カロリナハコガメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

?カロリナハコガメ

トウブハコガメ Terrapene carolina carolina

種の保全状態評価

LOWER RISK - Near Threatened
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))

ワシントン条約付属書II類

分類

界	：	動物界 Animalia
門	：	脊索動物門 Chordata
亜門	：	脊椎動物亜門 Vertebrata
綱	：	爬虫綱 Reptilia
目	：	カメ目 Testudines
亜目	：	潜頸亜目 Cryptodira
上科	：	リクガメ上科 Testudinoidea
科	：	ヌマガメ科 Emydidae
亜科	：	ヌマガメ亜科 Emydinae
属	：	アメリカハコガメ属 Terrapene
種	：	カロリナハコガメ T. carolina

学名

Terrapene carolina
(Linnaeus, 1758)

シノニム

Testudo carolina
Linnaeus, 1758

和名

カロリナハコガメ

英名

Common box turtle

カロリナハコガメ（Terrapene carolina）は、動物界脊索動物門爬虫綱カメ目ヌマガメ科アメリカハコガメ属に分類されるカメ。アメリカハコガメ属の模式種。

[編集] 分布

T. c. bauri　フロリダハコガメ

アメリカ合衆国（フロリダ州東部）

T. c. carolina　トウブハコガメ

アメリカ合衆国（インディアナ州北部、ヴァーモント州南部、ウェストバージニア州、オハイオ州、ケンタッキー州東部、コネチカット州、サウスカロライナ州、ジョージア州、テネシー州東部、デラウェア州、ニュージャージー州、ニューハンプシャー州南部、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、バージニア州、ペンシルバニア州、マサチューセッツ州、ミシガン州、メリーランド州、ロードアイランド州）

T. c. major　ガルフコーストハコガメ

アメリカ合衆国（アラバマ州南部、テキサス州東部、フロリダ州西部、ミシシッピ州南部、ルイジアナ州南部）

T. c. mexicana　メキシコハコガメ

メキシコ（サン・ルイス・ポトシ州、タマウリパス州、ベラクルス州北部）

T. c. triunguis　ミツユビハコガメ

アメリカ合衆国（アーカンソー州、アラバマ州、イリノイ州南部、インディアナ州南部、オクラホマ州東部、カンザス州東部、ケンタッキー州西部、ジョージア州南西部、テキサス州東部、テネシー州西部、ミシシッピ州、ミズーリ州、ルイジアナ州北部）

T. c. yucatana　ユカタンハコガメ

メキシコ（カンペチェ州、キンタナ・ロー州北部、ユカタン州）

[編集] 形態

最大甲長21.6cmとアメリカハコガメ属最大種。通常は甲長20cm未満。背甲はドーム状に盛り上がり、甲高は甲長の42%以上。椎甲板には筋状の盛り上がり（キール）が入る。腹甲の蝶番は第5縁甲板の真下にある。

オスの成体は、虹彩が赤や淡黄色、灰色になることがある。

T. c. bauri　フロリダハコガメ

最大甲長17.5cm。背甲は黒や暗褐色で、キールは黄色。成体は甲板に黄色い放射状の斑紋が入る。頭部は黒く、側頭部に2対の黄色い筋模様が入る。後肢の趾は3本。

T. c. carolina　トウブハコガメ

最大でも甲長20cmを超えない。甲幅が広く上から見ると円形。背甲は黄色やオレンジで、暗褐色の不鮮明な斑紋が入る。体色の変異が大きい。後肢の趾は通常4本。

T. c. major　ガルフコーストハコガメ

最大亜種。亜種小名majorは「大きな」の意。背甲は黒や暗褐色で、黄色やオレンジの不規則な斑紋が入ることもある。後部縁甲板は反り返り、広がることが多い。後肢の趾は4本。

T. c. mexicana　メキシコハコガメ

オスの成体は皮膚の色が抜け白くなる。背甲は褐色で甲の継ぎ目が暗褐色。後肢の趾は3本。

T. c. triunguis　ミツユビハコガメ

最大甲長16.5cm。背甲は淡褐色や暗褐色で、不鮮明な斑紋が入ることもある。後肢の趾が3本の個体が多いことが名前の由来だが、他亜種にも3本指の個体はいる。オスの成体は頭部の鱗が赤くなることがある。

