アホウドリ
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?アホウドリ | ||||||||||||||||||||||||
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アホウドリ |
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Phoebastria albatrus Pallas, 1769 |
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和名 | ||||||||||||||||||||||||
アホウドリ | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Short-tailed Albatross |
アホウドリ(阿房鳥、阿呆鳥、信天翁など、学名:Phoebastria albatrus、旧学名:Diomedea albatrus)は、ミズナギドリ目・アホウドリ科に分類される鳥類の一種。またはアホウドリ科に分類される鳥の総称。
目次 |
[編集] 特徴
全長約95cm、翼開長約240cmの大型の海鳥である。翼の先が黒く、くちばしはピンク色。成鳥は頭から首にかけて黄色で胴体が白い。若鳥は背中全体が黒褐色をしていて、成長するにしたがい体の羽毛が白っぽくなってゆく。
グライダーのような細く長い翼をもち、海上をはばたくことなくゆったりと飛翔する。この飛び方は「帆翔(はんしょう)」と呼ばれ、波がたてる風の力を有効に利用してジグザグに飛行するという独特なものである。長大な翼は風をとらえるのに都合がよいが、羽ばたくのは苦手で、海面や地面から飛び立つには向かい風と長い助走が必要となる。
北太平洋の外洋域に生息するが、10月から6月の繁殖期には伊豆諸島の鳥島や尖閣諸島の南小島で繁殖する。一夫一婦制で、一度つがいになると死ぬまで相手を替えない。少産長寿で、寿命は約20年と考えられている。長谷川博氏の研究によると31歳で子育てをしていた例も確認されている。
[編集] 名前の由来
アホウドリはその長大な翼のために助走無しには飛び立てず、地上にあっては鈍重な鳥である。その上、人間に対する警戒心が希薄なため、地上のアホウドリを捕獲するのは簡単だった。それ故に「阿呆な鳥」すなわち「アホウドリ」と呼ばれた。しかし、海鳥は基本的に地上では鈍重であるため、アホウドリだけに限った事ではない。 鳴き声が「アホウ」に聞こえたことから、とする説もある。
また、中国ではアホウドリは他の海鳥が落とした魚を漁ることで生活していると思われていたので、天から魚が降ってくることを信じている馬鹿な鳥として「信天翁」と呼ばれた。 このような不名誉な名前を付けられてしまったが、洋上の飛翔能力は鳥類の中でも最も高い。ゆったりと洋上を飛ぶ様を現した名前が「沖の太夫(オキノタユウ)」である。
[編集] 人間とのかかわり
明治時代以前は、アホウドリは日本近海に多数生息しており、繁殖地の鳥島では鳥柱が見られるほどであったという。
開国・明治維新の後、八丈島出身の実業家玉置半右衛門は、西洋に大きな需要がある羽毛布団の原料となるアホウドリが鳥島に多数生息することを聞くと、1887年、東京府から鳥島無料拝借の許可を得て、数十人の人足とともに島に渡る。
これがアホウドリ乱獲の始まりとなり、年間20万羽、15年間で推定約500万羽が殺されたとされる。1902年8月9日に鳥島硫黄山が大噴火、当時の島民125名全員が死亡する惨事となり、「アホウドリの祟り」と恐れられた。
1927年には再び開拓団が入植、アホウドリ採取禁止となる1933年まで捕獲が続いた。1949年にはアホウドリ絶滅が宣言された。
しかし1951年、鳥島にごく少数が生存しているところを再発見され、その後は保護団体による手厚い保護活動が続けられている。2003年には1840羽(うち尖閣列島300羽)まで生息数が回復した。
鳥島のアホウドリ繁殖地は、南東海岸の燕崎とよばれる崩れやすい火山灰地の斜面にあり、卵やヒナが斜面の崩壊に巻き込まれる事故も多発していた。そこで、島の西側の地盤の安定した地域である初寝崎にデコイを設置して若鳥をおびきよせ、繁殖地を安全な地域に移す試みが1991年から行われていた。その結果、2006年春には13羽の巣立ちが確認され、「デコイ作戦」は結実した。しかし、鳥島は活発な活火山であることから、噴火により大量の個体が一気に失われる危険性が常につきまとっている。そのため、今後のアホウドリの保護増殖活動は、明治時代以前の繁殖地であり、非火山性の小島である小笠原諸島聟島への移住作戦へ重点を移行する。これは鳥島で産まれたアホウドリのヒナの一部を聟島に運び、半人工的に育てることで、聟島を新たな繁殖地として認識させようとするものである。
5年計画の初年となる2008年は、2月19日に約40日齢の10羽のヒナが鳥島からヘリコプターを使って聟島に移送された。ヒナは人間から給餌をされて順調に成育し、5月25日までに全10羽が無事巣立ちした。今後毎年10羽づつ移送を続け、数年後には聟島に戻ってきた個体が自然繁殖を続けることが期待されている。
[編集] 保護上の位置づけ
- VULNERABLE(IUCN Red List Ver.3.1(2001))
- 国際保護鳥 - 1960年
- 中国
[編集] シブリー分類体系上の位置
シブリー・アールキスト鳥類分類では、従来のミズナギドリ目がコウノトリ目に統合されたため、アホウドリの分類も以下のように改められている。
シブリー・アールキスト鳥類分類 |
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コウノトリ亜目 Ciconii
コウノトリ下目 Ciconiides
コウノトリ小目 Ciconiida
ミズナギドリ上科 Procellarioidea
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[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- BirdLife Species Factsheet
- image list(google)
- 苦境に立つアホウドリ類 - 底延縄漁業による混獲でアホウドリ類全てに絶滅の危機
- Save the Albatross
- 「アホウドリ復活への展望」(山階鳥類研究所)
- 山階芳麿賞授賞式・受賞記念講演とシンポジウム「アホウドリ復活への展望」
- 東邦大学メディアネットセンター アホウドリ復活の軌跡
[編集] 雑学
- ゴルフで、パーより3打少ない打数でカップインする「アルバトロス」とは、アホウドリのことである。
- メジャーリーグベースボールなどで、選手の価値に値しない巨額の契約をアホウドリ契約(Albatross Contract)と呼ぶ。