サバ科
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サバ科 Scombridae | ||||||||||||||
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群泳するキハダ Thunnus albacares |
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分類 | ||||||||||||||
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下位分類 | ||||||||||||||
15属・51種(本文参照) |
サバ科 Scombridae は、スズキ目・サバ亜目の下位分類群の一つ。名前に冠されるサバの他にもサワラ、カツオ、マグロなどを含む。
構成種のほとんどが暖海を回遊する大型肉食魚で、沿岸各地で食用として漁獲されている。日本ではサバ、カツオ、マグロが食文化の根幹を成す重要な食用魚となっている。
目次 |
[編集] 特徴
成魚の大きさは全長数十cmほどのサバ類から、全長3m・体重400kgを超えるクロマグロまで種類によって異なる。
体は頭部と尾部がそれぞれ前後に細り、胴の中央が膨らむ、いわゆる「紡錘型」や「流線型」と呼ばれる体型である。鱗はガストロを除くほとんどの種類において退化的で、胸鰭や側線周辺など体の一部分だけしかないものもいる。尾鰭は大きな三日月形に発達するが、他の鰭はたいてい小さめで、高速遊泳時に鰭を畳むための溝が付随する。また、第二背鰭と尻鰭の後ろにはいくつかの小離鰭(しょうりき)が並び、尾鰭の付け根には小さな水平隆起線(尾柄キール)がある。
総じて高い遊泳能力を持ち、孵化直後から死ぬまで海底にほとんど下りず泳ぎ続ける。遊泳時は尾柄・尾鰭を激しく左右に振って強力な推進力を生み出し、胸鰭と水平隆起線が主翼と水平尾翼の役割をして浮力を保つ。例えばカツオの遊泳速度は通常時で25km/h、速い時には100km/hに達する。これは魚類でも屈指の速度だが、急な方向転換や旋回などの小回りは利かない。
サバ科魚類のほとんどは口と鰓蓋を開けたまま泳ぎ、自動的に鰓を通り抜ける海水で呼吸する。この呼吸法は魚類用語でラム換水(Ram ventilation)と呼ばれる。泳ぎが遅い時は他の大部分の魚と同様に口と鰓蓋をパクパクと動かす二重ポンプ換水(Double-pumping)に切り替えるが、この状態が長く続くと酸素欠乏・窒息に陥り死んでしまう。
血液は他の魚に比べて赤血球が多く、筋肉に多くの酸素を送り込めるよう適応している。また、マグロ類は筋肉内に奇網を持ち、海水よりも高い体温を保って運動能力の低下を抑える仕組みを発達させている。
[編集] 生態
分類されている全種が海水魚である。熱帯・温帯域の、沿岸から外洋にかけての表層・中層に生息し、汽水域には稀に迷入する程度である。単独で行動するものもいるが、多くは群れを作って行動する。
食性は肉食性で、同じく海中を遊泳する魚類、甲殻類、頭足類などの小動物を捕食する。大型のマグロはサバやカツオも捕食する。また、小型のサバ類には動物プランクトンを濾過摂食するものもいる。
受精卵は分離浮性卵で、産卵後は親の保護もなく海中を漂いながら発生する。寿命は数年-十数年程度である。
[編集] 分類
- Gasterochismatinae 亜科
- ガストロ Gasterochisma melampus Richardson,1845 - 1属1種のみ。全身に大きな鱗があり、サバ科他種と一線を画す
- サバ亜科 Scombrinae
- ハガツオ族 Sardini
- サワラ族 Scomberomorini
- サバ族 Scombrini
- マグロ族 Thunnini - 英語のTuna(ツナ)はここを指し、マグロだけに限定されない
[編集] 参考文献
- Fishbase - Scombridae(英語)
- 岡村収監修 山渓カラー名鑑『日本の海水魚』(サバ科執筆者 : 中村泉)ISBN 4-635-09027-2
- 藍澤正宏ほか『新装版 詳細図鑑 さかなの見分け方』講談社 ISBN 4-06-211280-9
- 檜山義夫監修 『野外観察図鑑4 魚』改訂版 旺文社 ISBN 4-01-072424-2
- 永岡書店編集部『釣った魚が必ずわかるカラー図鑑』 ISBN 4-522-21372-7
- 内田亨監修『学生版 日本動物図鑑』北隆館 ISBN 4-8326-0042-7
- 岩井保『魚学入門』恒星社厚生閣 ISBN 4-7699-1012-6