ドクササコ
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ドクササコ | ||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||
Clitocybe acromelalga Ichimura | ||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||
ドクササコ |
ドクササコ(毒笹子、学名Clitocybe acromelalga)はキシメジ科カヤタケ属に属する日本特有の毒キノコ。別名ヤブシメジ(藪しめじ)、ヤケドキン(火傷菌)、ヤケドタケ。明治24年(1891年)に京都と福島で初めて症例が報告され、大正7年(1918年)に金沢第四高等学校教授・市村塘(つつみ)により新種として発表された。
秋に、タケやササ、コナラ林などの地上に群生する。傘は径5-10cmで茶褐色。ひだは黄白色。柄は傘と同色で、縦に裂けやすい。このキノコは腐りにくい。
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[編集] 特徴ある毒性
ドクササコによる食中毒は他の毒キノコとは異なる、薬理学的にも独特な症状を示す。このキノコを食べた場合、消化器症状は無く目の異物感や軽い吐き気を経て数日後に手足の先、鼻、陰茎など身体の末端部分が赤く火傷を起こしたように腫れあがり、その部分に激痛が生じる。ヤケドキン(火傷菌)と呼ばれるのはこの特徴による。
この症状は長期間(1ヶ月以上)続く。成人の場合、死に至ることは稀だが老人や子供では死亡した例も報告されている。これは、激痛を和らげるために患部を水に浸し続けた結果、皮膚の剥離により感染症などを起こしたことによる。また、この長期に渡る苦痛がもたらす精神的ダメージは軽視できず、激痛から逃れるための自殺や消耗による衰弱死と見られる例もある。
この激痛は強力な鎮痛剤であるアスピリンやモルヒネでさえ抑制できないのが特徴である。[1] 本稿執筆時点(2005年12月)、有効な鎮痛方法は局所麻酔による硬膜外神経ブロックに限られている。完全な治療法は確立されてはいないが、血液透析やニコチン酸とATPの投与により症状が軽減することがわかっている。
ドクササコの毒性成分として、クリチジン、アクロメリン酸などが見つかっている。クリチジンには血管拡張作用が、アクロメリン酸には脳のグルタミン酸受容体を介した、神経興奮作用があることが判っているが、上述の火傷と同様の症状が現れる理由はまだ明らかになっていない。
ドクササコは実においしそうな姿をしている上、他のカヤタケ属のキノコには食用となるものが多いため、これらと間違えて食べる事故が多い。ドクササコ自体の味はあまり良くない。ある農村では、キノコ中毒だと分かるまで定期的な風土病だと思われていたという。このような毒による過酷な苦しみを避けるためには、生半可な知識でキノコを採取しないことが一番である。「たぶん大丈夫でしょう」という安易な判断の代償はあまりに大きすぎる。
ヒダハタケも、ドクササコと同じく性質が悪いキノコとして知られる(人体に長期間影響するため)
[編集] 同様の症状を起こす他のキノコについて
2001年になって、フランスで同じくカヤタケ属のClitocybe amoenolens[1]によりドクササコと同じ症状の中毒が起こったことが報告され、ドクササコと同じくアクロメリン酸がキノコから検出された[2]。今では、欧米ではこれらのキノコ中毒をドクササコにちなんで"Acromelalga-Syndrom"と呼んでいる。
[編集] 脚注
[編集] 外部リンク
- ドクササコ-神戸市保健福祉局環境保健研究所
- ドクササコ(pdf)-財団法人 日本中毒情報センター
- 毒キノコデータベース-滋賀大学