チョコバナナ (雑誌)
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チョコバナナは、KKベストセラーズおよびティーツー出版から発行されていた、単行本形式のイラスト投稿雑誌。略称は「チョコバ」「CB」英語表記は「CHOCO(LATE) BANANA」。当初は隔月刊で、のちに季刊誌となる。1996年に創刊され1998年に休刊となった。
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[編集] 概要
- 週刊少年ジャンプの読者コーナー「ジャンプ放送局」(以下JBS)を手がけていたさくまあきら。その中の1コーナー「ミスJBSコンテスト」には、毎回レベルの高い美少女イラストが投稿されていた。そのJBSが終了することになった時、レベルの高さを惜しんださくまが自費出版で続けることを選んだ。
- タイトルの由来は、縁日の屋台のチョコバナナ。「女の子しか買えないタイトルにはしたくなかった」「トッピング(絵)で風味が変わるというのもある」そうだが、のちにさくま自身「(命名に関して)失敗を認める」とコメントしている。
- 投稿は各コーナーに分けられ、さくま以下選考スタッフによって選ばれた作品が掲載される。投稿作品はランクによって点数が付けられ、白黒ページの場合、各コーナーごとの大賞「金のバナナ賞」には5点。その後4点、3点、2点と下がっていき、掲載時の大きさも変化する(のちに1点枠も追加された)。表紙を含むカラーページの場合、最も目を引く表表紙の最高作は7点、裏表紙と一ページ目の最高作は6点。その後5点、4点、3点枠がある。表紙カバー折り返しにも3枚ずつ作品が掲載された(3点)。当初はハガキのみの投稿だったが、後に漫画作品も投稿の対象になった(10点)。
- 投稿作品が採用されると、別冊の小雑誌「チョコバナナチップス」が送られた。これは読者コーナー「バナナで栄養補給!」や添削専門のコーナー「添削テンサイ塾」も同じ。また、その「チップス」自体に掲載された人も対象になった。各界の著名人からの「チョコバナナ」に対する感想や、製作裏話などが載っていたと言う。
- 採用作品には、投稿者のデータとして住所(県または市)・氏名(ペンネーム)・獲得点数・生年月日・年齢・血液型が添えられた。さらに2巻以降は性別を表すスペード(男性)ハート(女性)マークが追加された。さくま曰く「誰でも仲間になれる本の第一歩」で、読者の「この人同じ県の出身だ~!」とか「私と一歳違いなのにどーしてこんなに上手いの!?」というリアクションが来るようにしたという。編集後記では、同じようにさくまたち編集者の生年月日も記されている。
- 掲載作品の多くには、スタッフ同士の会話という形でコメントが付けられる。内容は主に「採用されたポイント」「良かった点」「改良すべき点」などで、そのため時に専門用語が飛び交うことも。そのコメントを受けた投稿者も、それ以外の人も、さくまたちの教えを次の投稿に反映させる。そういう形でほぼ全員がレベルアップして行き、しまいには「目つむって選んで、適当に並べてもおなじだ、これじゃ」(さくま)「みんな上手くて、ずば抜けた人がいないのねん!」(榎本)と、選考するほうが大賞選びに苦しむ姿が毎号のごとく見られた。またコメントを通じてさくまたちから「絵や漫画の秘伝(Byさくま)」を教えられるため、この本自体が「投稿作品を題材にしたテキスト」としても機能するようになっている。教えの中には「アオリ」「切り返し」など、さくまが「プロと呼ばれる人でも半分以上が描けてない」と言うテクニックも存在し、このことを指して「現在のイラストレーター・漫画家たちのために、復刻版を出すべき」と主張するファンも多い。
- 累計獲得点数が100点に達した投稿者は「名誉会員」と呼ばれ、栄誉を称えられた。達成した次の号で自己紹介ページ「百点記念館」が設けられ、投稿者の直筆によるプロフィールや、会員番号などの発表が行われた。[1]この会員番号は達成順ではなく、1~100(のちに99)の中から好きな番号を指定できると言うシステムで、「名誉会員第一号は1番を選ぶか?」という事も注目された。名誉会員となってからも通常の投稿は可能で(上記のデータの「獲得点数」の代わりに会員番号が表記される)、後続の投稿者の乗り越えるべき「壁」となる・・・はずが、時にその名誉会員の方が2点や1点枠に追いやられるという、激戦が毎号のごとく繰り広げられた。
