アメイジング・グレイス
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アメイジング・グレイスは、ジョン・ニュートンの作詞による賛美歌。特にアメリカで最も愛唱され、またバグパイプでも演奏される賛美歌の一つ。
- 原詞詞名(初行): Amazing grace! how sweet the sound
- 曲名(チューンネーム): NEW BRITAIN または AMAZING GRACE
- ミーター:86 86 (CM)
目次 |
[編集] アメイジング・グレイスの和訳詞を収録する讃美歌集
- 讃美歌第二編167番(われをもすくいし)
- 讃美歌21 451番(くすしきみ恵み)
- 聖歌 229番(おどろくばかりの)
- 聖歌(総合版) 196番(おどろくばかりの)
- 新聖歌 233番(おどろくばかりの)
- 新生讃美歌 301番(いかなる恵みぞ)
- インマヌエル讃美歌 257番(いかなる恵みぞ)
- SDA讃美歌 149番(素晴らしい恵みを)
- 救世軍歌集 144番(おどろくばかりの)
[編集] 歌詞
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- Amazing Grace! How sweet the sound
- That saved a wretch like me!
- I once was lost, but now I'm found,
- Was blind, but now I see.
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- 'Twas grace that taught my heart to fear,
- And grace my fears relieved;
- How precious did that grace appear,
- The hour I first believed!
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- Through many dangers, toils and snares,
- I have already come;
- 'Tis grace has brought me safe thus far,
- And grace will lead me home.
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- The Lord has promised good to me,
- His word my hope secures;
- He will my Shield and Portion be,
- As long as life endures.
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- Yes, when this flesh and heart shall fail,
- And mortal life shall cease;
- I shall possess, within the veil,
- A life of joy and peace.
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- The earth shall soon dissolve like snow,
- The sun forbear to shine;
- But God, Who called me here below,
- Will be forever mine.
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- When we've been there ten thousand years,
- Bright shining as the sun,
- We've no less days to sing God's praise
- Than when we'd first begun.
[編集] 作者
作詞者はジョン・ニュートン (John Newton)。作曲者は不詳。アイルランドかスコットランドの民謡を掛け合わせて作られたとしたり、19世紀に南部アメリカで作られたとするなど、諸説がある。
ジョン・ニュートンは1725年、イギリスに生まれた。母親は、幼いジョンに聖書を読んで聞かせるなど、熱心なクリスチャンであった。しかし、ジョンが7歳の時、彼女は死去する。成長したジョンは、商船の指揮官であった父に付いて船乗りとなったが、さまざまな船を渡り歩くうちに、黒人奴隷を輸送するいわゆる「奴隷貿易」に手を染めるようになった。
当時、奴隷として拉致された黒人への扱いは家畜以下であり、輸送に用いられる船内の衛生環境は劣悪であった。このため、多くの者が輸送先に到着する前に、感染症や脱水症状、栄養失調などの原因で死亡したといわれる。
