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ベーシックマスター - Wikipedia

ベーシックマスター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ベーシックマスター(Basic Master)は、日立製作所製のパソコン(当初はマイコン)である。本稿では後に発売されたS1シリーズについても、併せて説明する。

目次

[編集] ベーシックマスター

1978年9月に発売された、日本における初の専用筐体を持つパソコンである。この機種以前にはTK-80に代表される基板剥き出しの、いわゆるワンボードマイコンしかなかった。

以降、後継機が発売されると、愛好家の間では単に「レベル○」、または「ベーマス○」などと呼ばれた。以後、本稿ではレベル1、レベル2などと表記する。

[編集] 諸元

  • 形式 MB-6880
  • CPU HD46800(6800互換・750kHz)
  • メモリ ROM 8KB / RAM 4KB
  • グラフィック解像度 256×192ドット 単色

[編集] BASICインタプリタ

BASICのコマンドには、以下のような機能があった。

  • LISTまたはL(短縮形) :入力したコードの表示、行番号を指定して表示可能。
  • SEQ :行番号を自動的に生成する機能。改行すると次の行番号が表示される。マイクロソフト系BASICのAUTOコマンドに相当する。
  • RESEQ :行番号を指定された刻みで整列する機能。マイクロソフト系BASICのRENUMコマンドに相当する。
  • RUNまたはR(短縮形) :コードを実行する。
  • SAVE :カセットテープにコードを出力する。
  • LOAD :カセットテープからコードを入力する。
  • VERIFY :カセットテープに出力した内容が正しいかどうかを確認する。

[編集] 機械語モニタ

モニタモードに入るには、MONと入力し、終了するにはEをタイプする。

  • M: メモリを256バイトづつ直接編集可能なモード。機械語を直接入力したりメモリの内容を書き換えることが可能。
  • P: プログラムカウンタを変更する機能。
  • S: 機械語をステップ実行する機能。

その他、レジスタの内容を直接書き換える機能があった。

[編集] シリーズ

ベーシックマスターレベル2

レベル1に対して、浮動小数点演算などBASICの機能を強化したモデル。内蔵BASICはレベル2BASICと呼ばれる。

  • MB-6880LII ROM 16KB / RAM 8KB
  • MB-6881 ROM 16KB / RAM 16KB
後述のレベル3と前後して発売された。RAMを増設、価格を改定したモデル。
レベル2と区別するためにLII2と表記されることもある。

シャープMZ-80日本電気PC-8001と共に「8ビット御三家」と呼ばれたが、実際には1980年前後にはPC-8001とMZ-80が日本のマイコン界の主流となり、ベーシックマスターは一歩置いて行かれた存在となった。これは『I/O』など当時のマイコン雑誌に掲載されていた記事や投稿ゲームの数を見る事で、確認する事が出来る。

ベーシックマスターJr.

後述のレベル3の姉妹機種として1981年12月に本体価格 89,800円で発売された。型式 MB-6885。基本設計はレベル1、レベル2と同じだが、筐体の形状が変更され、Jr.は黒い箱型になっている。

別売のカラーアダプタをつけることにより、8色表示が可能となった。こうして白黒表示のマイクロソフト系でない独自ROM-BASICを搭載した機種にカラー機能を加えたものとしては他に、シャープのMZ-700や、タンディTRS-80Model IIIなどが挙げられる。

ちなみに、同年にはNEC PC-6001コモドールVIC-1001など同価格帯のパソコンが多く発売になっている。

[編集] ベーシックマスターレベル3

MPUとしてMC6809を搭載したパソコンである。6809搭載のパソコンとしてはFM-8がよく知られているが、こちらが1年ほど早く発売されている。OS-9 Level1が動作可能。同じベーシックマスターを名乗るが、デザイン・機能ともレベル1・2・Jr.とは互換性が全く無い。 マイクロソフトBASICやグラフィック解像度などはFM-8、MZ-80B/2000、PC-8801など、後に発売されるものに影響を与える。

システムコールの詳細やハードウェアの回路などは、月刊I/Oの別冊『ベーシックマスター活用研究』という書籍に掲載されていた。この書籍ではベーシックマスターシリーズのプログラムコンテストで優秀賞を獲得した作品がソースコードつきで掲載されていた。ゲームでは、VZ Editorの開発者による『デストロイ・エイリアン』が有名である。

[編集] ハードウェア

  • CPU 6809 1MHz
  • 本体とキーボードの一体型。
かなり大きな筐体だったが、その形状と拡張性の高さから「和製Apple II」と呼ばれることもあった。
  • BREAKキーに誤入力防止のためのカバーがついている。
  • 標準でひらがなの表示が可能。ひらがなモードではインタレーススキャンを利用するため、専用ディスプレイは長残像の蛍光体を使用していた。
  • グラフィック解像度 640×200ドット または 320×200(8色)
横の解像度はテキストの表示モードに依存する。色の指定は横8ドット単位で同じ色しか付けられず、かつ非常に動作が遅く、スクロール時の画面更新をキー入力中に待つ必要があるほどだった。このため、写真の様な細かい点画はまだ表示困難だった。
  • その他にローレゾリューションモードがある。

