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タウシュベツ橋梁 - Wikipedia

タウシュベツ橋梁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

タウシュベツ橋梁(2005年9月撮影)
タウシュベツ橋梁(2005年9月撮影)

タウシュベツ橋梁(タウシュベツきょうりょう)は、北海道上士幌町の糠平湖にあるコンクリート製アーチ橋。タウシュベツ川橋梁とも呼ばれる。よく晴れた風のない日に、湖面に橋が映るとめがねのように見える。またアーチ橋ということもあり、「めがね橋」の別名をもつ。古代ローマの遺跡を思わせるその姿は、周辺の景色とも調和しているとされる。第1回北海道遺産に選定された「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」の1つである。

もともとは、旧国鉄士幌線1987年廃線)が1939年十勝三股駅まで開通した際に、音更川の支流であるタウシュベツ川に架けられたものである。1955年に、発電用人造ダム湖である糠平湖が建設され、橋梁周辺が湖底に沈むことになったため、士幌線は湖を避けるように新線がひかれた。その際に、橋梁上の線路は撤去されたものの、橋梁自体は湖の中に残されることとなり、現在までその姿をとどめている。

糠平湖は人造湖であり、季節や発電によって水位が劇的に変化するため、橋梁全体が水に覆われてしまう時期もあれば、水位ゼロとなって橋梁全体が見渡せる時期もある。その様子から、「幻の橋」とも呼ばれる。

糠平市街に鉄道記念館があり、士幌線の説明資料や他の橋梁についての情報がある。

目次

[編集] 沿革

崩落部分(2005年9月撮影)
崩落部分(2005年9月撮影)

[編集] データ

種別
全長
  • 11連・130m

[編集] 水位

タウシュベツ橋梁は、それを取り巻く糠平湖の水位によってその姿を大きく変える。降水量等に多少左右されるものの、概ね次のような推移をとるようである。

  • 3月~5月頃:ほとんど水位ゼロとなり、橋梁全体が見渡せる。湖底には、ダム湖建設の際に切り倒された木の切り株が見える。
  • 5月~6月頃:雪融け水が流入するため、徐々に水位をあげ、橋梁の下半分が水に覆われる。「めがね橋」に見える可能性あり。
  • 6月~9月頃:さらに水位をあげ、7~9割が水に覆われて線路敷設部周辺のみが覗く。若干の勾配があることが、観察できる。
  • 9月~12月頃:大雨が降るなどすると、完全に水没することもある。
  • 12月~3月頃:氷が張る。発電用に水を抜くため、日に日に水位(氷面)がさがり、氷面を突き破って橋梁が現れる。冬期は一貫して水位が下がっていく。

ただ年によって差があるのも事実で、右上画像は9月の撮影だが、まだ半分強しか水没していない。また、台風が上陸した2003年には、8月に完全水没したようである。

なお、NPOひがし大雪アーチ橋友の会のホームページで、「タウシュベツ橋梁の近況」をチェックできる。

[編集] 保存状態

劣化状況(2005年6月撮影
劣化状況(2005年6月撮影

糠平湖付近に残されている30余りのアーチ橋梁群には廃線から十年後の1997年、解散を控えた国鉄清算事業団により解体計画が立案された。これに対する地元有志の保存活動が実り、上士幌町が買い取る形で保存されることとなった。

しかしタウシュベツ橋梁の、例年水没・出現を繰り返すという人気を博する環境条件はすなわち、水没中の水圧、結氷期前後の氷による外力及び、凍結融解を繰り返す凍害にさらされるという、極めて過酷な環境を意味する。従って年々躯体の損傷は拡大し(上記の崩落部分の画像参照)、いずれ崩壊する運命にある。

工法として、現場打ち鉄筋コンクリート枠の内部に割石を詰める、現代でも法枠工で用いられる手法が採用されている。これは、安く、早く、優美な形状のアーチを築造せしめた当時の国鉄技術陣の良案であった。ただしもし外側の枠が崩れたなら、内部の詰め石が容易に崩壊する欠点を抱えてもいた。現在、この弱点が露わとなり、橋の崩壊は時間の問題となっている。

アーチ橋梁群は北海道遺産に登録されているが、タウシュベツ橋梁はその立地の悪さから、保存措置の対象外とされている。 これに対し、貴重な歴史遺産として補修を熱望する声もあるものの、費用・財政面で極めて厳しい状況にある。また逆に、あえて保存措置を取らず在るがままに任せ、朽ち行く姿を遺跡として観察しようとする考え方もまた、多い。

結局、主に財政面の理由により、タウシュベツ橋梁は手付かずのまま見守られている状態にある。ただし、崩落を招く危険があることから、橋の上を歩くことは禁じられている(立入禁止。また、湖面に転落した場合、生命の危険は大きい)

[編集] アクセス

林道からの入り口(2005年6月)
林道からの入り口(2005年6月)
森の中に続く廃線跡。タウシュベツ橋梁にいたる小道(2007年7月)
森の中に続く廃線跡。
タウシュベツ橋梁にいたる小道(2007年7月)

糠平湖の西側には国道273号が、東側には糠平三股林道が通っている。水位が上がれば、湖底を歩いて近づくことはできない。水が張っている時期にタウシュベツ橋梁に到達するには、糠平三股林道を北側からないしは南側から進めばよい。いずれも狭く曲がりくねった道を進む必要がある上、熊が出没する危険性がある。林道南側は閉鎖されていることがある。

林道北側からのアプローチ

国道273号を三国峠から南下していくと、左側に士幌線アーチ橋がいくつか見え始める。幌加除雪ステーションや幌加温泉への分岐を過ぎ、渡鹿橋と丸山橋の間に左へ入る道があり、それが林道の入口となっている。大変見つけづらいので、注意深く見ていないと、容易に見逃してしまう。入口に、木製の小さな案内札が掲げられているのみである。

上士幌市街側から北上する場合は、糠平市街を越えて三国峠側に進むと、左手に幌加発電所の木製看板が見えるのでそこから少し先にある丸山橋を過ぎて右の道に入る。上述の案内札はこちらから行く方が見つけやすい。

林道入口から2kmほど急カーブとアップダウンの連続する道がつづく。ブラインドコーナーが多いため、徐行の上、警笛を鳴らしながら運転する必要がある。さらに2kmほど直線道路を進むと、右手に湖に続く小道が現れる。すぐ近くに駐車スペースがあるので、車などをとめ、小道を300mほど歩くとタウシュベツ橋梁に到達できる。なお、この小道とそれに至る直線道路は士幌線の旧線(1955年7月まで)の廃線跡である。

[編集] 画像

世界測地系: 43°24′56″N, 143°11′21″E


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