小泉今日治
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小泉今日治はスクウェア・エニックスのゲームデザイナー。愛称はキョン。中期以降のサガシリーズのバトルデザインを作り上げている。
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[編集] 来歴・人物
元々はゲームに興味が無かったが、ファイナルファンタジーIIに感銘を受け、1991年にスクウェアに入社。
93年発売のロマンシング サ・ガ2でバトルデザインを担当し、同シリーズのバトルを手がける。連携や陣形を筆頭にサガシリーズ独自のバトルバランスを組み上げていった。また、敵モンスターのデザインを戦闘に反映させることでも定評がある。たとえば、盾を持たせると盾による防御を行い、大きくデザインするとHPを高くするなどである。そのため、小泉が敵を強くしすぎないよう、デザイナーはモンスターデザインにも気を遣うという。また、自身でもゲームプレイのバトルを楽しめるように複雑な内部パラメータを使用したバトルシステムを構築しているとのこと。
2002年発売のアンリミテッド・サガの興行的な失敗で、ロマンシング サガ -ミンストレルソング-では高井浩をバトルディレクターとして小泉のお目付け役につけられた。
『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- アルティマニア』によると、母親はミンサガの最終ボス(ただし通常版)を楽に倒せるほどの腕前。身内に上級者がいることが、ゲームシステムに影響を与えているという説もある。また、これを見て海外版では少し最終ボスを強くしたという。
[編集] 代表作
- ファイナルファンタジーIV:「かいはつしつ」内に登場
- ロマンシング サ・ガ2:バトルデザイン・バトルデータ
- ロマンシング サ・ガ3:バトル/ゲームデザイン
- サガフロンティア:バトルデザイン
- サガフロンティア2:バトルディレクター
- ブルーウィングブリッツ:ディレクター(岩崎秀雄、小泉今日治、篠宮淳一による共同ディレクション)
- アンリミテッド・サガ:ゲームデザイン・ルビィ編シナリオ
- ロマンシング サガ -ミンストレルソング-:バトルデザイン
[編集] 生み出したゲームアイデア
熱狂的なゲーム愛好家であり、関わった作品の世界にあわせて様々な独創的なシステムを作り上げている。
- 閃きシステム:ロマンシング サ・ガ2以降の作品すべて
- 戦闘中に電球のアイコンと共に新しい技を閃く。使用している技によって閃く確率が異なる。
- 資質システム:ロマンシング サ・ガ2以降の作品すべて
- キャラクターの閃きやスキルアップに先天的な上昇補正がつくシステム。ミンストレルソング版はスキルに必要なジュエル量が少なくてすむだけの別物となっている。
- 陣形システム:ロマンシング サ・ガ2
- 従来の陣形とは攻防比率が変化するだけの物だったが、ロマサガ2で陣形によって特殊な効果が発生するように発案された。このシステムはロマサガ3の『コマンダーモード』やミンサガの『陣』に発展して受け継がれている。
- コマンダーモード:ロマンシング サ・ガ3
- 主人公は戦闘に参加せず、指揮官として後列から指示を出し、他のパーティメンバーがオートで戦闘を行うシステム。このモードでしか繰り出せない強力な技も存在する。
- チームシステム:サガフロンティア
- 最大15人のパーティメンバーを最大3チームに編成するシステム。従来の編成ではCD読み込みのストレスが生まれる対策からと思われる。
- 連携システム:サガフロンティア以降の作品すべて。
- 法則によって技や術が連携していくシステム。敵に与えるダメージの計算式が、通常に単独攻撃するよりも数倍に跳ね上がるのがプレイヤーの快感を生み出している。繋がった技の順番で連携名が面白く変化する楽しさも特徴。アンリミテッド:サガのみ全ての術と技が連携可能だが、リールシステムの関係上狙った連携を出す事が難しい。
- ロールシステム:サガフロンティア2
- キャラクターに役割を演じさせる(ロール)システム。戦闘において通常より補正がつく。
- アニマシステム:サガフロンティア2
- 装備やフィールドに存在するアニマ(霊力)の力を引き出して術を使うシステム。フィールドの自然を簡易的な術としても使えるが、性能は完全に戦力外である。
- ツールシステム:サガフロンティア2
- 装備やアイテムの事。鋼や鉄製品を除きアニマの属性の力が宿っている。壊すことでチップになり、金との換金やツールの開発、金を渡せない別キャラクターへ渡す事ができる。防具以外は基本的に消耗品だが、永遠に不滅の物はクヴェルと呼ばれる。
- デュエルシステム:サガフロンティア2
- 戦闘をタイマン(1対1形式)で行うバトル。コマンドを繋げて技等を作る一人連携システム。本人曰く「自由度がでるはずが、残骸のようになってしまった」との事で、アンサガの連携にその構想の片鱗が見える。
- ヒストリーチョイス:サガフロンティア2
