらないとファンが回らなくなったため、渋滞には弱くなってしまった。そのためスイッチを付けて強制的にファンを回すように改造しているオーナーも見受けられる。
外見上の違いは、ラムエア吸入口がメッシュからスリットになったこと、エキマニやスクリーンのカラーリングが変更、フロントブレーキローターやジェネレータカバー、クラッチカバーが金色になったこと、ホーネット250と共通だったテールランプが縦2段のタイプに変更されたことで判断できる。
[編集] 3代目
2001年に登場。ヨーロッパでの自動車排出ガス規制に合わせて排気ガス浄化装置が追加され、最高出力が152psにデチューンされた他、デジタル式のスピードメーターを新採用。スクリーンのサイズも30mm高くなり、ツアラー向きの性格になった。
また、この年から2003年まで国内販売が行われた[3]。国内仕様モデルでは自主規制に対応するため、180km/hのスピードリミッターが装着され、最高出力は100ps・最大トルクは10.0kg-mに抑えられている。そのほかハザードランプが追加され、「ココセコム仕様車」も登場した。
ヤングマシン、オートバイ等の雑誌媒体では新型モデルの推測も出ていたが、現状モデルのまま販売されていた。2006年に開始された欧州の自動車排気ガス規制(EURO3)の対応車ではなかったが、2007年に入ってからは継続車種も開始され、当車種も規制車両となったが、特別に1年間限定の特例措置で販売されているが、2008年からのEURO3義務化や日本などの各国の新排出ガス規制に伴い、生産終了が決まった。生誕10周年と生産終了を記念して、限定数100台で初期型のカラーリングを再現したファイナルエディションが発売されている。
[編集] 沿革
[編集] 1996年(初代)
- ホンダのフラッグシップとして発売。出力は164PS/10,000rpm
[編集] 1998年
- ラジエターのサーモスタッド作動特性変更。
- ウォーターポンプ変更。
[編集] 1999年(2代目)
- キャブレターが廃止され、PGM-FI仕様に変更。そのためチョークレバー廃止。
- ラムエア加圧システム搭載。上はラムエアに任せて下にトルクをふったため164ps/9500rpmに変更。
- 前後連動ブレーキを改善。
- 燃料タンクを22Lから24Lへ増加。
- オイルクーラー形状変更。
- フロントフォークスプリング変更。
- メーターパネルの「S」(サイドスタンド警告灯)が「FI」(PGM-FI警告灯)に変更。
- テールランプ形状変更。
- クラッチプレート枚数変更。
- イモビライザーH.I.S.S追加。
[編集] 2001年(3代目)
- 排気ガス浄化装置追加。
- 出力を152psにデチューン。
- デジタルスピードメーター搭載。
- スクリーンサイズ30mmアップ。
- リアウインカーの形状変更
[編集] 2002年
- インジェクション車特有の低速でのドンツキ(突然回転数が上がる)をなるべく排除するよう改良。
[編集] 脚注
- ^ しかし内外出版社刊行のオートバイ専門誌『ヤングマシン』の企画において、タイヤのみチューンの事実上フルノーマルで、実測303km/hを記録している。
- ^ 12月5日の項目
- ^ 高性能な大型スポーツバイク「CBR1100XX」を発売