[編集] シリーズ

  • 初代(MB-6890)
1980年5月発売。発売時の価格は298,000円、後にFM-8が218,000円で発売されたことから198,000円に価格改定された。MarkII以降との区別のため、MarkIと呼ぶことがある。
  • MarkII(MB-6891)
1982年4月発売。198,000円。キーボードにステップスカルプチャキーボードを採用。
  • Mark5(MB-6892)。
1983年5月発売。118,000円。イメージジェネレータ(プログラマブルキャラクタジェネレータ)を装備。

[編集] S1

ベーシックマスターシリーズの最後の機種として、MSXパソコンMB-H1が発売された1983年の翌年、1984年に発売された。

レベル3から大幅な機能強化を図っており、MMUを搭載することにより1MBのメモリ空間を実現した。またグラフィックに関しても、当時の16bitマシンPC-9801E/Fと比較しても遜色のない性能を発揮、最強の8ビット機の一つとして挙げられることもあった。

CPUには68B09Eを搭載し、画像処理にはそのファミリーであるCRTCを用いた他、12個の専用ゲートアレイ(カスタムLSI)を開発し、S1の処理能力を16bitマシンに近づけている。

ゲートアレイとその機能

  • YGM001 : システム制御を行う。S1モードとL3モードでクロック周波数を切り替えたり、RAMやI/Oなどのタイミング信号を作る。
  • YGM002 : アドレスデコード用。20本のアドレスバスをメモリーマップに従ってコントロール。
  • YGM003 : YGM002に収まらなかったデコード回路とI/Oレジスタ機能とPSGの制御を行う。
  • YGD001 : グラフィックのメモリ制御とパラレル/シリアル変換を行う。
  • YGD002 : ビデオスーパーインポーズの機能(YGD001と003から出力されるパラ/シリ変換されたビデオ信号を取り入れてRGB信号として外部に出力する。
  • YGD003 : テキスト画面とIG(イメージジェネレーター)のパラレル/シリアル変換を行う。
  • YGD004 : グラフィック表示とS1で増えたI/O部分のデコードを行う他、IG(イメージジェネレーター)の制御を行う。
  • YGD005 : 画面表示用のデータやアドレス出力をCPUとのサイクルスチールで行うためのバッファリング。
  • YGD006 : YGD005と同様の機能。
  • YGD007 : グラフィックのスーパーインポーズなどのためにCRTCから出力されるアドレスを取り込んでアドレスパターンを出力する。
  • YGP001 : オプションのマウスに同梱されるLSIで、ソフトの負担を軽くするためカウンター回路が入っている。
  • YGP002 : カセットとRS-232CをACIAとともに制御する。

OS-9 Level2が動作可能。

日立が発売した独自系のホビーパソコンとしては最後のシリーズとなっている。

[編集] ハードウェア

  • CPU 68B09E 2MHz(レベル3互換モードでは1MHz)
  • キーボード分離型。
  • MMU搭載により1MBのアドレス空間を実現。
    • 4KBを単位としてメモリのマッピングが可能。マッピングレジスタは16ページ分用意されており、例えば文字列の領域を12ページ目、グラフィックメモリを9ページ目などに自由に割り当てることができ、それらをシステムコールでメモリ空間を切り替えながらアクセスするといった処理をすることができた。メモリ空間の保護も可能。
  • RAM 48KB、VRAM 48KB(グラフィックを利用しない場合はS1 BASICのフリーエリアとして利用可能)
  • レベル3互換モードがある。ROM BASICはS1 BASICとレベル3 BASICの2セット搭載。スイッチにより切り替え。
  • オプションの68008カード、Z80カードを搭載することにより、OS-9/68000、CP/Mの動作が可能。

[編集] S1-BASICの特徴

S1-BASICは従来のL3-BASICに比べて大幅にアルゴリズムの見直しがされたBASICで、マイクロソフト社の純正BASICを日立により改良したものとなっている。

  • コマンド・ステートメントが新設され、かつ機能も拡張された。グラフィック関係、プリンター関係、音楽演奏関係、マウス関係など強化。
  • ユーザー領域が大幅に増えた。標準実装で36KBまたは84KB、RAM拡張時で100KBまたは132KBのメモリー領域が解放され、変数領域、文字列領域がそれぞれ44KBずつ確保できる。
  • ハードウェアの機能向上と相まってアルゴリズムの見直しにより処理速度が大幅に向上。

[編集] シリーズ

  • MB-S1/10 1984年5月 基本モデル
  • MB-S1/20 1984年5月 漢字ROM搭載
  • MB-S1/30 1984年12月 1MB FDD1基搭載
  • MB-S1/40 1984年12月 1MB FDD2基、漢字ROM搭載
  • MB-S1/10AV 1985年 スーパーインポーズ、サウンド(6和音)、ジョイスティック
  • MB-S1/15 1985年 /20+通信ソフト
  • MB-S1/45 1985年 /40+通信ソフト
  • 来夢来人(Limelight Interfield Systems) JB-806E1-2 1985年 320KB FDD1基、再生専用データレコーダ1基。明記されていないが、S1互換(OEM)。

[編集] 外部リンク


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