ナポリの六度
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ナポリの六度、ナポリの六の和音、あるいは単にナポリとは、西洋音楽において、主音の短2度上(半音上)の音を根音とする長三和音のことである。
この和音は元来、短調において、主音の4度上の音(下属音)を根音とする短三和音(下属和音)の第5音(いちばん上の音。属音)を短2度上げ、根音の短6度上に置いたことに由来する。ナポリの六度の「六」はこの意味である。従って、この短6度音を根音と考える現代の和声学に従う楽曲においても、下属音を最下音に置く第1転回形(六の和音という)の形態として使用されることが多い。
下属和音に準ずる和音として、サブドミナントの機能を持ち、特に短調において、IIの代理和音として使用されることが多い。「ナポリの六」はドミナントに進行するのが原則であるため、原則的にトニカに解決されてはならない。
伝統的にはNの記号で表され、また日本で多く使われる和声の教科書である和声 理論と実習では-II(長調では○-II)の記号で表される。
[編集] 各調における構成音
音名は英語式による
長調 | ハ | 嬰ハ | 変ニ | ニ | 変ホ | ホ | ヘ | 嬰ヘ | 変ト | ト | 変イ | イ | 変ロ | ロ | 変ハ | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
短調 | ハ | 嬰ハ | ニ | 嬰ニ | 変ホ | ホ | ヘ | 嬰ヘ | ト | 嬰ト | 変イ | イ | 嬰イ | 変ロ | ロ | |||
第5音 | A♭ | A | B | B♭ | B | C♭ | C | D♭ | D | E | E♭ | E | F♭ | F | F♯ | G♭ | G | A |
第3音 | F | F♯ | G♭ | G | G♯ | A♭ | A | B♭ | B | C♭ | C | C♯ | D♭ | D | D♯ | E♭ | E | F♭ |
根音 | D♭ | D | E | E♭ | E | F♭ | F | G♭ | G | A | A♭ | A | B | B♭ | B | C♭ | C | D |
[編集] 由来
「ナポリ」の名は、17世紀、イタリアのナポリの音楽家がこの和音をオペラの見せ場で多用したことに由来する。もっとも、この和音はそれ以前からよく使われてはいた。19世紀ではショパンが《夜想曲》において多用した。
[編集] 付加音
ナポリの和音に、根音の短7度上の音を追加して使用されることもまま見受けられる。これは、ドミナントの機能を持ち、俗に裏コードと呼ばれる。また、根音の長7度上の音を付加することによって、トニカの機能を持たせることもある。