M1エイブラムス
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イラクに駐留するアメリカ海兵隊のM1A1 |
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M1エイブラムス | |
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性能諸元 | |
全長 | 9.83 m |
車体長 | 7.80 m |
全幅 | 3.65 m |
全高 | 2.84 m |
重量 | 55.7 t M1 57.0 t IPM1 61.3 t M1A1 62.1 t M1A2 63.0 t M1A2 SEP |
懸架方式 | 独立懸架トーションバー方式 |
速度 | 67 km/h(整地) |
48 km/h(不整地) | |
行動距離 | 498 km M1 465 km M1A1 391 km M1A2 |
主砲 | M1 IPM1 51口径105mmライフル砲M68A1 M1A1, M1A2, M1A2 SEP 44口径120mm滑腔砲M256 |
副武装 | 12.7mm重機関銃M2(対物・対空) 7.62 mm機関銃M240(主砲同軸) |
装甲 | 複合装甲(砲塔前面 及び 車体前面) 均質圧延鋼板(車体) |
エンジン | ガスタービンエンジン AGT-1500 1500 hp |
乗員 | 4 名 |
M1 エイブラムス(M1 Abrams)は、アメリカ陸軍及びアメリカ海兵隊の第三及び第三・五世代主力戦車である。エイブラムスの名は、この戦車の開発を推進し、バルジの戦いの英雄でもあるクレイトン・エイブラムス陸軍大将に由来する。湾岸戦争及びイラク戦争に投入された。
目次 |
[編集] 開発経緯
M1エイブラムスは、M60パットンの後継として1970年代に西ドイツと共同開発を進めていたMBT-70計画の頓挫により、新たにアメリカ単独で開発された戦後第3世代の主力戦車である。
クライスラー社(現ジェネラル・ダイナミクス社)とゼネラルモーターズの競作が行われ1976年にクライスラー社の案が採用され1981年に制式化された。
M1は従来のアメリカ戦車と同様に発展余裕に富んだ設計で制式化後も数度の改良を経て現在では制式化直後とはまったく異なる戦車となった。
また、ディーゼルエンジンが主流の戦車としては珍しくガスタービンエンジンを搭載していることが特徴である。
[編集] 主砲
M1は当初から120mm砲の搭載を前提として開発されていたが、制式化を急ぐあまり120mm砲の開発が間に合わなかったため、初期型のM1及びM1の装甲改良型であるM1IP(IPM1)は、主砲にM60と同じ51口径105mmライフル砲M68A1を装備した。
1985年から火力強化版のM1A1が導入されこの型から主砲をドイツのラインメタル社製、44口径120mm滑腔砲をライセンス生産したM256を装備し、APFSDSには劣化ウランを使用している。初弾命中率90%。
[編集] 装甲
M1の砲塔前面装甲は避弾経始を考慮した形状で傾斜している。M1が対HEAT対応の空間装甲、M1A1が対鉄弾芯APFSDS対応の無拘束セラミック、M1A1(HA)/M1A2が対タングステン/劣化ウラン弾芯APFSDS対応の劣化ウランプレートと徐々に進化している。
1985年から導入されたM1A1は対化学兵器防御能力を備え、装甲を強化している。なお湾岸戦争において配備されていたM1A1の大多数に対して劣化ウランプレート(劣化ウラン装甲材)を装着する改修が急遽実施されている。このウランプレートを装着する改修を受けた車両はM1A1(HA)に分類され区別される。
M1A1をさらに改良したM1A2は、劣化ウラン装甲が張り巡らされ防御力の強化が図られるとともに、戦車長用の暗視装置付きペリスコープや自己位置特定システム、その他高度な電子機器を備えており、アメリカ軍向けには試作車輛を含む77輛が生産された。改修計画SEP(System Enhanced Package)は、1999年から始まっており、旧型となった一部のM1やM1A1は、M1A2やM1A2 SEPに改修されている。
現在ではTUSK(Tank Urban Survival Kit)と呼ばれる都市環境下での戦闘に対応させる為の強化キットが開発され運用中である。個人携帯式の対戦車火器などから発射される成形炸薬弾から装甲の脆弱な部分を防御する為に、サイドスカートに爆発反応装甲タイル、車体後部にはスラット装甲と呼ばれる柵状の装甲を装着している。また砲塔上には車長が車内から遠隔操作できる銃架を設置し12.7mm重機関銃M2を据え付けている。装填手用には盾で防護された暗視照準機付きの7.62mm機関銃を装備するなど近接戦闘時の生存性向上を図っている。
一方で、劣化ウランは、戦地から帰還した将兵の間に発生した「湾岸戦争症候群」「バルカン症候群」と呼ばれる病気の原因物質ではないかと一部で疑われているが、因果関係ははっきりしない。
[編集] 動力
各国がディーゼルエンジン主流でいるなかガスタービンエンジンを採用している。
軽量小型・高出力で整備性・耐久性・信頼性が高く加速性・登坂能力も高いなどのメリットがあるが、燃費が極端に悪いというデメリットがある。低速/停車時の燃費の極めて悪くアメリカ陸軍では、これらの事から停車時の電力供給を目的に補助動力装置を設置した。
