ペン
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ペン(ペン)とは、本来「ペン先」と「ペン軸」によって構成されるインク・墨などをつけて字・絵などをかくための先が尖った筆記具である。もともとはつけペン形式で、先端にインクをつけて毛管現象などで保持させつつ書くものであったが、近代以降、中にインクが入ったものが発達した。現代では万年筆やボールペン、サインペンなどインクによって書く筆記具を総称する。更に転じて筆記用具の代表として、文章やそれを書くこと(文筆業)自体を差す場合もある。ペンネーム・ペンフレンドなど。諺の「ペンは剣より強し」もこの範疇。
[編集] 概要
ペンは、筆記具として普遍的ではあるが、用途・用法によって多種多様な製品が流通しており、特定の作業に特化したものから、何らかの機能性を追加したものまで様々である。ペン先やペン構造に工夫の凝らされたペンがある一方、使用される顔料ないし塗料またはインクに工夫の見られるペンもあり、また軸素材に抗菌素材を利用して衛生をアピールする製品も見られる。
ペンの最も単純な形態は、棒の先に顔料を付着させ、これを器物などに擦り付け線を描く方法である。原初的なものでは指先に顔料をつけ器物に擦り付ける方法も無いではないが、例えば棒を利用することで漆のような素手では扱い難い塗料を用いることも出来るし、また棒を尖らせることで細い線を描くことも出来る。石器時代に指に付けられた顔料で描かれたと見られる壁画も発見されているが、同時期には棒に付けられた染料で描かれたと考えられるものも見られるなど、その歴史は古い。また粘土の板や土器などに棒を使って文様を描いたり、あるいは文字を記したりといった行為は世界各地で自然発生的に同種の行為が行われていたと見られ、やはりその成立は定かではないほどに古い。
後にペンは木の棒の先端部を叩き潰して刷毛のようにしたものから筆へと変化したものと、その先端を尖らせることで細い線を描くようにしてペンとなっていったものに分化し、筆は毛筆などに、ペンは先端部に金属を使ったものなどに変化していったといえよう。
ただ時代を下り、ペンで文章を書く時代にもなると、余り頻繁に顔料なり塗料なりにつけペンを浸しながら書くのは流石に煩わしいこともあり、インクに浸す回数を減らすような工夫が凝らされるようになっていったと考えられる。この中には必然的にインクを蓄える構造を内蔵して、自動的にペン先にインクを供給するようなペンも作られるようになり、一部のペンを除いては、今日利用されるペンの多くがインクを内蔵した形態となっている。
インクの供給方法には、毛細管現象を利用するものと、重力により自然とペン先にインクが集まるようにしたものが見られ、こと万年筆ではその両方を利用している。ボールペンではややその事情が異なり、先端部で自由に回転する小さなボールにインクを付着させ、ボールを転がしながら対象に擦り付ける形で線を描くものだが、ペン先のボールと対象の間に十分な摩擦力が無いとボールが回転せず、線を描くことが出来ない。またある程度は重力でインクが降下しないとペン先のボールにインクが行き渡らないため、一般のボールペンは逆さに使用したり無重力環境では利用できない。そのような環境で利用できるようにガスでインクを加圧したボールペンも作られている。
古くは自然界にある棒状の物品がそのままか、やや加工されてペンとして利用されていたが、より近代的なペンでは合成樹脂などを利用し、より扱い易い形状の製品も多く出回っており、使い捨てを前提としたペンも少なくない。しかし「書く」ないし「描く」という行為は人間の「表現する」という能力の上でも少なくないウェイトを占める部分でもあり、この行為にこだわりを持ち、次いで使用するペンにもこだわりを持つ者も少なくない。このため今日でも古今東西に登場した様々なペンやそれに類する物品が製造・販売されており、様々な製品に各々、愛好者層も見られる。