アニメ声
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アニメ声(アニメごえ)とは高くて子供っぽい、アニメのキャラクターや声優を想起させるような、女性の話し声(地声)のことを言う。
非アニメソング(アニソン)歌手が、アニソン歌手のような声で歌っている時なども隠語、俗語としても使用される。
[編集] アニメの声はなぜ高いか
そもそも多くのアニメ(人形劇番組も)は一般的には幼児・子供を対象として作られるため、視聴者である子供の感情移入を得るためには高めの可愛らしい声が望まれる傾向にある(ここで述べる「高音の声」は音高だけの意味ではなくむしろ主にフォルマントの高さのことである)。また、アニメの登場キャラクターは子供や未成年が多いのだが、それ以前に線が少なく小綺麗にデフォルメされたアニメキャラの概観は根本的に女性的でかつ幼児的であり、相応な声といえる。
同じく、アニメの、記号化されて情報量の少ない映像に合わせるには、音声は奥行きの無いほっそりした声のほうが相性が良いとされる。そのような意味では倍音も少なく、頭声的でかつ高いピッチ、浅い構音の発声に需要が集まる。無論、アニメ特有の美少女キャラクターへの対応もあるし、キャラクター表現が現実の人間とかけ離れている以上、声も普通の人の声から外れている方が違和感を与えない。
発声技法としては声楽の、特にベルカントの技法とされるvoce fintaと共通点がある。喉頭を高い位置に保ち声道を短くする事でフォルマントの高い、子供に似た声をだす。同時にピッチも高めになり換声点(裏声に変わる点)に近づくが、換声点の近くは音色的なバリエーションが多く特徴(声色や表情)を出し易いという利点もある。喉を上げると声帯内筋が働き易くなるが、一般に胸声が弱いとされる日本人女性にとっては個性を出すために都合がいいとされる。
[編集] 印象
ほっそりとして芯がある硬質な声か、丸く少しハスキーな声のどちらかであり、いずれにしても生活感の薄い声であり、ともすると人間味のない声と感じられることもある。アニメの美少女や女性アイドルの声として、多くの日本人が共有可能なイメージの声である。
母音の構音(調音)に癖があることが多く、そのために舌足らずなこともある。
音程やフォルマントが高いということは、騒音がある環境でも声が通りやすく個性をアピールしやすいのは利点であるが、静かな場所では他者に鬱陶しく思われやすい。また、一般に媚びた声、甘えた声、猫なで声と言われるものと似た点がある。そのため、他者から偏見をもたれたり敬遠されることがあり、このような声の女性の中には、チャームポイントとしてあえて舌足らずな話し方をする人もいる一方で、コンプレックスを感じて、低く落ち着いた声で話そうとする人もいる。
近年は男性にもこれを指すことがある。
なお、癖が無く低い落ち着いた声を要求される洋画などの吹き替えなどでは敬遠される傾向にあり、アニメに携わっている声優が吹き替えに進出する際の障害となっている。
アニメ監督の宮崎駿はこのアニメ声を嫌い、近年の作品にはプロの声優の代わりに俳優を採用している。俳優の起用については他のスタジオジブリ作品も同様であり、プロデューサーの鈴木敏夫の意向も働いていると思われる。