サイキックフォース
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『サイキックフォース』(Psychic Force)は、株式会社タイトーによって製作されたコンピュータ・ビデオゲームの登録商標である。1996年4月に業務用(=ゲームセンターなどのロケーション用)ビデオゲームとして稼動を開始し、そのオリジナリティあふれる内容により熱狂的な固定ファンの獲得に成功。その後は家庭用ゲーム機への移植、バージョンアップ版や続編タイトルの登場などのシリーズ展開もおこなわれた。
ちなみに、現時点(2008/05/15)における同シリーズの最新タイトルは、2005年12月に発売されたプレイステーション2用ソフト「サイキックフォースCOMPLETE」である。本作も収録されているが、再現度については色々と問題が多い。
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[編集] 基本ルール
「サイキッカー」と呼ばれるプレイヤーキャラクターの中から1人を選び、対戦相手のプレイヤーキャラクターを倒すことを目的とする1対1の対戦型アクションゲーム。ゲームは「対戦中の両者を真横から同時にとらえる」サイドビュー視点で進行するが、一般的な対戦格闘ゲームにおける「ジャンプ」の概念が存在せず、キャラクターはプレイフィールド内を上下左右に「飛び回る」ことになる。
キャラクターの操作には8方向レバー1本とボタン3個を使用。8方向レバーで通常移動と各種コマンドの入力を、1個のガードボタンで防御関連の動作を、2個の攻撃ボタン(弱攻撃ボタン・強攻撃ボタン)で各種攻撃とダッシュでの移動を、それぞれ担当する。
さまざまなアクションを駆使し、各ラウンドの制限時間内に対戦相手キャラクターのライフゲージ(=体力)をすべて奪えば1ラウンド先取。これを繰り返し、規定のラウンド数を先取した側がその対戦の勝利者となる(=負けた側のプレイヤーはゲームオーバーとなる)。 ただし、制限時間内に決着がつかなかった場合、対CPU戦ではライフゲージをより多く残している側が1ラウンド先取となり、対人戦では各ラウンドごとに10秒間のサドンデス(=延長戦)を戦わねばならない。
[編集] 共通システム
本シリーズでは、一般的な対戦格闘ゲームとの差別化をはかるべく、独創的なシステムが多数採用されている。
- サイコゲージ
- 画面左右端には縦に長い2本のゲージが表示されている(左端がプレイヤー1側、右端がプレイヤー2側)が、このうち下のゲージを「サイコゲージ」という。
- サイコゲージは、一般的な対戦格闘ゲームの必殺技に相当する超能力技や、強力な防御システムであるバリアガードを使用すると規定値ぶん消費され、3ボタンを同時に押し続けるサイコチャージという操作によって回復できる。消耗しすぎると行動の自由を大きく制限されてしまうので、このゲージの「消費」と「回復」のバランスを適切に管理することは、対戦における重要な課題となる。
- クイックダッシュ
- 「レバーを入力せずに攻撃ボタンを同時に押す」という操作により、相手のいる角度へ直線的にダッシュするクイックダッシュができる。移動に関するアクションの中で移動スピードが最も速く、ダッシュ中には弱攻撃(からの連続技)、強攻撃、つかみ技を出すことができる。
- あらかじめクイックダッシュの射程内に相手をとらえていれば、相手キャラクターのわずかな隙を突いて接近戦に持ち込むことが可能。連続技のダメージが高い本作においては重要な攻撃手段となる。
- 超能力技
- 一般的な対戦ゲームの必殺技に相当する強力な技。規定量のサイコゲージが残っている状態で、超能力技ごとに固有のコマンドを入力して発動する。相手を直接攻撃するショット攻撃が大半を占めるが、中には自身の能力を一時的に強化するものや、相手の行動の自由を制限するもの、不利な状況から即座に脱出するものなど補助的な技もあり、そのバリエーションは幅広い。さらに一部の超能力技は、特定のタイミングで追加コマンドを入力することにより、技の性質に変化をつけることもできる。
- バリアガード
