エッチングパーツ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
模型用部品としてのエッチングパーツは極薄の金属板に光学処理を程した覆いをかけて、不要な部分を薬液によって溶かし、必要な形状の部品を作製したものをいう。なお、エッチングパーツとは和製英語で、英米ではフォトエッチ(Photo etch)という呼称が一般的である。
強度的な問題から、インジェクションキットよりも数段高い精密なパーツを提供できることで、ハイエンドユーザーに人気がある。作製には通常のインジェクションキットとは異なる技量が必要になることや、キットその物に近い高価な価格設定により気軽に扱えるものではなかったが、最近は低価格化と製作技法・道具の普及によって市販のプラモデルに付属するまでになっている。
[編集] 概要
エッチングパーツは、主に薄くて形状の複雑な部分の再現に用いられる。例として、戦車のフェンダーやライトガード、グリルメッシュ、航空機の計器パネルやアクセスパネル、車・バイクのディスクブレーキやエンブレム、等がある。計器パネルなどは塗装済みの製品も登場している。おそらくもっとも多量に使用するのはスケールが非常に小さい艦船模型であり、手すり、レーダー、窓枠、機銃、ラッタル、艦載機脚、プロペラ等など・・・非常に多くの部品をエッチングパーツに置き換えることがある。1/350、1/700という小スケールで、プラスチック成型では再現でききれない部分が非常に多いためである。
主な入手経路は、ディテールアップパーツ専門メーカーが製造した市販品の購入であるが、模型自体に同梱していたりもする。
なお、近年メーカー純正というエッチングパーツがあり、これは模型自体を製造販売している会社が、商品につかってもらうために製作しているエッチングパーツである。ディテールアップ専用メーカー製より安価である場合が多いが、数も少なく、また応用も利きにくいためにシェアは低い。
エッチングパーツを販売しているディテールアップパーツ専門メーカーとして主なものは英ホワイトエンサインモデルズ、米ゴールドメダルモデルズ、トムスモデルズ、チェコのエデュアルドといった海外勢、日本ではファインモールド社が有名。また、青島文化教材社なども製作しているが、シェアは大きくない。現状、ファインモールド以外は日本勢のシェアは低いといわざるを得ない業界でもある。
価格帯はさまざまであるが、安いものでは1000円以下、高いものでは10000円を軽く越えるものもあり、基本的には判の大きさで変わると考えてもよい。
エッチングパーツの材質は、ステンレス、真鍮が代表的である。そのため普通のプラモデル用ニッパーでは切ることはできず(切ると刃こぼれを起こす)、専用のエッチング用ハサミや、カッターの腹で切るのが一般的。接着も瞬間接着剤やハンダ付けが必要で、塗装前に錆防止や模型用塗料定着のためのメタルプライマーを塗布するなど、プラスチックとは違った気遣いが必要である。そのため、以前は値段とあいまってハイエンドユーザーのものであったが、近年値段の低下と使用技術の普及により一般化してきている。また、塗装済みのものが販売されるなど、メーカー側も一般化を進めようとしているようである。
なお、エッチングパーツは、方法上は版画のエッチング技法と一緒であるため、自作している人もいるが、こちらは、使用済みの薬品の処理の問題などがあるため、まだ一般的とはいえない。