東京臨海高速鉄道70-000系電車
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70-000系電車(70-000けいでんしゃ)は、東京臨海高速鉄道の通勤形電車。東京臨海高速鉄道での公式呼称は「ななまんけい」である。
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[編集] 概要
全車が川崎重工業製である。
台車や主要機器の設計はほとんどが東日本旅客鉄道(JR東日本)の209系と共通とされている。これは、りんかい線が臨海副都心線の名称で開業した当時に車両基地を有しておらずJR東日本に委託しており、互換性のあるJR東日本の車両をベースにすることで、建造・保守費用の節減を狙ったためである。検査時は新木場駅から京葉線を通り、京葉電車区(現・京葉車両センター)に回送されていた。
所属は東臨運輸区である。開業時は東京テレポート駅下り方の未開業部分を留置線として使用し、ここで軽微な検修や清掃が行われたが、2002年(平成14年)の八潮車両基地竣工によってこのトンネル内留置は解消された。
保安装置は、ATS-Pと埼京線用のATCを搭載している。1996年(平成8年)の開業当初は可搬型のATS-SNも使用できるようになっていたが、八潮車両基地の竣工と埼京線乗り入れに合わせて撤去され、ATCに置き換えられた。なお、ATS-PとATCの切り替えは自動で行われるが、運転台右下の押しボタンにより手動で切り替えることも可能である。
制御装置は、三菱電機製GTOサイリスタ素子によるVVVFインバータ制御を採用している。編成中の電動車 (M) と付随車 (T) の構成(MT比)は初期の4両編成で2M2T、現行の10両編成で6M4Tとしている。これは、りんかい線の勾配区間での故障編成の押し上げや電動車1ユニットカット時の運転継続を考慮しているためである。
ドアチャイムも209系と全く同じであるが、内装はアイボリー地の化粧板に碧緑色の座席モケットという209系とは異なる色調でまとめられた。座席の袖仕切りの形状やドア間の座席に配置される握り棒の本数にも差異がある。その他の内装での差異は、209系ではステンレス無塗装仕上げであった客用側扉部分を化粧板仕上げとされた点と、車両間の貫通扉は電動車ユニット両端ではなく電動車ユニットの中間に設置されている点が挙げられる。車体などでは外板の厚さが209系のt=1.2mmに比べて0.3mm厚いt=1.5mmであることと、開業当時存在した4両編成ではパンタグラフがM1車に2基搭載(編成組み替え後に1基が撤去された)されていたことなどである。
2006年(平成18年)7月頃より車端部の3人掛け座席が全車両とも優先席に変更され、付近のつり革の色が“りんかい線”をイメージさせるスカイブルーに変更された。さらに「携帯電話のマナー」についての注意書きステッカー(JRと同仕様)も貼付された。
京浜東北線・根岸線で運用されている209系のように前面右上には路線名が表示されている。かつてはりんかい線内のみでの運用は「りんかい線」、埼京線直通および埼京線内での運用は「りんかい線⇔埼京線」と表示されていたが、現在はりんかい線内のみでの運用でも「りんかい線⇔埼京線」と表示されている。また、前面右上に路線表示のない205系と行先表示器の内容を合わせているため、現在はLED式とされた行先表示器にも「埼京線」「りんかい線」「埼京線直通」「りんかい線直通」などと表示されている。なお、かつて幕式だった編成については側面方向幕の地色が青色で、また駅名表記は天王洲アイルで異なる書体を使用していた他はJR東日本と同一書体を使用していた。
登場当時は209系と同じく側面の大形窓が開閉不可能になっていたが、2006年8月より大型窓の開閉を可能できるように順次改造された。(1両につき片側1か所ずつのみの改造で、改造箇所は209系より少ない。)
設計時点では、世界都市博覧会期間中、4両編成を6両編成に組み替え、さらにJR東日本より103系1000番台6両編成3本を借り入れて多客輸送に対応する計画であったが、同博覧会の中止によって実現することはなかった。
[編集] 編成
車両番号のうち、ハイフン前の「70」は系列を、ハイフン以降の3桁のうち上2桁で編成番号、下1桁で編成内の順位を表す。同様の付番方式は東京都交通局(都営地下鉄)新宿線用の10-000形などにも見られる。
