みんなの科学
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みんなの科学(みんなのかがく)とは、NHK教育テレビで1965年4月から1980年まで15年間放映されていた、中高生を主な視聴者とした科学番組である。
放映時間は月曜日から金曜日の17:30~18:00(再放送は翌日の12:30~13:00)で、曜日によって物理学・生物学あるいは技術史・科学トピックスなどのテーマに分かれていた。人類学の放送テーマの日には、自然人類学のみならず文化人類学的なテーマを扱う事もあったので、科学といっても人文科学までもカバーしていたことになる。 まだ家庭用VTRが普及していない時分の放映で、この番組見たさに帰宅を急ぎ、独特なテーマ音楽が流れ始めると、わくわくしながら画面にのめり込んでいった中高生も多い。中でも、木曜日に放映されていた「たのしい実験室」のコーナーは、科学工作や実験好きな中高生に人気を博し、この番組を視聴することで科学に目覚めて科学者や技術者の道に進んだ青少年も多い。特にこのコーナーで回路図が写し出されたときは急いで書き取らなければならず、書き漏らした場合、翌日登校した際、必ずと言ってよい程数名は存在した、このコーナーのマニアの友人達と補完し合った青少年も多い。また、当時はこうした硬派の科学番組であっても所詮はテレビ番組という偏見も根強かったようで、実験の手順を書きとめようとしていたときに母親に「テレビなんか見ていないで勉強しなさい」とスイッチを切られてしまい、メモできなかったため、次週の放送でもう一度紹介してほしいとの投書が番組中で紹介されたこともあった。
他の曜日はその曜日のテーマの最先端の分野に取り組んでいる現役の研究者をスタジオに招き、アナウンサーとの対談にVTRによる録画映像を交えながら、研究の内容を紹介した。この番組のあり方は、青少年向け科学雑誌『子供の科学』のテレビ番組版とでもいうべき性格を有し、こうした番組が作られた背景には1960年代から1970年代の科学少年文化の全盛期という文化状況があった。
「みんなの科学」放送当時のNHKの科学番組のラインナップは、成人向けの深夜の「あすへの記録」>「科学ドキュメント」、小学生向けの「四つの目」>「レンズはさぐる」が、「みんなの科学」と補完しあう形になっていた。しかし、「みんなの科学」放送終了に先立つ1978年、「レンズはさぐる」の後継番組としてスタートした「ウルトラアイ」は、生活科学番組としての色彩を濃くして中学生、高校生、さらには主婦層を中心とした成人も視聴者層に取り込んでいき、その後のNHKの科学番組の主流の系譜を形作っていった。
「みんなの科学」が放送終了した1980年代以降、2000年代現在までの青少年向け科学番組は、コンピュータグラフィックスなど進んだ映像技術と豪華な演出によって青少年の関心を科学へ向けようとするものが主流になっている。しかし、先端の研究者の肉声を対談方式でお茶の間に届けたり、中学生、高校生でも家庭や学校の部活動で手が届きそうな高度な実験の手順を詳細に紹介するといった、「みんなの科学」の硬派の直球勝負の製作姿勢は、科学少年に対して手の届くところに科学があるという実感を、生々しく与えるものであった。
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[編集] 主題曲
- 作曲:林光