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交響曲第9番 (ブルックナー) - Wikipedia

交響曲第9番 (ブルックナー)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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交響曲第9番ニ短調(こうきょうきょくだいきゅうばんにたんちょう)は、アントン・ブルックナーが取り組んだ最後の交響曲である。1896年10月11日に作曲者が他界したとき、終楽章は未完成のまま残された。実際の演奏では、実演・録音とも、完成している第1~第3楽章のみで演奏されることが非常に多い。その一方で第4楽章の補完の試みが続けられており、録音も少しずつであるが増えてきた。

目次

[編集] 作曲の経緯

1884年夏、ブルックナーは交響曲第8番を完成させた後、この作品の作曲に取り掛かった。彼はベートーヴェンの『交響曲第9番』と同じ「ニ短調」という調性を選んだことについて、人々の反応を気にしたものの断固とした決意を持ったまたブルックナーはこの作品の献辞として、譜面にドイツ語で「愛する神に捧ぐ」(dem lieben Gott)と書いた。

しかし1887年からブルックナーはまたもや旧作の改訂に追われ、第9交響曲に集中することができなかった。この改訂で交響曲第1番交響曲第8番の改訂労力を費やしている。

1892年12月に交響曲第8番が初演された後、この曲の作曲に打ち込むことができるようになったが、彼の病状は悪化し続ける。ようやく1894年11月30日に第3楽章を完成させた。その頃、ブルックナーはウィーン大学の講義においてこの作品が未完成に終わった場合には自作のテ・デウムを演奏するように示唆した。第3楽章の完成後、ブルックナーの病状はさらに悪化し、18年間住んだ4階建ての建物の住居で階段の乗降が不可能になったため、皇帝よりベルヴェデーレ宮殿の住居が提供された。

1896年10月11日、最後の日の午前までブルックナーは第4楽章の作曲に携わったが、午後3時過ぎに息を引き取り、結局全曲を完成させることはできなかった。未完成に終わった第4楽章の自筆楽譜は、ソナタ形式の再現部の第3主題部が始まるところでペンが止まっている。現在多くの研究者は、ブルックナーがスケッチの段階において楽章全体を作曲し終えていたと主張しているが、相当数の草稿が失われたままである。

初演は1903年にフェルディナント・レーヴェの指揮によりウィーンで行われた。但し、後述のレーヴェによる改訂版による。

[編集] 楽器編成

ただし未完成作品である以上、この編成に変更が行われた可能性もある[要出典]

[編集] 演奏時間

演奏時間は、演奏により差があるが、いくつかの演奏実例を元に、演奏時間を以下のように紹介する例もある。

  • 第1楽章=23~26分程度
  • 第2楽章=9~11分程度
  • 第3楽章=25~28分程度

第1~第3楽章まで通して約64分と紹介する例もある。


[編集] 楽曲解説

全部で4楽章から成るが、第4楽章は未完成であり、草稿として存在するにすぎない。スケルツォの配置(第2楽章を占める)と調性(ニ短調)は、ベートーヴェン交響曲 第9番との共通点である。

前記のとおり、実演や録音では、完成している3楽章のみで演奏されることが非常に多い。

[編集] 第1楽章

Feierlich, misterioso

ニ短調、2/2拍子。第1主題の再現を欠く自由なソナタ形式。ソナタ形式の展開部と再現部を入れ子にするブルックナーの傾向は、この楽章において完全に具現化されている。この楽章の形式について作曲家のロバート・シンプソンは、「陳述、反対陳述、そして帰結」と言い表している。

第1主題は瞑想的な音楽で8つの動機によって形成され、第63小節からの第7動機で圧倒的な頂点を作る。調性は不安定で無調も存在する。なおこの後全曲に出てくる全ての動機はこれらの変形による。

第2主題は97小節から始まり、イ長調の人間的で慈愛に満ちた響きの基、ポリフォニーの展開を続ける。ここでも旋律は半音階的で2小節で12音全て使い切る部分もあり、調性は不安定である。123、141小節にハ長調の動機が突如として現れる。

第3主題はニ短調、154小節に主音と属音でのみできた動機がオーボエに現れ、それを弦楽が転回系で応えるというものである。クライマックスの後穏やかなヘ長調となり提示部を終える。

