チーム医療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
チーム医療(ちーむいりょう)とは、医療環境のモデルのひとつ。従来、医師が中心となって医療業務を形成していたが、医療従事者がお互い対等に連携することで患者中心の医療を実現しようというものである。
従来型の医療モデルの欠点として、医療従事者がすべて医師の配下に入ってしまって主体性が発揮できなかったり、内科と外科の対立などがあり結果として最善の医療が実現できなくなることがあるという点があった。この関係を水平な構造にし、外科と内科などの医局間の壁を完全に取り去り、それぞれの立場からの提言を互いにフィードバックしながら医療を行うというのがこの考え方である。無論、この構造の中心には患者が位置し、チームの一員として捉えられる。
具体的な方策としては、
- 看護師が診療録とは別にまとめている看護記録をカルテと統合するなど、情報の共有
- 臨床薬剤師、専門看護師や臨床栄養士の積極的な回診への参加など、意見交換の機会の確保
- ペインコントロール専門の看護師など、スペシャリストの育成
- 内科や外科、放射線科、麻酔科などで合同カンファレンスやキャンサーボードなどの合同会議を開いたり、一つの医局に外科医や内科医を集めたりし一人の患者に専門ジャンルの違う医師が合同で治療方針を立て治療にあたる
- 外科と内科の壁を完全に取り去り、一人ひとりの患者さんに相互の立場からより建設的な意見を出し合い、チーム医療を組む
などが提案され、一部で実行されている。
ただし、日本の現状では法的にほとんどの医療行為が医師の指示のもとでなければ行ってはいけないとされ、制度面での整備は追いついていない。また、現場でも長年の主従意識は容易に解消できるものではない。
特に様々な意見の反映が求められるガン医療にはとてもチーム医療は重視されている。日本乳癌学会では特にチーム医療を重視しており、単なる医療環境のモデルだけでなく、学会の研究活動としてとらえられている。がんのチーム医療は他の癌腫にもひろがっており、ガン対策基本法案にも推進を記載されている。