また、吸排に関しても、航空機ならまだしも地上を走る戦車は塵・砂・ゴミを吸い込みトラブルの原因ともなっており、吸排気系の設計に手を加えねばならずまた、燃料タンクの増設せねばならないためエンジンの小型化のメリットは無いに等しい。
湾岸戦争では大量の燃料を送り届けることで燃費の悪さを補ったがこれはかなりの負担であり、M1の他にガスタービンエンジンを戦車で採用しているのは旧ソ連製のT-80だけである。
[編集] 実戦
M1A1が1991年の湾岸戦争において初めて戦場に投入され、サウジアラビアに展開した。M1A1は、イラク軍が配備していたソ連製戦車のT-72・T-62・T-55に比べて性能で大幅に勝り、3,000m以上の遠距離からアウトレンジ攻撃(敵の射程外から攻撃)をすることができた。そのため、あまり反撃を受けず、M1A1の損害は十数輛といわれている。当時のM1A1は敵味方識別装置を持たず、また激しく砂塵の舞う砂漠の戦いで熱映像装置(サーマルサイト)の性能が不十分だった為に同士討ちが多発し、この十数輛の損害の半数は同士討ちによるものといわれている。
コソボ紛争以降に投入されるM1A1/A2に敵味方識別装置が装備された。
2003年のイラク戦争にも投入され一定の戦果を上げたが、戦争後は至近上方からラジエーターグリル等の脆弱箇所を狙う武装勢力のRPG-7(対戦車擲弾)による攻撃や、対戦車地雷・即席爆発装置などによる被害が目立った。
[編集] 乗員
M1エイブラムス戦車には4名が以下のように搭乗する。
- 操縦手は車体前方中央
- 装填手は砲塔の左後方
- 砲手は砲塔の右前方
- 車長は砲塔の右後方
[編集] 運用国
性能を限定したM1A2は、クウェート・サウジアラビア、M1A1はエジプト・オーストラリアに輸出された。
- オーストラリア M1A1 - 59輛[4]
- エジプトM1A2相当 - 1005輛 (M1A1からのアップグレード755輛 及び M1A2 250輛) [5]
- クウェート M1A2 - 218輛[6]
- サウジアラビア M1A2 - 315輛、M1A1 - 73輛[7]
[編集] 登場作品
- トランスフォーマー (実写映画) - ディセプティコンズの1人、デバステーター(玩具ではブロウル)が変形する。
- ビーストウォーズII 超生命体トランスフォーマー - デストロン機甲部隊・コンバットロン部隊の"破壊公爵"メガストームが変形する。
- ウルトラマンメビウス
- ジャーヘッド(湾岸戦争)
- 戦火の勇気(湾岸戦争)
- 超星神シリーズ - 国防軍(J.S.D.F/自衛隊?)の主力戦車として。
- 沈黙の艦隊
- マーセナリーズ‐最終任務でのみ使用可能。車体には国連軍のマークがついている。一撃で建造物を破壊可能(地下壕入口やバンカーは例外)。
- メタルギアソリッド - 主人公・スネークと対峙するボスとして、バルカン・レイヴン他数名のゲノム兵が操縦。
- メタルサーガ 〜砂塵の鎖〜・メタルサーガ 〜鋼の季節〜・メタルマックスリターンズ - プレイヤーが駆る戦車の一つとして。
- リトルコップ - 主人公が殲滅する私設軍隊の装備として。
- 朝鮮半島炎上 - 小説。40両のM1A2が北朝鮮軍1個師団を相手にする。
- バトルフィールド2
- バトルフィールド2 モダンコンバット
- 宇宙戦争 (映画)-丘での戦闘に登場。数両がトライポッドと交戦するが、全滅した。
- ゴーストリコン アドバンスウォーファイター2-M1A1がメキシコ反乱軍の戦車として登場。M1A2がアメリカ軍戦車として登場し、味方として主人公の指揮下に加わる。
- コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア
- 魁!!クロマティ高校 - 竹之内の舎弟のマーキュリーが武器を持って来いと言われた際に用意した
- クローバーフィールド-ニューヨークで歩兵隊と共に「何か」と交戦する。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ http://www.globalsecurity.org/military/systems/ground/m1-specs.htm
- ^ http://www.globalsecurity.org/military/systems/ground/m1-specs.htm
- ^ http://www.globalsecurity.org/military/systems/ground/m1-specs.htm
- ^ [1] Australian National Audit Office report on the DMO project Land 907
- ^ http://www.militarium.net/wojska_ladowe/m1_abrams.php
- ^ http://www.militarium.net/wojska_ladowe/m1_abrams.php
- ^ http://www.militarium.net/wojska_ladowe/m1_abrams.php
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