キュビット
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キュビット(cubit、キュービット、キュビト、キュービト)は、古代より西洋の各地で使われてきた長さの単位である。
今日、キュビットを日常的に使用している文化は存在しないが、宗教的な目的(例えばユダヤ教などで)は現在でも使われている。
キュビットは、肘から中指の先までの間の長さに由来する身体尺である。キュビットという名称は、ラテン語で肘を意味するcubitumに由来する
他の身体尺と同じように、後に特定の人物(その土地の有力者、王)の体に基づいて決められるようになり、さらに他の長さの単位との関係の中で明確な定義が与えられるようになった。よって各地で様々な長さのキュビットが使われていたことになるが、その長さはおおむね50センチメートルである。
[編集] 歴史
キュビットは、紀元前6000年ごろの古代メソポタミアで生まれたとされている。紀元前1950年ごろのニップルにおける1キュビットの銅製の棒(517.2 mm)は、現存する中では世界で最も古い長さの標準である。古代メソポタミアの都市ラガシュの支配者グデアの座像が現存しており、その腕の長さから得られるキュビットの長さは496 mmである。コロンブス到達以前のメソアメリカの都市イサパで使われていた長さの単位も496 mmである。これは偶然の一致とも考えられるが、これをメソポタミアとメソアメリカとの間に文化的交流があった証拠だと主張する者もいる。
古代エジプトでは、紀元前2750年ごろのサッカラで、何らかの長さの標準が用いられていたということがはっきりしている。その標準は523.5~524 mmであり、その地におけるキュビットであると考えられる。エジプトでキュビットを表す象形文字は肘そのものである。ピラミッドもキュビットを基準にして作られているが、その長さを精密に測定した結果、ピラミッドには2種類のキュビットが使われていることがわかっている。これは、長いキュビットは王の腕から、短いキュビットは人民の腕から定められたものと言われている。
それ以外の多くの西洋の文化も、キュビットは使われた。ペルシャのキュビットは52~64 cm、古代ギリシャではπεχυα (pechua)と呼ばれ約47.4 cm、古代ローマではcubitusと呼ばれて約44.46 cm、アラブではarshと呼ばれて48~64 cmであった。ユダヤではאַמָּה(アマ)と呼ばれて46~61 cmであるが、これは今日でもユダヤ教で用いられている。
古代イスラエルでは、第一神殿時代のキュビットは428 mmであった。第二神殿時代には、一般的には 445 mmのキュビットが使われていたが、宗教的な目的には437 mmのキュビットが使用されていた。
[編集] 分量・倍量単位
キュビットの分量単位には以下のようなものがある。その名前から、元々はキュビットとは独立して成立した単位と考えられるが、キュビットと関連づけられて、その分量単位となった。
- 1キュビット = 2スパン(span) -- 手を広げたときの親指の先から小指の先までの幅
- 1スパン = 3パーム(palm) -- 手を握ったときの人差指から小指までの幅
- 1パーム = 4ディジット(digit) -- (親指以外の)指1本の幅
キュビットの倍量単位には、その2倍のダブルキュビットがある。ダブルキュビットはヤードの長さの由来とされている。国際単位系のメートルも、実はダブルキュビットに近い値になるように定められたものである。他にも、西洋の長さの単位の多くはキュビットやダブルキュビットに由来している。
[編集] 関連項目
- 古代の度量衡
- 聖書の度量衡
- 肘