ジャン・ニコ賞
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ジャン・ニコ賞とは、フランスの国立科学研究センター(CNRS)によって1993年に創設された賞であり、心の哲学あるいは認知科学において指導的な役割を果たしている現役の研究者に対して毎年一人に授与されている。
夭折したフランスの哲学者・論理学者ジャン・ニコの名を冠した賞で、これまでジェリー・フォーダー、フレッド・ドレツキ、ヤン・エルスター、スーザン・ケアリー、ジョン・サール、ダニエル・デネットなど、心の哲学や認知科学の著名な研究者が受賞している。フランスの賞にもかかわらず英語圏の研究者が多く、英米の哲学や認知科学研究が、フランスでも受容される機会のひとつとなっている。
なお、ジャン・ニコ賞の受賞者による記念講演の内容をまとめたThe Jean Nicod LecturesシリーズがMIT Pressから出版されており、勁草書房からその一部が翻訳される予定である[1]。
目次 |
[編集] 受賞者リスト
受賞年 | 受賞者名 | 所属大学 | 受賞記念講演 | 記念講演の出版物 |
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1993年 | ジェリー・フォーダー | ラトガース大学 | The Elm and the Expert: Mentalese and Its Semantics | ISBN 0-262-56093-3 |
1994年 | フレッド・ドレツキ | スタンフォード大学 | Naturalizing the Mind | ISBN 0-262-54089-4 |
1995年 | ドナルド・デイヴィッドソン | カリフォルニア大学バークレー校 | n/a | n/a |
1996年 | ハンス・カンプ | シュトゥットガルト大学 | Thinking and Talking about Things | n/a |
1997年 | ヤン・エルスター | コロンビア大学 | Strong Feelings. Emotion, Addiction, and Human Behavior | ISBN 0-262-05056-0 |
1998年 | スーザン・ケアリー | ニューヨーク大学 | The Origins of Concepts: Evolution vs Culture | n/a |
1999年 | ジョン・ペリー | スタンフォード大学 | Knowledge, Possibility, and Consciousness | ISBN 0-262-16199-0 |
2000年 | ジョン・サール | カリフォルニア大学バークレー校 | Rationality in Action | ISBN 0-262-19463-5 |
2001年 | ダニエル・デネット | タフツ大学 | Sweet Dreams. Philosophical Obstacles to a Science of Consciousness | ISBN 0-262-04225-8 |
2002年 | ルース・ミリカン | コネチカット大学 | Varieties of Meaning | ISBN 0-262-13444-6 |
2003年 | レイ・ジャッケンドフ | タフツ大学 | Mental Structures. Language, Society, Consciousness | n/a |
2004年 | ゼノン・ピリシン | ラトガース大学 | Things and Places. How the mind connects with the world | n/a |
2005年 | ギルバート・ハーマン | プリンストン大学 | The Problem of Induction and Statistical Learning Theory | n/a |
2006年 | マイケル・トマセロ | マックス・プランク研究所 | Origins of Human Communication | n/a |
2007年 | スティーヴン・スティッチ | ラトガース大学 | Moral Theory Meets Cognitive Science: How the Cognitive Science Can Transform Traditional Debates | n/a |
[編集] 注釈
[編集] 受賞者の邦訳書
受賞年 | 受賞者名 | 邦訳書 | 原著名 |
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1993年 | ジェリー・フォーダー | 『精神のモジュール形式:人工知能と心の哲学』ISBN 4782800231 | "The modularity of mind : an essay on faculty psychology" |
1994年 | フレッド・ドレツキ | 『行動を説明する—因果の世界における理由』ISBN 4326199474 | "Explaining behavior : reasons in a world of causes" |
1995年 | ドナルド・デイヴィッドソン | 『行為と出来事』ISBN 4326100826
『真理と解釈』ISBN 4326100907 『主観的、間主観的、客観的』ISBN 9784393323076 |
"Essays on actions and events","Inquiries into truth and interpretation","Subjective, intersubjective, objective" |
1996年 | ハンス・カンプ | なし | "From discourse to logic : introduction to modeltheoretic semantics of natural language, formal logic and discourse representation theory” |
1997年 | ヤン・エルスター | 『社会科学の道具箱—合理的選択理論入門』 ISBN 4938551330 | "The nuts and bolts for the social sciences" |
1998年 | スーザン・ケアリー | 『子どもは小さな科学者か:J.ピアジェ理論の再考』 ISBN 4623023907 | "Conceptual change in childhood" |
1999年 | ジョン・ペリー | 『状況と態度』(ジョン・バーワイズとの共著)ISBN 4782800738 | "Situations and attitudes" |
2000年 | ジョン・サール | 『マインド:心の哲学』 ISBN 4255003254
『言語行為:言語哲学への試論』 ISBN 4326198753 『志向性:心の哲学』 ISBN 4414120527 、他 |
"Mind : a brief introduction","Speech acts : an essay in the philosophy of language","Intentionality : an essay in the philosophy of mind" and so on. |
2001年 | ダニエル・デネット | 『「志向姿勢」の哲学:人は人の行動を読めるのか』ISBN 4826900686
『ダーウィンの危険な思想: 生命の意味と進化』ISBN 4791758609 『解明される意識』 ISBN 4791755960、他 |
"The intentional stance","Darwin's dangerous idea : evolution and the meanings of life","Consciousness explained" and so on. |
2002年 | ルース・ミリカン | 『意味と目的の世界 (ジャン・ニコ講義セレクション) 』 ISBN 9784326199570 | "Varieties of Meaning" |
2003年 | レイ・ジャッケンドフ | 『言語の基盤—脳・意味・文法・進化』 ISBN 4000227580 | "Foundations of language : brain, meaning, grammar, evolution" |
2004年 | ゼノン・ピリシン | 『認知科学の計算理論』 ISBN 4782800401 | "Computation and cognition" |
2005年 | ギルバート・ハーマン | 『哲学的倫理学叙説—道徳の“本性”の“自然”主義的解明』 ISBN 4782800452 | "The nature of morality" |
2006年 | マイケル・トマセロ | 『心とことばの起源を探る:文化と認知』 ISBN 4326199407 | "The cultural origins of human cognition" |
2007年 | スティーヴン・スティッチ | 『断片化する理性—認識論的プラグマティズム』 ISBN 4326199504 | "The fragmentation of reason : preface to a pragmatic theory of cognitive evaluation" |