[編集] 主なスタッフ
[編集] 選考スタッフ
- さくまあきら(1~16巻)
- 編集長。赤字にも病気にもめげずに編集・発行を続けた。「投稿者たちの作品で月刊漫画誌を作る」「アニメ・ゲーム等のメディアミックスを展開する」と、チョコバナナに関して数々の夢を持っていた。
1~4巻の選考スタッフ3人は、さくまの事務所兼出版社「(有)サマープロジェクト」のメンバー。
- 佐藤憲亮(1~4巻)
- デザイナー。元バナナグローブスタジオ社員。身長は不明だが体重が45キロしかなく、「スケルトン佐藤」の異名を持つ。自称「悲しげ評論家」で、目や雰囲気などが「悲しげ」な作品を好む。猫マニアでもある。
財政難から事務所を解散した5巻以降は「ジャンプ放送局」などで一緒だった二人が参加する。
- 土居孝幸(5~16巻)
- 漫画家、イラストレーター。JBS時代の「独身」「スケベ」ネタは健在。その一方で、プロの漫画家ならではのちゃんとした意見や体験談を語ることもある。4巻以前にもスタッフの似顔絵イラストで参加していた。2巻ではさくまの病室にお見舞いに行っている。
- 榎本一夫(5~16巻)
- デザイナー、レイアウター。JBS時代には「お仕事ほしいのねん」と言っていたのが、とうとう社員まで募集するようになった。「貧乏ネタ」もさくま、土居との掛け合いも相変わらずだが、たまにプロならではの意見を言うことも。2巻でさくまの見舞い、4巻で編集部に電話してきたという形で登場。
[編集] 挿絵イラスト
- 澤良一
- マスコットキャラ「チョコバナナ君」をはじめ、各コーナーの扉絵、次回予告カットなどを担当。元サンリオ社員。同時期にジャンプの読者コーナー「バトルリーグジャンポスト」の挿絵も担当していた。
- 新岡優哉(1~4巻)
- 元JBS投稿戦士。ランキング表など、数点のカットを担当。
- 土居孝幸
- 選考参加と同時に、上記の新岡のカットを土居のものに入れ替えた(澤のカットになったところもある)。
- 原勝徳
- 元投稿戦士。1~4巻の目次カットのみ。編集後記にはクレジットされていない。
[編集] その他の主なスタッフ
- なかむら治彦+スタジオHEGE
1巻で「編集協力」としてクレジット。
- 佐藤友美、中村亜紀子、高橋章子
レイアウター3人娘。3巻「ノンセクション部門」で、増田と共に小特集「ナイスガイ」を組む。
- 米山隆史
元投稿戦士。4巻で「編集協力」としてクレジット。
- 石関秀行
「怪物パラ☆ダイス」のスタッフ。4巻「モンスター部門」にて、採用モンスターの承諾書の説明をした。
- 佐久間真理子、佐久間ゆり
さくまの妻と娘(連れ子)。スタッフをリストラした5巻以降、編集のお手伝いに駆り出される。娘は日付のスタンプ押しと1~2点枠の復活掲載を担当していたそうだ。さくまは「家族3人だけでせこせこ作ってる本、家内制手工業マニファクチュアだよ」と言っていた。
- 野澤知子
レイアウター。バナナグローブスタジオ所属だったが、8巻を最後に退社したそうだ。しかし9巻以降も「編集協力」という形で残った。
- 牧野正
営業。10巻よりクレジットされる。「編集者と営業の数は同じなのが出版界の通例なので、形だけでもマネした」とのこと。7巻でさくまは「営業担当いない。20年来の博多の友人が営業のお手伝いをしてくれる」と言っていた。
[編集] 点数システム
累計獲得点数に対して、様々な特典が用意された。
- 20点
投稿データの頭に「バナナマーク」がつく。いわゆる常連になった証のつもりだったが、該当者が増えすぎたため、3巻にて早くも廃止される。
- 50点
自己紹介漫画「バナナDAYS」の執筆権が与えられた。が、途中から枠を取り払い、誰でも参加できるようになる。詳しくは後述。
- 100点
名誉会員となる。希望者には、プロとしての仕事を斡旋(実際に希望者がいたかは不明)。さらに編集部への訪問も許可される。トレーディングカードゲームなど、名誉会員で色々とやる計画を立てていたようだ。
[編集] コーナー紹介
- 美少女部門
- 毎回異なるテーマで美少女イラストを募集。前身となる「ミスJBSコンテスト」の形式を引き継いだコーナーと言える。
- ファンタジー部門
- 毎回テーマに沿ったファンタジー系のイラストを募集。「戦士」から「妖精」までテーマの枠は広かった。
- モンスター部門(1~10巻)
- RPGやアクションゲーム等に登場するモンスターを募集する。ここから「怪物パラ☆ダイス」が生まれた。
