MZ-700
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MZ-700とは、シャープのMZシリーズに属するパーソナルコンピュータの機種名である。
[編集] 概要
MZ-80Kシリーズの後継機である。 CPUにZ80Aを使用し、RAM容量は64KB。
本体のみのMZ-711、データレコーダ内蔵のMZ-721、データレコーダと小型プロッタプリンタを搭載したMZ-731の3モデルが用意された。それまでの本体の「オールインワン」設計とは異なり、いずれのモデルもディスプレイは一体化しておらず、基本モデルのMZ-711にいたっては外部記憶装置も外した形で発売された。
設計はシャープのクリーンコンピュータと呼ばれる思想に基づいており、それを示すように、標準で言語として、シャープ製のS-BASICとハドソン製のHu-BASICの2つのBASICがカセットテープで付属した。
S-BASICはMZ-80K/C/1200で使われていたSP-5030のバージョンアップ版、Hu-BASICはマイクロソフト系BASICとほぼ共通の命令を持つBASICだった。機能面や、他機種のプログラムを移植する際の利便性などから、Hu-BASICを利用するユーザーが多かった。
MZ-80Kシリーズの系統では初めてカラーに対応。デジタル8色カラーでの発色ができたが、グラフィック画面やPCG機能はなく、テキスト文字によるキャラクタグラフィックのみで画面を構成していた。
サウンドは矩形波による単音。
後継機にMZ-1500がある。
[編集] ユーザー満足度
仕様だけ読むと非常に低機能なコンピュータのように感じられる。しかし、グラフィック表現がテキストしかないということは、裏を返せば、8×8ピクセルのグラフィックがわずか2バイトの転送で表示できることになる。そのため、当時のグラフィック性能の優れた機種に比べると相対的に、「処理速度が速い」「ゲームなどではグラフィックデータも小さくて済み、RAMを比較的潤沢に使える」という美点が浮かび上がってくる。またテキスト画面が比較的リニアな設計で、画面上の1文字ごとに前景色・背景色を指定でき、キャラクタもやや豊富に(352種類)あるなかから自由に選べるなどの条件が揃い、キャラクタグラフィック文化が最も開花した機種のうちの一つである。
また、「同社X1や富士通FM-7シリーズではできなかった複数同時キー入力が可能」「実質的にモノグレードマシンで、余計なことで頭を悩ますことがない」等の素直な作りが奏功し、バランスのとれたパソコンとして、プログラムが組めるユーザーにとって満足度の高いマシンとなった。
販売終了後にポテンシャルの限界まで引き出され、Oh!MZ誌の1986年11月号に「ゼビウス(タイニーゼビウス)」、またOh!Xへ誌名変更後の1988年10月号に「スペースハリアー」と、当時の人気アーケードゲームの移植作が読者投稿作品として掲載され、「MZ-700に不可能はない」と言わしめた。
1999年から2000年にかけて、本体のみで擬似的にビットマップグラフィックを表示させる特殊な技法が開発された。
[編集] 周辺機器
- シャープ純正オプション
- データレコーダ
- MZ-721およびMZ-731では標準装備、MZ-711向けの本体組み込み型。
- カラープロッタプリンター
- MZ-731では標準装備、MZ-711およびMZ-721向けの本体組み込み型。
- 12型グリーンディスプレイ
- 14型カラーディスプレイ
- 14型TVモニター
- ディスプレイスタンド
- 80桁ドットプリンタ
- KP5用接続ケーブル
- ジョイスティック
- 当時としては(現在でも)市販機では珍しい、可変抵抗器が用いられたものであり、スティックの角度をアナログ的に検出することができた。(分解能は縦横各0~255)
- システムキャリングケース
- MZ-700が可搬性をも意識された商品であったことがうかがわせられる。バッテリーこそ装備していなかったが、用途を限定しさえすれば、本体に組み込まれたカラープロッタプリンターをディスプレイ代わりに使用し、後のラップトップパソコンやノートパソコンのように活用できる可能性もあった。
- HAL研究所 PCG-700
- 本体との間をフラットケーブルのみで接続する外付けPCGユニット。40×25のキャラクタマップに、255種のPCGを使用したグラフィックを出力することが出来る。パックマンなど一部の市販ソフトではPCGを認識すると自動的に使用するプログラムがロードされるものも存在した。
- ロータス PCG
- 本体内蔵タイプのPCGユニット。Z80A搭載のボード。
- CPUのZ80を取り外してソケットに交換する必要があり、はんだ付け作業が必要で技術的ハードルが高かった。
- CPUクロックは映像副搬送波の3.58MHzを流用していたが、CPUに供給するクロックを変更する事で処理速度を5MHz程度まで上げる事が出来た。この場合データレコーダへの転送レートが変わるため、データレコーダー入出力時のタイミングを合せる回路も必要となる。