コノハチョウ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
?コノハチョウ | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
伊丹市立昆虫館にて |
||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||
Kallima inachus (Boisduval, 1846) | ||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||
コノハチョウ | ||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||
Orange Oakleaf |
コノハチョウ(木の葉蝶・Kallima inachus)は、チョウ目(鱗翅目)・タテハチョウ科に分類されるチョウの一種。翅の裏面が枯葉のように見えることからこの名があり、隠蔽擬態をする代表的な昆虫の一つに挙げられる(擬態ではないとする説もある。後述)。沖縄県指定天然記念物(1969年)、準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)。
目次 |
[編集] 特徴
成虫の前翅長は45-50mm。翅の裏面は枯葉に非常によく似た模様を持つ。模様は個体変異が多く、1匹ずつ模様が異なると言ってもよい。さらに前翅の先端は広葉樹の葉先のように尖り、後翅の後端は葉柄のように細く突出する。一方、翅の表側は藍色で、前翅に太い橙色の帯が入り、裏側とは対照的な鮮やかな配色である。
翅の裏側が枯葉に似るため、擬態の典型例としてよく知られた昆虫だが、疑問を呈する向きもある。もしも枯葉に似せた姿を擬態として用いるならば、枯葉を背景に羽根の裏を見せるか、枯れ枝に葉のような姿で止まるべきだと考えられるが、この蝶は葉の上で翅を広げるか、太い幹に頭を下に向けて止まるため、枯葉に似せる意味がないだろう、という説による。
インド北部からヒマラヤ、インドシナ半島、中国、台湾、先島諸島から沖縄諸島、沖永良部島まで分布する(徳之島でも数回採集されている)。コノハチョウ属(Kallima 属)の中では最も広い分布域を持つ。分布域内でいくつかの亜種に分かれており、日本に分布するものは亜種 K. i. eucerca Fruhstorfer, 1898 とされる。宮崎県以南で見られる。
暗い熱帯雨林内に生息する。成虫は1年のうちに数回発生を繰り返し、ほぼ年中見られる。この種を含め、タテハチョウ科はあまり花には訪れず、樹液や腐った果実、獣糞などにやって来て汁を吸う。
幼虫はキツネノマゴ科のオキナワスズムシソウ、セイタカスズムシソウ、オギノツメなどを食草とする。
[編集] 近縁種
コノハチョウ属(Kallima 属)はインド、東南アジア地域を中心に10種が知られる。
- K. albofasciata Moore, 1877 - アンダマン・ニコバル諸島
- K. alompra Moore, 1879 - インドシナ半島
- K. buxtoni Moore, 1879 - インドネシア
- K. horsfieldi Kollar, 1844 - インド、ヒマラヤ山脈南部
- コノハチョウ K. inachus (Boisduval, 1846) - インド、ヒマラヤ、インドシナ半島、中国、台湾-沖永良部島
- K. limborgii Moore, 1879 - インドシナ半島
- K. knyvetti de Nicéville, 1886 - インドシナ半島北部
- K. paralekta (Horsfield, 1829) - インドネシア
- K. philarchus (Westwood, 1848) - インド
- K. spiridiva Grose-Smith, 1885 - インドネシア
[編集] 類似種
また、属が異なるが以下の2種類も翅裏が枯れ葉状で、和名に「コノハ」とつく。これらは迷チョウとしてまれに記録される。
- イワサキコノハ Doleschallia bisaltide (Cramer, 1777)
- Doleschallia polibetaとする文献もある。前翅長35mmほどで、コノハチョウよりやや小型。翅の表側の地色は橙色をしており、前翅の先端が黒褐色、橙色の斑点が入る。インド、インドシナ半島、ニューギニア島、フィリピンなどに分布する。日本では南西諸島各地でフィリピン亜種 D. b. philippensis Fruhstorfer, 1912が記録される。和名の「イワサキ」は、石垣島の生物研究に功績を残した岩崎卓爾に因んだものである。
- キオビコノハ Yoma sabina (Cramer, 1780)
- 前翅長40mmほど。コノハチョウよりはタテハモドキに近縁で、翅の縁は葉状にならず角ばる。前翅の表側の地色は褐色で、和名通り橙色の太い帯が翅の中央部を前後に貫く。インドシナ半島、インドネシア、ニューギニア、フィリピンなどに分布する。日本では先島諸島から沖縄諸島にかけて少数が記録される。
[編集] 参考文献
- 北隆館「学生版 日本昆虫図鑑」 ISBN 4-8326-0040-0
- 実業之日本社「西表島フィールド図鑑」横塚眞己人 ISBN 4-408-61119-0
- 南方新社「昆虫の図鑑 採集と標本の作り方」福田晴夫他 ISBN 4-86124-057-3
- Lepidoptera and some other life forms(英語)