フォークリフト
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フォークリフトは荷物を運搬するための特殊自動車。主に工場や倉庫、ホームセンターなどの倉庫型小売店、貨物駅、港湾などの構内、建築設備工事等における荷役作業に使われる。
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[編集] 車両の種類
小型のものは原動機にガソリンエンジンあるいは圧縮天然ガス、LPGを燃料にしたもの、バッテリーを使用した電動機のものもある。大型のものではディーゼルエンジンのものが多い。
[編集] バッテリー車の普及
電気自動車がなかなか普及しないのと対照的に、フォークリフトでは以前からバッテリー車がある程度普及している。これには次のような理由がある。
- 倉庫・工場内など密閉された空間で使用されることが多いため排気による健康被害が野外で使用される自動車より深刻である。
- 一定の事業所内だけで使用されることが多いので、電気スタンドのようなインフラを必要としない。長距離を走るわけではないので、万一バッテリー切れになっても、救援が簡単である。
- 前車軸より前方に積む荷物と釣り合わせるための重し(カウンターウェイト)を車両後部に装備するほどなので、バッテリーによる重量増が問題になりにくい。またこの重しが車体の安定度向上と内燃機関(エンジン)式よりコンパクトな車体設計につながっている。
- 導入時のイニシャルコストでは内燃機関式(エンジン)をコストで上回るものの、ランニングコストでは電気とガソリン(軽油)のコストを比べると電気料金が安く、コストメリットが出るため近年の需要の伸びは著しいものがある。
[編集] 車両の特徴
- 前方にフォーク(つめ)があり、その「つめ」を荷物の下部やパレットに差し込んで、持ち上げて移動するので、前方の視界が確保できるように、座席の位置は相当高い。
- 普通の自動車と違い後輪操舵なので、ハンドルの旋回方向と車両の挙動が普通の自動車と違い、運転には慣れが必要。
- 一部車種は前輪の向きを変えられる物もあり真横への走行も可能。
- ホイールベースが短く最大舵角が大きいので小回りが効く。
- 荷役走行時は後退走行が基本である。荷物が小さく視界が確保できる場合は前進走行でもよいが、事業所によっては「前進禁止」の規則を定めていることもある。
- アタッチメントの装着により、丸いもの(新聞の印刷用紙など)をそのままつかむことができたり、持ち上げた荷物を反転させたりできるものもある。
- トラックに積み付けを行う場合に少しだけ左右に動かせるもの(サイドシフト)もある。
- 特に長い「つめ」が必要な場合、「つめ」に「サヤ」(鞘)を取り付けることがある。
- 積雪地では「つめ」に除雪ブレードを取付けて、会社敷地内などの簡易的な除雪車として用いている例もある。ただし本来の使用方法ではないためにブレードは正規のメーカーオプションには存在せず、使用者個々で鉄工所などに制作を依頼したものが使われる。
[編集] リーチリフト
ツメの部分(マスト)が伸縮できることを大きな特徴とする、フォークリフトの種類の一である。このような構造ゆえ最小回転半径が小さく、倉庫など狭隘な作業場所において広く用いられている。カウンター式と違い、基本的には立ち乗り式であるが、なかには座って操作する製品も存在する(海外では座って運転するモデルが主流で座乗式ともいわれる)。ブレーキ方式としてはデッドマンブレーキと呼ばれる、ペダルを放すことでブレーキを効かせる装置が装備されており、運転者が運転台を離れた際の逸走を防いでいる。
リーチ式の長所としては、先述のようにカウンター式より小回りが効く・動力方式がバッテリー式の為、周囲環境に優しい点が挙げられるが、短所としては、連続稼働時間が内燃機関式より短い・動力方式が内燃機関式よりパワーの劣るバッテリー式のみである・バッテリーに給水が必要・初期導入コストが高価であるなど、バッテリー式特有のものがそのまま現れている。
なお、「プラッター」と呼ばれることも多いが、これは我が国で最初にリーチ式バッテリーフォークリフトを開発した日本輸送機製品の商標である。元々は旧国鉄の鉄道輸送部門において、貨車とプラットフォーム間での荷役作業を目的として開発された。当時「スクーター」など「ター」を商品名に採用することが流行っており、プラットホームにちなんでつけられた。現在でも最小モデルの車体幅は990mmであるが、これは貨車内での荷役作業に基づき設計されたものである。「プラッター」を開発の原型として、その後はトヨタなどの後発メーカーが現れたが、現在でもリーチ型フォークリフトの代名詞として定着している。
※ リーチ (Reach) = ある場所や目的地などに到着する・目的などを達成する・手や腕などを伸ばす の意。
[編集] 車両の登録・課税関係
日本では、構内だけで作業するフォークリフトにはナンバープレートがない場合があるが、必ずしも不要とは言い切れない。構内作業車を市区町村に登録せず軽自動車税を支払わないと、固定資産税の償却資産として課税される。小型特殊の軽自動車税の方が安い場合があるので、構内だけを走るフォークリフトでもナンバーがついていることがある。小型特殊自動車を含む軽自動車税は、公共用途等の免除あるいは一部の減免規定を除き、公道走行の有無を問わずに課税対象となり、軽自動車税を納付した証票としてナンバープレートが交付されるからである。詳細は、各市区町村の軽自動車税担当部署に問い合わせのこと。なお、大型特殊の場合は、運輸局運輸支局などでの登録が必要。この場合、自動車重量税の対象となり、車検が必要で固定資産税の償却資産の対象となる。構内作業車でナンバーがなければ償却資産で課税される。
[編集] 公道走行の免許と保険
公道を走行するものは、大きさなどの区分で小型特殊自動車または大型特殊自動車となるので、対応した運転免許が必要となる。小型特殊は原付以外のいずれかの免許があれば運転できるが、大型特殊は大型特殊1種または2種の免許がないと運転できない。下記の操作に必要な資格は「走行だけなら」不要である。車両については、上記のナンバープレートの取得、自動車損害賠償責任保険の加入が必須である。また、公道上で荷役作業をしてはならない。
[編集] 操作に必要な資格
日本国内で荷を積んでの作業、すなわち構内における荷役作業を行うためには、技能講習や特別教育によるフォークリフト運転者としての資格が必要である。但し、資格の有無にかかわらず公道での荷役をすることは出来ない。公道では荷物を載せたり積んだりせずに走行することが出来るだけである。この場合は上記の運転免許を持っていなければ無免許運転となる。
[編集] 特殊自動車の区分
- 特殊自動車参照、高さ2mまでのものは小型が多い。
[編集] メーカー
- - 住友フォークリフト (SUMITOMO)
- - シンコーフォークリフト (SHINKO)
たとえば、ニチユとトヨタでは、操作レバーの配置の違う(前・後進レバーと、1・2速レバー配置が左右逆)ものがある。ニチユ式を採用しているメーカーが多いが、後発メーカーであるトヨタは独自の配列を標準仕様として開発した。(なお、かって神鋼電機が製造していたモデルでも独自のレバー配列を採用しており「神鋼式」といわれた)従って違うメーカーのフォークリフトに乗ると間違うことがあるので注意が必要。事業所によっては改造して操作方法を変更している場合もあるので、いつも乗り慣れたメーカーでも油断はできない。日産のフォークリフトには、フォークの上下とチルトを1本のレバーにしたモデルがあった。