グッゲンハイム美術館
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グッゲンハイム美術館 (Solomon R. Guggenheim Museum) は、アメリカ合衆国ニューヨーク市にある、近現代美術専門の美術館である。
アメリカの鉱山王・ソロモン・R・グッゲンハイム(1861年 - 1949年)のコレクションを元にしたこの美術館は1937年に財団として設立され、2年後の1939年、ニューヨークのマンハッタン東54丁目24番地に開館した。5番街の現在地へ移ったのは、1949年のことである。以後、ニューヨーク近代美術館とともに現代美術の発展普及に大きな役割を果たしてきた。
5番街に面して建つ、特徴のある外観をもった現在の展示館は、1943年にフランク・ロイド・ライトに建築設計が委嘱された。ライトは翌年には美術館の建築設計案を作成したが、建設に取り掛かるまでには紆余曲折があり、創立者のグッゲンハイムは没年である1949年、ライトの設計案をようやく承認した。それから建物の竣工までにはさらに10年間の歳月を要し、ライトの没年である1959年にようやくグッゲンハイム美術館は完成した。ここまで時間がかかったのは、ひとつには、この前例のない建築物に対し、ニューヨーク市当局が建築基準法に触れる為に許可を出すのを渋った事情からともいわれる。
「かたつむりの殻のような」と形容される螺旋状の構造をもったこの建築物は、中央部が巨大な吹き抜けになっている。見学者は、まずエレベーターで建物の最上部に上がり、螺旋状の通路の壁面に掛けられた作品を見ながら順路を進むうちに自然に階下へ降りるようになっている。美術館施設の概念を根本から覆した作品として、ライトの代表作に数えられている。反面、建築自体の自己主張が大きすぎ、床が傾斜しているため鑑賞者が落ち着かず、美術品の鑑賞をさまたげるという批判もある。なお、2006年から外壁修復工事のため、建物の外側には円形の足場が組まれている (2007年秋に完了を予定)。
ソロモン・R・グッゲンハイムの姪にあたるペギー・グッゲンハイムも、前衛美術の収集家として知られる。彼女は、ヴェネツィアに、パラッツォ・ヴェニエ・デイ・レオーニという18世紀の館を購入し、ここに自身のコレクションを収蔵して、1949年から公開していた。このコレクションと建物は1977年、グッゲンハイム財団に寄贈され、1979年にペギーが死去してからは、「ペギー・グッゲンハイム・コレクション」として同財団が管理運営にあたっている。
アメリカのグッゲンハイム財団は世界分館構想を持ち、ニューヨークのグッゲンハイム美術館、ヴェネツィアの「ペギー・グッゲンハイム・コレクション」のほか、ラスベガス・グッゲンハイム美術館、ベルリン・グッゲンハイム美術館、ビルバオ・グッゲンハイム美術館など世界各地にも美術館を持つ拡大路線を志向している。東京のお台場周辺にも計画され建築設計競技も実施されたが頓挫している。
[編集] 主な収蔵品
- カンディンスキー『即興28』(1912年)
- モンドリアン『しょうが壺のある静物I・II』(1911 - 1912年)
- マティス『肘をつく女』(1943年)
- ピカソ『黄色の髪の女』(1931年)
- ジョルジョ・デ・キリコ『赤い塔』(1913年)
- シャガール『誕生日』(1923年)