展開部では第1主題の動機が拡大して展開し再び第7動機で頂点を迎える。このときには弦の激しい音階を伴い3回繰り替えされ、続いて355小節から後の新ウィーン楽派さえ想起させる斬新でポリフォニックな行進曲が続く。休止の後、今度は400小節から第7動機が憐れみを請うかのように提示されるがこれも短い。

再現部では展開部のほとんどが第1主題によるためか第2、第3主題のみとなり、これらもかなりの変形を受け、大変不協和なクライマックスの後、ワーグナー風の葬送コラールが現れる。

コーダ付近で交響曲第7番第1楽章からのパッセージが引用される。最終ページにおいては i(ニ) で持続する低音声部に重ねて、Ⅱ度のナポリの六度の和音(ト-変ロ-変ホ)が使われ、i度に対して軋るような不協和音を生じさせている。最後には全オーケストラによる空虚五度の和音(ニ・イ)によりニ短調の要素が打ち消され、ニ調により終わる。

[編集] 第2楽章

Scherzo. Bewegt, lebhaft - Trio. Schnell

ニ短調、3/4拍子のスケルツォ。形式は複合三部形式。このデーモニッシュなスケルツォの開始和音はトリスタン和音を移調したもので、主調であるニ短調についても調的に曖昧なところがある。ブルックナーの他のスケルツォ楽章に比べ、民族的な要素はもはやわずかな部分でしかない。

開始から42小節間の間はトリスタン和音の変形と分散により浮遊感を漂わせる。表現主義的なオーケストレーションのもと、ニ短調と嬰ハ短調が対比的に扱われる。43小節からは突如として暴力的なトゥッティとなり聴衆を驚かせる。それはさらに線的書法へと変形し、頂点を迎える。すると115小節からオーボエのコケティッシュな主題が登場する。これは民謡風の明るいものだが、せわしなくなり再びあの暴力的な主題が現れ、バーバリスティックなコーダに向かう。

トリオは遠隔調の嬰ヘ長調が使われ、トリオとしては異例の速さがとられている。ロバート・シンプソンはこの箇所におぞましさを見出し、ブルックナーが偽善的な個々人の振る舞いを書きとめていると標題的に解釈した。舞踊風の主題と、エレジーロンド形式を織り成す。

[編集] 第3楽章

Adagio. Langsam, feierlich

ホ長調、4/4拍子。抒情的な静けさと畏怖の念をもつ音楽。コーダは自作の交響曲第7番》をほのめかしている。形式は変奏曲とも、再現部を伴わない、又は再現部と展開部の融合したソナタ形式とも取れる自由なものである。

冒頭第1ヴァイオリンが9度上昇しつつ、旋律はブルックナーが交響曲第7番などに用いた上昇音階に変容する。第9小節から第16小節にかけて高揚し、第17小節からはフォルティッシモの超越的な頂点に達する。静まったと観るや第29小節からはワーグナーチューバに荘厳なコラール風の主題が挿入される。第1楽章第1主題をほのめかしたこの主題をブルックナーは「生との訣別」と呼んだ。ここまでを第1主題部と見ることができよう。

続く第2主題は第45小節から変イ長調、弦楽に現れる。木管に受け継がれながらも第57小節からは変ト長調の新たな主題に発展する。やがてホルンの動機を加えつつ、最終的にはワーグナーチューバが不協和音を奏でフルートがコーダに登場する伴奏音形を予告する形で総休止となる。

展開部においては幾分自由な主題展開を見せるが第199小節にくるこの部分最後の音楽はロ短調フォルティッシッシモの大変不協和なクライマックスとなり結尾和音では属13の完全和音となる。

コーダは第207小節から始まり調性は穏やかにホ長調へと収束していく。前述の通り第7交響曲の冒頭主題や第8交響曲のアダージョ主題をワーグナーチューバで回想し静かに楽章を終える。

[編集] 第4楽章(未完成)

(ブルックナー自身による速度、発想表記はない。以下に代表的な補筆完成版のものを挙げる。

Misterioso, nicht schnell(SMPC版)
Bewegt, doch nicht zu schnell(サマーレ・マッツーカ版)
Allegro moderato(キャラガン版)

