トリートーン
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トリートーン(トリトン、Τρίτων, Triton)は、ギリシア神話に登場する神の一柱。深淵よりの使者とされる。海神ポセイドンとアンピトリテの息子。パラスやメラニッポスの父。人間の上半身と魚の尾を持つ人魚のような姿で描かれるのが典型である。
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[編集] 海の神トリートーン
父親と同じく、彼もまた三叉の矛(トライデント)を持っている。しかし、彼の最たる特徴は、波を立てたり鎮めたりするためにラッパのように吹く法螺貝である。 高らかに吹き鳴らされるその音たるや、巨人たちが「強健な野獣のうなり声だ」と勘違いし逃げ出すほど恐ろしいものであった。(Hyginus, Poet. astronom. ii. 23)
ヘシオドスの『神統記』によれば、トリトンは深海の黄金宮殿で両親とともに暮らしている。アルゴ船物語では彼の家をリビアの海岸だということになっている。 アルゴ船が小シルテスの浜に打ち上げられた際、乗組員らは大船をトリトニス湖へ運び、そこの神であるトリートーンが彼らを地中海へと導いた。(Apollonius Rhodius iv. 1552)
トリートーンはまたローマ神話や叙事詩にも登場する。 『アエネイス』では、アエネアスのラッパ吹きであるミセヌスがトリトンに対しラッパ吹き競争を挑んだ。 勝利したトリトンは傲慢な彼を海へ放り投げた。
時を経て、トリートーンの名前とイメージは、人魚のような生き物の類であり、雄または雌で、海の神々の護衛隊を組織するTritonsと関連づけられるようになった。
一般的なトリートーンらは地理学者のパウサニアスによって詳細に述べられている。(ix. 21). トリトンの種類として、ケンタウロ-トリトンまたはイクチオケンタウロスが、人の体と魚の尾に加えて馬の前足を持つ者として述べられている。 これは、トリートーンの着想がフェニキアの魚の神ダゴンに由来する事による可能性がある。
[編集] 衛星トリトン
トリトンにちなんで名づけられたものの中に、海王星の最大の衛星トリトンがある。 海王星の英名ネプチューンの語源であるローマ神話のネプトゥヌスはギリシャ神話のポセイドンと同一視されており、この衛星の名は象徴的である。
[編集] 名港トリトン
名港トリトンは伊勢湾岸自動車道の名古屋港に架かる3つの橋の愛称。それぞれ赤・白・青の3色に色分けられている。トリトンが海の神ポセイドンの息子であることや、「トリ」が「3つの~」を意味する「tri-」に通じることからこの愛称が使用されることになった。
橋長はそれぞれ758m、1,170m、700mに及び、世界的に最大規模を誇る往復6車線の海上斜張橋梁群である。
[編集] 全日本空輸
全日本空輸は、多少の変更点はあるものの1982年に30周年を記念して現在の青色基調の塗装に変わった。この青色を「トリトンブルー」と呼ぶ。トリトンは嵐を鎮める「安全の神」として崇められ、船の航行の安全を守っていたとされている。「海」から「空」に変わっているものの「安全運航」を掛けて名付けられた。余談だが2008年3月現在、「トリトンブルー」塗装となってからは有償飛行において重大事故は一度も起こっていない。