- 本作を象徴する強力な防御システムのひとつ。「ガードボタンを押しながらレバー1回転」というコマンド入力により、全方向からの攻撃を完全に防御するバリアを展開する。コマンド完成と同時に発動するためスキが無く、また展開中のキャラクターは半無敵状態となるが、この状態を維持するには前述のサイコゲージが必要で、展開中は徐々にサイコゲージが減少する。
- 相手の攻撃を防御する使い方だけでなく、相手キャラクター本体にバリアを直接ぶつけて弾く攻撃的な使い方も有効。弾かれた相手は一瞬だけ操作不能となり(ダメージはゼロ)、そのぶん弾いた側は有利な状況に立てる。特に、初代「サイキックフォース」ではバリアで弾いた敵にクイックダッシュ弱攻撃で追撃できる現象が発見され、この現象を利用した強力な戦術の登場によって、対戦における定石は大きく覆されることとなった。
- 結界
- キャラクターの動き回るフィールドは「結界」と呼ばれる立方体の空間で、対戦中のキャラクターは原則として、結界の壁を越えて移動することができない。この壁に直接触れてもダメージは無いが、相手の攻撃で吹き飛ばされたり、バリアで弾かれるなどして「ぶつけられた」場合は接触ダメージを受けて硬直してしまう。逆にぶつけた側にとっては、硬直中の相手キャラクターに追撃を決めるチャンスとなる。
- コンボ(連続攻撃)と「連続技」に関するルール
- 近距離での弱攻撃を出した後、特定のコンボルートにしたがって順序良く攻撃ボタンを追加入力すると、コンボと呼ばれる連続攻撃を繰り出すことが可能。ルートは全キャラクター共通で4種類(弱→弱→弱→弱、弱→弱→弱→強、弱→弱→強、弱→強)が存在し、さらに「弱→弱→強」と「弱→強」の最後の強攻撃は、超能力技コマンドを先行入力することにより硬直時間をキャンセルして超能力技を出すことができる(コンボスペシャル)。
- この仕様を利用し、相手キャラクターを壁に追い込んでから「弱強→キャンセル超能力技」などで攻撃すれば、コンボで壁にぶつけた相手キャラクターを超能力技で追撃する形になるため大ダメージを見込める。ただし、壁による硬直は連続技1セット中に1回までしか組み込むことができず、2回目の壁による硬直が発生すると相手キャラクターはやられ判定が消え、強制的に落下していくダウン状態となる。
- サドンデス
- 対人戦でのみ発生する延長戦。各ラウンドの制限時間内に勝負がつかなかった場合、両者ともにライフゲージとサイコゲージがゼロにリセットされ、通常よりもはるかに狭い結界内で10秒間の延長ラウンドが開始される。
- なお、サドンデスでも時間切れになった場合、あるいは相打ちになった場合は「両者ともに1ラウンド先取」と扱われる。また、対人戦において両者が同時に規定数のラウンドを取得した場合は、両者ともゲームオーバーとなる。
[編集] 世界観と登場キャラクター
本作の世界観は「社会から阻害される異端者」という普遍的なストーリープロットを踏襲している。常人にはなしえない奇跡を起こす超能力を持ちながら、その「超能力を持っている」という事実により社会的に迫害(人体実験などを含む)を受け、孤立する……という筋書きは過去にも様々な形で提示されたシナリオであり、現在も「超人ロック(聖悠紀・作)」や「X-MEN」など様々な作品にて見ることができる。
本作では、サイキッカー(=超能力者)を一方的に管理しようとする人類社会がまず存在し、そこからサイキッカーの自由と安全を勝ち取るべく超能力集団「ノア」が組織されるというバックストーリーがある。しかし、自分たちを「人類より優れている」と信じて疑わないサイキッカーの自負心は組織を徐々に自己変質させていき、西暦2010年、ついに「ノア」はサイキッカーによる世界征服を目指して暴走を始める。本作における対戦のステージ背景では、このストーリーに沿った西暦2010年の世界各地が描かれている。
- バーン・グリフィス(Burn Glifeis) 声優:真殿光昭
- 炎を操るサイキッカーで、本作のストーリーの中核となる人物。世界を恐怖させている超能力集団「ノア」の総帥が、3年前に行方不明となった親友キースであることを知り、親友の暴走を止めるべく戦いを挑む。絵に描いたような熱血漢で、鳥のとさかを思わせる前髪がトレードマーク。