ニ短調、2/2拍子。複雑なソナタ形式。現存するスケッチによると、複雑な和音による序奏、副付点音符による激しい第1主題の後に穏やかな第2主題、第1楽章のコラールが明るい形で現れたホルンによる第3主題と続き、テ・デウムの基本音形に導かれて展開部が始まる。再現部は第1主題が複雑な二重フーガとなって高揚し、第2主題を経て上記のように第3主題部(テ・デウムの基本音形と組み合わされる…後記)まで来た所で自筆譜は途切れている。


[編集] 版問題

ブルックナーはこの曲を改訂するどころか、完成にも至らなかった。そのため(例えば第1番~第4番や第8番のような)、作曲者による異稿は存在しない。また完成された楽章に関しては、資料上の混乱上も少ないので、原典版(オーレル版、ノヴァーク版、コールズ版)の相違も少ない。ただし、原典版出版以前に出版されていた初版(レーヴェ版)は、原典版との相違が非常に極端であった。このほか、未完成の終楽章フラグメント、第2楽章の草稿が出版されているほか、第4楽章を完成させようとする試みもいくつか見られる。

[編集] レーヴェ版 (1906年)

いわゆる「初版」または「改訂版」。完成された3楽章のみからなる。最初の出版譜であり、死後の初演で使われたのもこの版であり1932年まで、この版しか出版されてなかった。フェルディナント・レーヴェは、無断でふんだんに変更を加え、あまつさえ作品全体を改竄してしまっている。ブルックナーの管弦楽法やフレージング、デュナーミクに後知恵を加えただけでなく、ブルックナーの急進的な和声法(たとえばアダージョ楽章の属13の和音など)を旧式に引き戻してもいる。この作曲家の初版スコア群の中でも、特に改訂内容が極端なものとして評価される。今日レーヴェ版は、ブルックナーの意図を不当に捻じ曲げたまがい物と見做され、実際に上演・録音されることはなくなっている。レーヴェ版の演奏は、ハンス・クナッパーツブッシュやフレデリック・チャールズ・アドラーが録音に残した。

[編集] オーレル校訂版 (1932年)

ブルックナーが本当に書いた部分を再現しようと試みた最初の校訂版(第1次全集版)。このオーレル版は、完成された3つの楽章をスコアにまとめ、終楽章のスケッチは別冊の資料にまとめた。第1次全集の他の交響曲とまとめて「ハース版」と扱われることもある。また終楽章については、1994年以降に出版された資料に比べると、情報不足かつ不正確であると言われている。

この版による、完成された3楽章の初演は、1932年にジークムント・フォン・ハウゼッガーの指揮によりミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が行った(両者は1938年HMVにオーレル版の録音を残している)。その初演の演奏会では、交響曲第9番が2度演奏された。つまり、レーヴェ版に次いでオーレル版が比較演奏されたのである。

[編集] ノヴァーク校訂版 (1951年)

完成された3楽章のみの、第2次全集版として出版されたもの。実質的に1932年のオーレル校訂版と差違がない。

[編集] コールス校訂版 (2000年)

完成された3楽章の新校訂版。ニコラウス・アーノンクールが録音した。ウィーンで新たに発見された筆写譜を参照としており、ノヴァーク版に比べ30箇所程度の修正がある。

[編集] そのほかの出版

第2次全集版の一環で、以下のものが出版されている。

  • 終楽章のフラグメント(1994年版、フィリップス校訂)
  • 終楽章フラグメントの自筆稿ファクシミリ版(1996年版、フィリップス校訂)
  • 第2楽章およびトリオの草稿(1998年版、コールズ校訂)
  • 終楽章のドキュメンタリー・スコア(2002年版、フィリップス校訂)

[編集] フィナーレ、およびその完成版について

[編集] 概要

前記「作曲の経緯」にあるとおり、1894年(第3楽章完成の時期)に、ウィーン大学の講義において、この交響曲第9番が未完成に終わった場合には自作のテ・デウムを演奏するように示唆したと伝えられる。

その後ブルックナーは終楽章の作曲を続け、最期の日(1896年10月11日)までペンを取っていたが、楽章の完成には至らなかった。

未完成に終わった第4楽章の自筆楽譜は、ソナタ形式の再現部の第3主題部が始まるところでペンが止まっている。

[編集] 残された草稿について

ブルックナーの死後、回収業者が作曲家の自宅を漁り回った結果、フィナーレの草稿の一部が散逸した。その一部はその後アメリカ合衆国で発見され、オーストリアからワシントンD.C.へと渡っていたことが判明した。現在でも自筆譜の断片の捜索は続けられている。もっとも、現在発見されている自筆譜以外の殆どは失われたとみなす人もいる[要出典]