10両編成の場合の車種構成は、新木場寄りからTc2A-M1A-M2A-T2A-M1A-M2B-T2A-M1A-M2A-Tc2Bで、M1Aに制御装置、M2Aに空気圧縮機と静止形インバータ、M2Bには空気圧縮機のみを搭載している。車両番号は70-xx0-70-xx1-70-xx2-70-xx3-70-xx4-70-xx5-70-xx6-70-xx7-70-xx8-70-xx9となるが、号車番号は埼京線の205系に合わせて末尾9のTc2Bが1号車、末尾0のTc2Aが10号車である。また、4両編成の場合は末尾3~8を欠番としたTc2A-M1A-M2A-Tc2B、6両編成の場合は末尾3~6を欠番としたTc2A-M1A-M2A-M1A-M2A-Tc2Bで、製造当初から10両編成化を見越した付番とされていた。
[編集] 沿革
- 1996年(平成8年) - 臨海副都心線開業用として4両編成4本(01~04編成、計16両)を製造。
- 1999年(平成11年) - 列車増発のため4両編成1本(05編成)を増備、4両編成5本(計20両)体制に。
- 2001年(平成13年) - 3月31日の天王洲アイル駅延伸開業に伴い4両編成1本(06編成)を増備、4両編成6本(計24両)体制となる。この車両から側面・前面の行先表示器が従来の幕式からLED式に変更された。
- 2002年(平成14年) - 12月1日の大崎駅(全線)開業用として10両編成4本(07~10編成、計40両)と増結用の中間車(M1A-M2A(末尾7・8)×5、T2A-M1A-M2B-T2A-M1A-M2A(末尾3~8)×1)を16両の計56両を製造した。既存の4両編成6本のうち5本(01~05編成)を6両編成に、1本(06編成)を10両編成にそれぞれ組み替えると共に、既存M1車のパンタグラフが1基撤去され、新製車に転用された。これにより、10両編成5本(計50両)と6両編成5本(計30両)の合計80両体制となる。
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- この時に増備された車両は側面の社名ロゴ表記を従来の「TWR」のみから「TWR」の下に「りんかい線」の文字を追加されたため容易に判別できる。10両編成は埼京線と川越線へ乗り入れる運用に、6両編成は線内の折り返し運用に使われ、先頭車の前面右中央に「6両」の編成札を掲出していた(全線開業直前までは「4両」「10両」の編成札も掲出)。またこの際の編成組み替えに併せて行先表示器が幕式だった1999年登場までの5本のうち組み替え後も残った3本の先頭車は行先表示器をLED式に取り替えると共に、埼京線の205系も含めて線名・行先の交互表示を開始している。なお、新規に製造された10両編成4本は車内客用ドア上部のLED式案内表示器が千鳥配置とされた。
- 2004年(平成16年) - 10月16日のダイヤ改正に併せて全車両の10両編成化を実施。付随車6両を増備して6両編成5本のうち2本(02・03編成)の編成を解き、電動車ユニット2両を残りの3本(01・04・05編成)に1組ずつ、付随車(末尾3・6)を各編成に2両ずつ組み込み、埼京・川越線への乗り入れ対応工事を施行の上新たに10両編成3本(新01~03編成)に組成した。
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- この組成変更に伴い16両に対して改番が実施され、10両編成8本(計80両)の計80両体制となった。改番の状況は次の通り(※は2代目の同番車)。
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- 新01編成:70-021、70-022→70-014、70-015
- 新02編成:70-040、70-041、70-042、70-031、70-032、70-047、70-048、70-049→※70-020、※70-021、※70-022、70-024、70-025、※70-027、※70-028、※70-029
- 新03編成:70-050、70-057、70-058、70-051、70-052、70-059→※70-030、※70-031、※70-032、70-034、70-035、※70-039
- また、この組成変更で発生した余剰車6両(70-020、70-029、70-030、70-039、70-027、70-028)はJR東日本に売却され、八高線・川越線用209系3100番台に改造された。
[編集] 運用区間
- りんかい線および乗り入れ先である埼京線と川越線大宮~川越間で運用されている。なお、運用の関係でりんかい線に直通しない埼京線・川越線のみ運行する列車にも使用される。
- 運行番号が80・90台の列車が70-000系充当列車である。なお、87運行は川越車両センターに入区し、翌日は89運行で出区する。