ジョンもまた、このような扱いを拉致してきた黒人に対して当然のように行っていたが、1748年5月10日、彼が22歳のとき、転機はやってきた。船長として任された船が嵐に遭い、非常に危険な状態に陥ったのである。今にも海に呑まれそうな船の中で、彼は必死に神に祈った。敬虔なクリスチャンの母を持ちながら、彼が心の底から神に祈ったのは、この時が初めてであったという。すると、船は奇跡的に嵐を脱し、難を逃れたのである。彼はこの日を、みずからの第二の誕生日と決めた。その後の6年間も、ジョンは奴隷を運び続けた。しかし、彼の船に乗った奴隷への待遇は飛躍的に改善されたという。
1755年、ジョンは病気を理由に船を降り、勉学を重ねて牧師となった。そして1765年、「Amazing Grace」が生まれたのである。この曲には、黒人奴隷貿易に関わったことに対する深い悔恨と、それにも関わらず赦しを与えた神の愛に対する感謝が込められているといわれている。
この曲のほかにも、彼はいくつかの賛美歌を遺している。
[編集] サンプル
- 聴く(アメイジング・グレイス)
ニューヨーク州デラウウェア郡出身のアマチュア・デュオ「ロック・フローム・ザ・ガーデン」による演奏。ボーカルがジョアニーさんで、ギターがランディーさん。2分53秒 - 聴く(アメイジング・グレイス)
パイプ・オルガンのみによる伴奏。32秒 - うまく聞けない場合は、サウンド再生のヒントをご覧ください。
[編集] 有名な歌唱など
- ゴスペルの女王と呼ばれたマヘリア・ジャクソンが、1947年に録音。
- 米国のソウル歌手アレサ・フランクリンが1972年のライブアルバム「Amazing Grace」で歌い、ゴスペルの名盤の一つとなっている。
- ギリシャ出身の世界的な歌手、ナナ・ムスクーリが1972年、LP『BRITISH CONCERT』 の中でア・カペラで唄い日本でも発売された。その後伴奏付の COUREUR GOSPELなどでの収録分がテレビのコマーシャルなどに使われた。
- 1985年7月13日に開催されたライヴエイドのフィラデルフィア会場でのオープニングで、ジョーン・バエズにより歌唱された。
- 日本では1987年、元トワ・エ・モワの白鳥英美子がア・カペラで歌ったものがCM曲に起用され、話題を集めた。
- さだまさしが1987年に発表したシングル「風に立つライオン」の間奏部およびラストに引用されている。
- ジャズ歌手の綾戸智絵が1999年のアルバムに収録。彼女の代表的なレパートリーの一つ。
- 中島美嘉がデビュー作のドラマ「傷だらけのラブソング」(2001年)の中でア・カペラで歌って話題を集め、2ndシングル『CRESCENT MOON』・1stアルバム『TRUE』(どちらも2002年発売)に収録した。2005年に発売するベストアルバムのために綾戸智絵のプロデュースで再録音した。
- 2002年1月27日に放送された特撮テレビドラマ「仮面ライダーアギト」の最終回は、この曲の前半部分が演奏されている。
- 2003年に放送されたドラマ「白い巨塔」ではニュージーランド出身の歌手ヘイリー・ウェステンラがエンディング・テーマとして歌い、世間の注目を集めた。
- 本田美奈子.がクラシックアルバムの第一作『AVE MARIA』で歌い、白血病で闘病中の2005年10月に発売されたベストアルバム『アメイジング・グレイス』にも収録された。後者は11月の逝去後売り上げが急増し、オリコンチャートでベスト10入りを果たした。入院中に病室で歌ったア・カペラの「アメイジング・グレイス」は2006年7月から一年間、公共広告機構の骨髄バンク支援キャンペーンのテレビコマーシャルに使用された。
- 2005年に歌手のminkがコンセプトアルバム『e+motion』の中でカバーしている。ライブではしばしば披露されており、2007年にはフジテレビ系『僕らの音楽』出演時に初めてテレビで披露した。
- 藤本美貴が2006年に行われた自身のディナーショーにて披露。なお、この模様はテレビ番組娘DOKYU!にて、歌唱練習からディナーショーの模様まで放送された。
- 2006年のアニメ『交響詩篇エウレカセブン』第4期OPでNIRGILISが歌う『sakura』に堀澤麻衣子が歌うアメイジング・グレイスがマッシュアップされている。
- ネーネーズで知られる沖縄出身アーティスト古謝美佐子がコンサートにて沖縄方言ヴァージョンを夏川りみとデュエットで歌った。
- 2007年発売のゲーム『そして明日の世界より――』でafterシナリオのEDテーマソングに使用された。
- ニンテンドーDSのゲーム『もっとえいご漬け』に聞き取りトレーニングメニューとして1番が収録されている。
- 2008年4月19日公開の『名探偵コナン 戦慄の楽譜』のストーリーに関わる重要な挿入歌として、パイプオルガンとバイオリンの伴奏付きで使用されている。のびやかなオペラ版のこの曲は、同映画のサウンドトラックにも収録されている。