[編集] 後生の研究者・演奏者の、終楽章に対する見解

終楽章について、以下のような見解もある。ただし、この種の見解には、往々にして、根拠不明の憶測が含まれることに、注意しなければならない。

  • ブルックナーは、頭の中では作品全体の構想を練り上げていたにもかかわらず、コーダを書きとめようとはしなかった[要出典]
  • ブルックナーはコーダにおいて全4楽章の主題を綜合するつもりであった[要出典]
  • ブルックナーはスケッチの段階において楽章全体を作曲し終えていたが、現在、相当数の草稿が失われたままである[要出典]
  • ブルックナーは、死期が迫っているのを感じ、考えが熟さないまま終楽章のスコアに手を付け始めた。現在自筆楽譜で残されている部分についても、必ずしも最終形を意図して書いたわけではなく、まだまだ推敲を重ねていくつもりだった(ブルックナー研究家の川崎高伸による)。
  • ブルックナーは終楽章を完成できる自信がなく、その逃避のために第1交響曲の改訂に長時間を費やしてしまった(指揮者のギュンター・ヴァントによる)。

[編集] 「終楽章=テ・デウム」発言に対する、後生の研究者・演奏者の見解

「終楽章が未完であれば代わりに『テ・デウム』を」の発言は、1894年(第3楽章完成の時期)のものである。この考えをブルックナーが最期まで持っていたのかどうかは定かではない。

「交響曲第9番の終楽章=テ・デウム」とするのは、形式上・調性上(ハ長調)・曲のスタイル・管弦楽編成など、あらゆる面から無理のある考え方であると、多くの研究者・演奏者が認めている。ブルックナーがその辺りをどう考えていたのかは、定かではない。

上記を鑑み「交響曲第9番の終楽章=テ・デウムとするために、経過部分を作曲しようとした」との説もある。残された終楽章の草稿の一部にテ・デウムと類似の音型が使われている部分があることから、終楽章草稿の一部または全てを、前述のような「経過部分」と見なす考え方もある。

それらとは別に、以下のような考え方もある。実のところはブルックナーのテ・デウムを第4楽章に代用するという提案も、第4楽章完成の口実として使われてきた[要出典]。というのもこの提案は、(たとえばジョン・フィリップスなどの研究者によると)作者自身、この作品がアダージョ楽章で終わるのを望んではいなかったというように読めるからである。

[編集] フィナーレ演奏について

[編集] 完成された3楽章のみによる演奏

研究者の間では、ブルックナー自身は、この3楽章で演奏を終わらせることは望んでなかったという判断を与える人が多いが、現実には終楽章は完成していないので、完成している3楽章のみで演奏されることが多く、少なくとも現時点では、一般的に行われている。注釈なしで「交響曲第9番」の演奏と言う場合、通常はこの形(完成された3楽章のみの演奏)を意味する。

[編集] テ・デウムを含めた演奏

ブルックナーによる「終楽章が未完であれば代わりに『テ・デウム』を」の発言を尊重し、同一演奏会で『テ・デウム』を演奏する実例も、決して少なくない。この場合、連続して演奏する場合もあるし、休憩を挟んで演奏する場合もある(『テ・デウム』を先に演奏することもある)。実際、この第9交響曲が初演されたときにも、同じ演奏会で『テ・デウム』が演奏された。

ただし、いずれにしても「交響曲第9番の終楽章=テ・デウム」として演奏されるのではなく、同じ演奏会で「交響曲第9番」と「テ・デウム」が演奏されるという形になるのが一般的である。

[編集] 終楽章を含む演奏、あるいは終楽章の演奏

終楽章を完成(補作)した上で演奏する例も、近年複数例きかれるようになった。補作完成した終楽章については後述する。通常、先行の3楽章に補作完成された終楽章が続けて演奏される(まれに、終楽章単独で演奏・録音される場合もある)。この形で演奏される場合、通常「終楽章付き」「完成版」などの注釈が付く。