- エミリオ・ミハイロフ(Emilio Michaelov) 声優:高山みなみ
- 光を操るサイキッカー。自らの超能力が原因で両親に殺害されかけ、その際「身を守るために無意識に使った」超能力により街を壊滅させてしまう。その後は放浪の身となり「ノア」からも接触を受けるが、最終的にはバーンとともに「ノア」と敵対する側に立つ。その背中には鮮やかな光の羽根が輝いている。
- ウェンディー・ライアン(Wendy Rian) 声優:白石文子
- 風を操るサイキッカー。生き別れとなった姉のクリスを探すうちに、クリスの所属する研究所が「ノア」内部にあることを突き止める。バーンと出会ったのちは「ノア」と敵対する側に立つ。思い込みが激しく行動第一主義の側面あり。
- ソニア(Sonia) 声優:白石文子
- 電撃を操るサイキッカー。肉体はウォンの研究所で作成された人工生命体で、精神は研究中の事故の影響により、研究者だったウェンディーの姉・クリスの精神が宿っている。事故の詳細や、なぜクリスの精神が宿ったのかなどは明らかにされていない。超能力集団「ノア」への忠誠心を刷り込まれているが、その忠誠心は徐々に「ノア」総帥・キースへの忠誠心に変わってゆく。
- リチャード・ウォン(Richard Wong) 声優:真殿光昭
- 時間を操るサイキッカー。貿易会社の前社長の私生児で、幼い頃から一族に虐げられてきた。しかし彼は持ち前の明晰な頭脳と超能力を駆使し、ついには一族ことごとく蹴落として会社を乗っ取るまでに至る。その強大な経済力と社会への影響力を生かし、超能力集団「ノア」を利用して世界の覇権を奪い取ることを画策する。
- ブラド・キルステン(Brad Kirsten) 声優:中尾隆聖
- 重力を操るサイキッカー。温厚な性格と極めて残忍な性格を併せ持つ多重人格者として知られる。超能力集団「ノア」に参加した折、総帥・キースによって殺人衝動を抑えるテレパシー療法を施されるが、戦闘と破壊が日常化していく中で、その衝動は自身でも、またキースのテレパシーによっても抑えることができなくなってゆく。
- 六道玄真(Genma Rikudoh) 声優:秋元羊介
- 「影高野」と呼ばれる宗派に属する退魔師で、密教由来の呪術を駆使する。彼の術は本来は魔物(および魔物にとりつかれた人物)に向けておこなわれるものだが、サイキッカーの存在を魔物に並ぶ脅威とみなした影高野の指示により、玄真たち退魔師は「人の世のために」サイキッカーを攻撃する。
- ゲイツ・オルトマン(Gates Oltman) 声優:津久井教生
- アメリカ軍所有の対サイキッカー用サイボーグ第1号。ゲイツ・オルトマンとは身体を提供した男性の名前で、妻子をサイキッカーに殺された復讐のため、自ら志願して改造を受けた。人間の脳は生き残っているが、ボディはほぼすべてメカに換装されている。最優先命令「サイキッカーの消去」にもとづいてサイキッカーを攻撃する。
- キース・エヴァンス(Keith Evans) 声優:津久井教生
- 氷を操るサイキッカー。バーンの親友であったが、ある日突然に姿を消す。その後は超能力を研究するためのサンプルとして人体実験を強要されていたが、他のサンプル達と協力して反乱を起こし、ただ一人だけ生き残って脱出を果たした。その後の逃亡・潜伏中にリチャード・ウォンと接触。彼の協力のもと、超能力集団「ノア」総帥としてサイキッカーたちを統率する。
[編集] 稼動後の反響とシリーズ展開
1996年4月より全国のゲームセンターで正式稼動を開始した「サイキックフォース」は、インカム面では苦戦するものの一定のプレイヤー人気を獲得することに成功し、同時にタイトーの看板タイトルとして確固たる地位を得た。特筆すべきは、女性層・アニメファン・家庭用ゲーム機ユーザーなど「当時はあまりゲームセンターに行かない客層」からも高い人気を獲得した点であり、この人気にタイトーが応える形で、OVAやCDドラマなどのマルチメディア展開も積極的に進められた。
もちろん、家庭用ゲーム機への移植や続編タイトルのリリースなどもおこなわれた。ここではコンピュータ・ビデオゲームに類するシリーズ作品について列挙する。