T. c. yucatana　ユカタンハコガメ

最大甲長16cm。背甲は黄色や淡黄色で、暗色の放射状や甲板を縁取る斑紋が入る。オスの成体は皮膚が白くなる。後肢の趾は4本。

[編集] 亜種

Terrapene carolina bauri　Taylor, 1895　フロリダハコガメ　Florida box turtle
Terrapene carolina carolina　(Linnaeus, 1758)　トウブハコガメ　Eastern box turtle
Terrapene carolina major　(Agassiz, 1857)　ガルフコーストハコガメ　Gulf coast box turtle
Terrapene carolina mexicana　(Gray, 1849)　メキシコハコガメ　Mexican box turtle
Terrapene carolina triunguis　(Agassiz, 1857)　ミツユビハコガメ　Three-toed box turtle
Terrapene carolina yucatana　(Boulenger, 1895)　ユカタンハコガメ　Yucatan box turtle

[編集] 生態

湿度のある森林や草原等に生息する。陸棲だが、避暑や後述する採食のために浅い水場に入ることもある。地域によっては季節によって生息地を移動することもある。高温や低温時には落ち葉の下等に潜りこむ。メキシコに分布する亜種は夏季に夏眠することもあり、アメリカ合衆国北部の個体群は10-翌4月まで冬眠する。

食性は雑食で、昆虫類、クモ、多足類、甲殻類、陸棲の貝類、魚類、両生類やその幼生、小型爬虫類（カメ、ヘビ、トカゲ）やその卵、小型哺乳類、動物の死骸、植物の茎、葉、果実、種子、キノコ等を食べる。通常は地表で採食するが、浅い水中で採食することもある。

繁殖形態は卵生。オスは後肢をメスの甲羅に引っ掛ながらメスの背甲に乗って頭部や背甲の前部に噛みついた後、オスが後肢でメスの甲羅を掴んだままひっくり返ったような体勢で交尾する。地面を掘って5-7月に1回に1-11個（主に4-5個）の卵を数回に分けて（通常は年2-3回だが多い時は年5-6回産む）産みつける。産卵の間隔は12-38日。卵は70-80日で孵化し、9-10月頃に地表に現れるがそのまま地中で越冬し翌年の春季に地表に現れる個体もいる。地域にもよるが性成熟には5-10年かかるとされる。

[編集] 人間との関係

ネイティブアメリカンは本種を食用としていたとされる。

開発による生息地の破壊や、ペット用の乱獲等によって本種の生息数は減少している。

ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。以前はアメリカ合衆国に分布する基亜種や亜種ミツユビハコガメが大量に流通していたが、粗雑に扱われ命を落とす個体が多かった。1995年にアメリカハコガメ属が属単位でワシントン条約に掲載されたり、アメリカ合衆国からの輸出が禁止されたことにより野生個体の流通はほぼなくなっている。現在では主に繁殖個体が流通する。日本では以前はヨーロッパからの繁殖個体が主に流通していたが、最近では国内の飼育下繁殖個体の流通が増えている。最も流通するのは亜種ミツユビハコガメで、次いで亜種ガルフコーストハコガメ、基亜種と続く。亜種フロリダハコガメは分布が限られていること、メキシコに分布する2亜種は爬虫類の輸出が法律により厳しく制限されているため流通は非常に稀。大型のケージを用いて乾燥、多湿、シェルター等の複数の環境を併せ持った浅い水場を設けたアクアテラリウムで飼育される。地中に潜れる様に腐葉土やヤシガラ土等の、湿度を保つことのできる床材を甲高程敷く。森林に生息するためか空間把握能力が高いとされ、狭いケージで飼育されたり急にレイアウトを変更するとストレスから体調を崩すことがある。日本等では寒さを避けるため藁や落ち葉を積み重ねたり、潜るための土があれば場合によっては冬眠させることもできる。そのため囲いを設けて屋外で飼育されることもある。雑食のため餌が偏ると栄養失調を起こす可能性もあるため、できれば様々な餌を与えることが望ましい。