スライダー (球種)
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スライダー(Slider)とは、野球における変化球の一つだが、シンキング・ファーストボールやムーヴィング・ファーストボールのように概念的球種に成りつつある。
一般的には投手の投げた腕の逆方向へ曲がる(滑ると表現される)ボールであるが、それ以外の変化を持つスライダーも存在する。フォーク・ボールと同じ様に、速球と同じ軌道から変化するものが効果的な球種。
手首と握力が強ければボールの握りを変えるだけでも投げられるため、変化球の中でも最も習得が容易とされる。実際、近年はカーブに代わってこの球種を覚える投手が多い。
また、ちゃんとしたカーブを習得できなかった投手でも、スライダーは習得できることが多い。日本での元祖藤本英雄や、カミソリシュートの平松政次などがこのケースである。
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[編集] 投法
スライダーの投げ方には色々な方法がある。例を挙げると、
- 人差し指と中指を薬指の方へずらして握る
- カーブの握りをずらす
などである。
リリースはチョップをするようにする、中指からボールを切るように投げるなどがある。総じて「球を切るように投げる」と表現されることが多い。
回転は、バックスピンの回転軸が時計回りに-x度傾いた物から、+x度傾いた物と、ジャイロ回転の成分を有した二種類のスライダーが確認されている。
投球フォームによっても変化が変わることがある。特にスリークォーターやサイドスローから投じる際には、元々の球筋に横変化が加わるためとんでもない変化球となることもある。
オーバースローの選手ではダルビッシュ有、新垣渚、西口文也らが有名。
サイドスロー・スリークォーターの選手では林昌樹、石井弘寿、ジェフ・ウィリアムスらが有名。
[編集] 歴史
開発者については諸説ある。多くの書物ではメジャーリーグのボブ・フェラーが1940年代に完成させたとしているが、1930年代にジョージ・ウールが投げていたという説や、1910年代にチーフ・ベンダーが投げていた「ニッケルカーブ」がその原型という説などがある。
日本では、1950年にプロ野球最初の完全試合を達成した藤本英雄が最初に習得したといわれる。藤本のスライダーは「空を飛ぶトンボがスッと曲がるような球」と形容されたことから、横のスライダーである。
[編集] 高速スライダー
スライダーの中でも、スピードが速い場合に使われる事がある。アメリカで言うところの Hard Slider 。変化そのものは本質的にスライダーと変わらない。高速スライダーと呼ばれるものは基本的にその投手の速球の球威が反映されるため、投手によって質は大きく異なる。
[編集] 縦スライダー
スライダーには、フォークボールのように真下に落ちる物もある。ボールにかかるジャイロ回転によって落ちるので、回転を抑えることで落ちるフォークよりも落差は大きい。
[編集] マッスラ
造語(真っ直ぐ+スライダー)。スライダーだが、よりストレートに近い。スライダーほどは曲がらないが、スライダーよりも球速があり、カット・ファスト・ボールに近い。カット・ファスト・ボールと同じく、打者の手元に来るまでストレートと見分けがつかないため、打者がストレートと思って振ると、バットの芯を外されて凡打することが多い。実際にも主にその目的で使われる。
[編集] スラーブ
造語(スライダー+カーブ)。スライダーだが、よりカーブに近い。スライダーよりよく曲がるが、カーブよりは速い。日本の投手が投げるスライダーはほとんどこれにあたる。
[編集] テレビゲーム内でのスライダー
コナミの野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」内では、スライダーは真横に曲がっている。これは打撃の際はどうしても二次元的になるための処置(ゲームバランスの調整のため)だと思われる。
また、同ゲーム内では「Vスライダー」(vertical=垂直の頭文字)、「Sスライダー」、「Hスライダー」(High speedの頭文字)というものがあるが、Vスライダーは縦変化でまさしく縦スライダーであり、Sスライダーは斜め(横変化で少し落ちる)変化でこちらは現実のスライダーの変化に近い。しかし、野球中継のスロー映像で高さがあっているのにバットが届かず空振りする映像があるため、落差を減らすことは可能と思われる。
[編集] 体への負担
ストレートとほぼ同じフォームで投げられることから、肘や肩への負担が少ないといわれる反面、スライダーに頼りすぎると肘が下がり、かえって肘や肩への負担が大きくなるとも言われている(参考:ネズミ)。
また、負担が大きいことで有名なフォークボールと比較して、習得が容易であり多投されやすく、ひねりの動作も加わることから、スライダーの方が負担が大きいとする意見もある。さらに、スライダーの性質上、知識が不十分な投手が球速と鋭い変化にこだわるあまりにより肘や肩の負担が大くなる恐れもある。