- サイキックフォースEX(業務用ビデオゲーム)
- 1996年7月より全国のゲームセンターにて稼動開始。
- 初代「サイキックフォース」を再調整したバージョンアップ作品で、初代では隠しキャラクターだった「キース」が条件なしで使用可能になった。それに伴い、基本システムからキャラクター全員の性能に至るまで、ゲームバランス向上のための大がかりな調整が実行されている。特にバリアガードは展開中のサイコゲージ消費量が2倍になるなど攻防ともに使いづらくなり、初代と比べると格段に「相手を攻め崩しやすい」ゲーム性になった。
- サイキックフォース(プレイステーション用ソフト)
- 1996年10月発売。
- ゲームの基本仕様は「サイキックフォースEX」をベースにしつつ、家庭用オリジナルとなるストーリーモードを加えた移植版。ストーリーモードは1人プレイ専用で、キャラクター同士の会話シーンやキャラクター個別のエンディングデモが追加されている。
- その他、影山ヒロノブの歌う主題歌が印象的なオープニングアニメーションや、家庭用向けにアレンジされたBGMの追加など、幅広い層のファンを取り込むべく作り込まれた完成度の高い作品である。
- サイキックフォースパズル対戦(プレイステーション用ソフト)
- 1997年10月発売。
- タイトーの看板タイトル「パズルボブル」シリーズとのコラボレーション作品。登場キャラクターがすべてサイキックフォース関連のキャラクターになっている。ゲームをプレイして一定の条件を満たすとギャラリーがアンロックされていき、ギャラリー内では次回作の登場キャラクターなどの隠し情報を閲覧できた。
- サイキックフォース2012(業務用ビデオゲーム)
- 1998年6月より全国のゲームセンターにて稼動開始。
- ファン待望の正統なシリーズ続編。当初は1997年度内に完成予定だったが、開発中にHDDがクラッシュするアクシデントの発生により開発作業が遅れ、予定より半年ほど遅れての稼動開始となった。
- PC基板を組み込んだ新システム基板「WOLF BOARD」を使用したことにより、映像・音声の質は格段に向上している。ゲームシステムは、前作の反省点を踏まえた調整や新規システムの追加が功を奏し、ゲームルールはかなり複雑になったものの、対戦ツールとしてのゲームバランスは飛躍的に向上した。現在でも「2012こそシリーズ最高傑作」と断言するファンは多い。
- サイキックフォース2012(ドリームキャスト用ソフト)
- 1998年12月発売。
- 業務用の完全移植に加え、ストーリーモードなど家庭用オリジナル要素を追加した移植版。ドリームキャストのマシンスペックが高いこともあり、業務用でできた一部のバグ技が再現不可能なことを除けば、ほぼ完璧な移植度・再現度である。ちなみにPCにも移植されており、厳しい動作スペックを要求する作品ながらも好評を博した。
- サイキックフォース2(プレイステーション用ソフト)
- 1999年発売。
- 「サイキックフォース2012」をベースに、プレイステーション版オリジナルの要素を加えてリメイクされた作品。別のキャラクターの超能力技を覚えて使用できるPSY-EXPAND(サイ・エキスパンド)モードの存在や、「サイキックフォース2012」で登場しなかった3キャラクター(ソニア・ブラド・玄真)の復活などがファンの話題を集めた。ストーリーモードやオープニングアニメなど、移植版の伝統ともいえるモードもきちんと収録されている。
[編集] その他の関連商品
[編集] CDアルバム
- サイキックフォース オリジナルサウンドトラック
- サイキックフォースDRAMACDゲーム
- サイキックフォース
- サイキックフォースオリジナルドラマCD~WISH YOU WERE HERE
- サイキックフォースPSYCHIC FORCE
- サイキックフォースパズル大戦
[編集] 小説
- 高城響『サイキックフォース』、アスキー、1997年、ISBN 978-4893666550
[編集] 参考文献
- サイキックフォース2012公式設定資料集 ISBN 4-471-36039-6
[編集] 脚注
[編集] 外部リンク
2012]