- パラ☆ダイス倶楽部(11~16巻)
- モンスター募集はそのままに、ゲームの情報も紹介するようになった。
- ゲームキャラ部門(14~16巻)
- 投稿の部分を独立させた。「お邪魔キャラ」など、多少枠も広げた。
- ヒーロー&ヒロイン部門
- 投稿者オリジナルの作品の登場人物イラスト(できればタイトル付)を募集する。略称は「ヒロヒロ」。「何度でも同じキャラを描いてよい」のが最大の特徴で、描き続けられたキャラにポーズがつき、表情が出て、生き生きと動き出す様が巻を追うごとに見られた。後述の「ストーリー漫画部門」の作品の多くも、もともとはここで展開して人気が出た作品たちである。さらにOVAなどの展開も考えられていたようで、同誌における、いわゆるメディアミックスの中心的コーナーだった。CBが出るまでは、読者のオリジナルキャラを投稿できるのはファンロードぐらいしかなかったのが、のちに爆発的に増えることになる。
- ノンセクション部門
- 各コーナーの枠に収まらない、「その他」のイラストコーナー。基本的にどんなテーマ・コンセプトでもOKだが、よく特集が組まれたものとしては、既存の文学小説の表紙イラスト、芸能人の似顔絵など。小特集から独立コーナー化されたものも。
- 漫画の1シーン部門
- オリジナル漫画の1シーン(ハガキ一枚につき1ページ分)を投稿する。上記の「ヒロヒロ」のキャラが活躍する作品が多かった。一度に何枚も投稿して、数ページ分の短編にしてしまう投稿者も存在した。
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- 漫画の3ページ部門(14巻)
- 漫画のイントロから3ページ目までを描く。その短い間に、どれだけ読者に物語を正しく伝えるか(ジャンルは?主人公は?敵の目的は?等)がテーマ。
- ヒール部門(ヒール&ライバル部門)
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- 「ヒロヒロ」のキャラと敵対する悪役を募集する。さくまの期待に比して投稿は振るわず、金のバナナ賞は一回しか出なった。
- 2コマ漫画部門
- いわゆる2コマ漫画を募集する。実際には4コマ漫画も多数掲載された。
- バナナタウン物語(8巻、10巻、12巻、14巻)
- 「ドクタースランプ」のペンギン村のような、服を着た動物の住人や野菜・果物型の家などがいっぱいのメルヘンな町「バナナタウン」を創造する。住人、建物、地形、その他アイデアの文章投稿など。最大の特色は「アイデアを共有する」ことで、例えばAさんが考えた「ウサギの先生」を、Bさんが4コマ漫画にしたり、Cさんが先生の家を考えたり、という風に発展させることができた。2回目にして早くもストーリー漫画が投稿されて、さくまたちを驚愕させた。
- 原作チャレンジ部門(10巻、13巻)
- あかねこかの書き下ろし原作「勇者伝説アギーレ!」を漫画化する。投稿作品は本来、増刊「CBヒーローズ」の目玉になる予定だった。参加者の中には元カプコンの西尾仁志も。最後に模範作品として、山本貴嗣が執筆。
- スト-リー漫画部門(7巻、9巻、11巻、14~16巻)
- 投稿者のストーリー漫画を掲載。紙面の半分が漫画で埋まった後期には、投稿と執筆依頼の中間という感じで、作者とさくまが綿密な打ち合わせをしていた。
- モンキーバナナ(1~5巻)
- いわゆる「掲載まで後一歩」なコーナー。初投稿の人を重点的に選ばれたが、のちに各コーナーの1点枠として合併、消滅する。
- バナナDAYS
- 当初は50点獲得した投稿者のためのコーナーで、「趣味」をテーマに1ページ漫画を描く。ところが権利獲得者に比して応募があまりにも少なく(あっても「無趣味です」というのが多かった)、さくまを嘆かせた。テーマを自由とし、さらに誰でも参加できるようにし、「これでだめだったらCBやめる」と言ったところ、爆発的に投稿が増えた。のちに4ページまでの投稿が可能となった。
- 添削テンサイ塾
- 絵の添削専門のコーナー。途中からQ&Aも受け付けるようになる。時には他コーナーの作品を見たさくまが「悩んでるんだろうな」と感じた投稿者に、あらかじめ答えを用意しておく事もあった。
- バナナで栄養補給!
- 文章のみの人も載れる、いわゆる通常の読者コーナー。主な内容は感想、ファンコール、後述の「チョコバナナ盛り上げ隊」の活動報告など。