- 歴史のエピソードを自由にチョイスして進める、新機軸のフリーシナリオシステム。これも本人曰く構想通りに行かずとの事。大河的な歴史の中から任意のイベントを選び、プレーヤーがアイテム収集や技術開発をしていく自由度が醍醐味だが、キャラを自由に育てられず、時と場所を越えてアイテムや技術を共有できる原理も不明で、イベント内容も選ぶまで不明かつ1周目では自由に選べない事から、システムを生かしきれていない面がある。シナリオスキップ機能付のストーリーゲームとしては秀逸といえる。
- スキルパネル:アンリミテッド・サガ
- 同ゲームの成長システム。六角形に並べられた7枚のパネル枠の中にLV5までのアビリティをセットし、並べ方で能力値が上昇下降する。自由に役を並べる戦略性がポイントだが、強制的にパネルの変更を迫られたり追加パネルにランダム要素が大きい。同スタッフのコードエイジコマンダーズに継承された。
- マップアビリティ:アンリミテッド・サガ ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
- 所有するスキルを利用して宝箱やフィールドの仕掛けを解くシステム。リールによる判定をなくしミンストレルソングに継承された。
- 改造システム:アンリミテッド・サガ ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
- 消耗品である武器を素材で補強し強化・弱体するシステム。素材同士を合成する事で突然変異を起こすこともできる。ミンストレルソングでは補強素材が適材なら使い込む事で武器が進化するというシンプルなアレンジで継承された。
- 流通システム:アンリミテッド・サガ ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
- プレイヤーの冒険や売買で商品の流通が変化するシステム。ミンストレルソングでは3つの各商社を使い込む事でそれぞれ増えていく簡単な物になった。薬草は薬局に売ることで薬品の流通が良くなる。
- 財宝システム:ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
- 宝の地図を入手する事でフィールドの財宝を探せるようになるシステム。レア装備も手に入るが、小泉とスタッフの意思疎通のミスで入手難度が異常な設定になっている。
- クラスシステム:ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
- クラスにつく事で、戦闘の消費コストが低くなったり有利な能力がつく。ロールシステムの進化系。
- BPシステム:ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
- シリーズ新機軸の戦闘コストの計算式。
- 陣システム:ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
- 連携の内容によって追加発生する攻撃現象。これによって連携に新たな戦略性が増えた。使用頻度で信仰する神にも影響が出る。
[編集] アンサガ事件
2002年発売のPS2ゲームソフトアンリミテッド:サガは、これまでのサガとはまったく違うボードゲームRPGとして発売された。が、内容について事前の告知が甘く、取扱説明書も薄い内容でそもそも戦闘システムの一部しか記載が無く、操作がわからないというファンが続出した。セブンイレブンでの予約購入者限定配布の「やり込みチャレンジブック」がなければシステムを覚えるのは困難で、後に発売されたベントスタッフ著の「アンリミテッド:サガ解体真書」は別売りの説明書とまで言われた。また「宝箱の開け方」などの基本システムが、公式サイトでフォローされた(しかし、スクウェア・エニックス合併後公式サイトは閉鎖された)。これに懲りてミンサガでは難易度を下げるだけでなく、説明書やゲーム内のヘルプ機能を充実させた。また、操作については常に簡単な解説が現れるようにした。アルティマニアでも小泉がアンサガの事をルールが不明なゲームと反省している。
ワンダースワンのカードゲームであるワイルドカードに近いシステムは従来のサガファンの反撥を買い、またデザイナーの小泉の『買った人の4割しかクリアできなくていい』と居直ったかのような発言もサガファンを挫折させた。そして発売1ヶ月で中古市場にソフトが溢れ、新品も480円等という破格の投げ売りをされる事態となった。出荷数も多かったために、アンサガを超える暴落を記録したソフトは存在しないほど前代未聞(ロマサガ3を超えた)で、小泉は解体真書でのインタビューでも「喋ると謝りそうになる」と動揺を隠せなかったようだが、現在はミンサガの成功で評価も上がっている。
類似した事件としては石井浩一が手がけていた聖剣伝説シリーズが4作目でジャンルを一新し価格大暴落+ディレクター退職というアンサガ規模の失敗をしている。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- サガフロンティア裏解体真書