トロポニン
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トロポニン(Troponin)は骨格筋、心筋の収縮に不可欠な3つの蛋白質の複合体であるが、平滑筋ではない。そしてそれはタンパク質トロポミオシンに付着しており、筋組織中の様々なアクチン・フィラメントの間の溝の中に沿って点在している。弛緩した筋肉において、トロポミオシンはミオシン架橋に対して、筋収縮を防止して、結果的に付着部位をブロックしている。筋肉細胞が収縮するために活動電位によって刺激されるとき、カルシウム・チャンネルは筋小胞体において開放され、筋形質の中にカルシウムが解き放たれることになる。このようなカルシウムのあるものはトロポニンに付着する。この間、クロス・ブリッジがアクチンに接触し、筋収縮を起こすためにトロポミオシンを障害にならないように移動させる立体構造変化を引き起こす。 トロポニンは骨格筋、心筋両者において見出すことが可能であるが、トロポニンの特定の(構造)変異は筋肉のタイプによって個々に異なるのである。 主要な差異は骨格筋のトロポニンのTnCサブユニットは四つのカルシウム・イオン結合部位を持っており、その一方、心筋のそれは3つであると言うことが上げられる。トロポニンに関する議論としてしばしば機能的な特徴に関する主題が遡上に上げられる。そして様々な心臓疾患に対する診断マーカーとしてその有用性が同時にもしくは選択的に問題となっている。本蛋白質は江橋節郎によって発見、命名されたものである。
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[編集] トロポニンの役割
心筋および骨格筋の両者は細胞内のカルシウムの濃度が上昇する際に細胞内のカルシウムの濃縮の変化によって制御されている。カルシウム濃度が上昇する際に、筋肉は収縮し、下降するとき弛緩する。トロポニンは(アクチンとトロポミオシンと一緒に)細フィラメントの要素を成し、かつそれはカルシウムがこの規定の活動を達成する目的においてカルシウムが結合する蛋白質である。トロポニンはTnC, TnI, TnTの3つのサブユニットからなる。カルシウムがTnCの特異部位に結合する際に、トロポミオシンはアクチン・フィラメントの活性部位の経路から外れ、その結果、(筋肉の太いフィラメント内において有機的に構成された分子モーターである)ミオシンは細いフィラメントに結合し得ることになり、そして力と運動、もしくはそのどちらか一方を生み出すことになる。カルシウムが存在しない状況において、トロポミオシンはミオシンのこの活動を阻止し、その結果筋肉は弛緩した状態を保つのである。トロポニンIはまた生体内でかつ実験機器内において血管形成を阻害することが明らかになっている。 個々のサブユニットは異なった機能を果たす。トロポニンCはTnI内において立体構造変化を遂げるためにカルシウム・イオンに結びつく。トロポニンTはトロポニン・ミオシン複合体を構成するために、カルシウム・イオンに連結し、トロポミオシンに結合する。トロポニン Iは適当な位置にトロポニン・トロポミオシン複合体を保持するために細い筋フィラメントにおいてアクチンに結合する。
[編集] 診断用途
トロポニンのある種の亜型(心臓トロポニンIとT)は非常に感受性が高く、心筋(myocardium)の損傷を確認する特別のインディケーターして援用可能である。それらは胸痛に苦しむ患者の不安定狭心症と心筋梗塞症(心発作)の間の差異を血液において測定するのである。 例えば心筋梗塞に苦しむある患者は損傷した心筋の領域を持つことになり、その結果、血中の心臓トロポニンのレベルが高められることになる。 心臓トロポニンが心筋の損傷のマーカーであり、単に心筋梗塞のそれではないことは特筆に価することであろう。 直接的にもしくは間接的に心筋の損傷をもたらす他の条件はまた、結果としてトロポニン・レベルをも上昇させ得るのである。
[編集] 心臓
- 心アミロイドーシス
- 心挫傷
- 心臓外科と心臓移植
- 除細動
- 心房中隔欠損症の閉鎖
- 冠攣縮性狭心症
- 拡張型心筋症
- 心臓麻痺、心不全
- 肥大型心筋症
- 心筋炎
- 経皮冠動脈インターベンション
- 高周波アブレーション
- 上室性頻拍症
[編集] 非心臓性
[編集] 心臓トロポニンの検出
心臓トロポニンTとIは免疫測定法によって測定される。 特許に関する規則によって一社が独占的にcTnTを流通させている。 多くの診断企業の多くはcTnIを、異なった免疫学検定のプラットフォームにおいて利用可能な免疫測定法としている。
[編集] 心臓毒性と心保護の検知
薬剤誘発性の心臓毒性はすべての治療薬に共通することである。 薬剤誘発性が高度の感受性と特異性と共に検知されることは最大限に重要なことである。 この様な状況において、新たに開発されたトロポニンは取り分け有用である。 同様に、治療的介入の心保護作用は、取り分け一般的な外科手術中において心筋の統合性を保つために最も重要な事項である。 心臓トロポニンに対する高感度検出法は診療行為の防護効果をモニターするのに用いることが可能である。
[編集] 資料
- Antman EM, Tanasijevic MJ, Thompson B, Schactman M, McCabe CH, Cannon CP, Fischer GA, Fung AY, Thompson C, Wybenga D, Braunwald E. Cardiac-specific troponin I levels to predict the risk of mortality in patients with acute coronary syndromes. N Engl J Med 1996;335:1342-9. PMID 8857017.
- Ammann P, Pfisterer M, Fehr T, Rickli H. Raised cardiac troponins. BMJ 2004;328:1028-9. PMID 15117768.
- Collinson PO, Boa FG, Gaze DC. Measurement of cardiac troponin. Ann Clin Biochem 2001;38:423-449. PMID 11587122.
- Gaze DC, Collinson PO. Cardiac troponins as biomarkers of drug- and toxin-induced cardiac toxicity and cardioprotection. Expert Opin Drug Metab Toxicol 2005;1:715-725. PMID 16863435.
- Gaze DC. The role of existing and novel cardiac biomarkers for cardioprotection. Curr. Opin. Invest. Drugs 2007;8:711-7. PMID 17729182.