一方、ブルックナーの遺した断片を演奏する例もある。ヨアフ・タルミがキャラガン完成版(1983年)を録音した際には、完成版とは別に、断片をそのまま演奏・録音し、LP(CD)に同時収録していた。これによって、ブルックナーが実際に作曲したものがどれだけ実用化され、校訂者の想像力がどれだけ含まれているのかを、聴き手が直接確認できるとも評された。

2002年ザルツブルク音楽祭では、アーノンクールとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団がフィリップス校訂の演奏用版を用いてフィナーレの断片を演奏・録音した。この演奏会はアーノンクールによる解説付きのワークショップ形式で行われ、休憩をはさんだ後にコールス校訂版の第1~第3楽章が演奏された。ただし、コーダのスケッチは和声の指定のみの部分が多いとして取り上げなかった。また、アーノンクールは「ブルックナー以外の音は一切入っていない」と述べたが、実際は校訂者による補筆が数ヶ所含まれている。

[編集] 終楽章の補作完成について

ブルックナーの草稿を基に終楽章を補作完成(ひいてはこの交響曲第9番を完成)させようとする試みは、たびたび繰り返されてきた。

この楽章の大部分がほとんど完全にオーケストレーションされていることに加え、ブルックナー独特の作曲スタイルを考慮すると、あといくつかの草稿があればきちんと終楽章全体を再構成できるはずだとの考え方もある。とはいえ、草稿が存在しない部分は作曲者のあずかり知らぬオリジナルになるのは、やむを得ない。

[編集] キャラガン完成版 (1983年)

ウィリアム・キャラガンは交響曲第2番の校訂者でもある。この第9番終楽章の補作は、1979年から1983年にかけて行われた。

脱稿の翌1984年モーシェ・アツモン指揮アメリカ交響楽団によってカーネギー・ホールで初演された。ヨアフ・タルミの指揮で、イギリス・シャンドス社に録音されている。

サマレ=マツーカ版やそれ以前の補筆完成版とともに1934年出版のオーレル校訂の資料不足かつ不正確なフィナーレ草稿を基にしているので、ブルックナー的でないとも評される。

その後新しく発見された資料を基に、キャラガンはその後終楽章の補作を改めて行った(これについては後述)。

[編集] サマレ=マッツカ完成版 (1986年)

キャラガンの労作とは別個に、ニコラ・サマレとジュゼッペ・マッツーカが協力して1986年にまとめ上げた。後述のいわゆるSMPC版(サマレ=マッツカ=フィリップス=コールス完成版)に比べると、前述の通り資料不足のためか先行3楽章とはやや異なった書法となった。エリアフ・インバルによって録音されている。

[編集] SMPC完成版 (1992年)

この企画のために、サマレとマッツーカのチームにジョン・A・フィリップスとベンヤミン=グンナー・コールスが加わった。

第1に1986年のサマレとマツーカの2人は1983年から84年の調査によって、それまで知られていなかった相当数のフィナーレ新資料を発見するに至った。ただし前述のサマレ=マッツーカ版ではそれが反映されているとは言いがたく、学会でも珍音楽扱いされていた。この状況を打開するためジョン・A・フィリップスとベンヤミン=グンナー・コールスが加わった(ただしマッツーカは多忙のため87年から離れることになった)。

そしてようやく1990年に徹底的な分析が試みられ、SMPC版が誕生した。これはクルト・アイヒホルン指揮リンツ・ブルックナー管弦楽団のカメラータ東京盤に録音され、脚光を浴びた。1996年にはフィリップスが単独で改訂を行った。ヨハネス・ヴィルトナーの指揮によりナクソス・レーベルに録音されている。

2004年コールスの最新の調査によって、略記されたスケッチから完全に消えてしまったフーガ部の8ページ相当の内容を復元することが可能となった。ただしこの時点でフィリップスと他の2人は対立し結果としてフィリップスはこのプロジェクトから離脱した。結局サマレとコールスの2人で新版が出された。

[編集] キャラガン完成版 (2006年改訂版)

前記キャラガンは、1983年に一旦終楽章の完成版を完成させたものの、その後新たに発見された資料を元に内容改訂を行った。この版は、2006年9月28日東京ニューシティ管弦楽団が世界初演を行った。なお、この演奏会では同時にトリオ第2稿の世界初演も行われた。 [1]

演奏時間は約26分。全曲通しては約90分。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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