ホットスポット (地学)
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ホットスポット(hotspot)とは、プレートより下のマントルに生成源があると推定されるマグマが吹きあがってくる場所若しくはマグマが吹きあがってくるために(海底)火山が生まれる場所のことをいう。1990年代まではほとんど位置を変えることはないと考えられていたが、J・A・タルドゥーノらの天皇海山列に関する研究によりハワイホットスポットが南へ移動していたことが発見され、それまでの常識が大きく覆った。以来、地球科学のさまざまな分野に大きく波紋を投げかけている[1]。 以下の記述は、ホットスポットが不動点であることを前提としている。
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[編集] ホットスポットの成因
ホットスポットの成因を簡単に述べると、プリュームテクトニクスでいうところのホットプリュームの先端が地殻(若しくはプレート)の弱い部分を突き破って現れた火山ないしそれに類する地形ということができる。 すなわち、海洋プレートが海溝で沈み込むとその先端が上部マントルと下部マントルの境界と考えられるおよそ地表より670kmの深さで滞留し、スラブとなる。スラブがちぎれて「メガリス」となって下部マントルの「海」に沈むと周辺のマントルを冷却する(コールドプリューム)とともに対流をおこすことになり、ホットプリュームが発生する。 ホットプリュームの先端がプレートの弱い部分を突き破って火山となる。すなわちホットスポット自身はプレートの動きとは直接関係がなく、マントル内部の動きが地上に現れたものといえる。
[編集] ホットスポットの地球科学上の意味
ホットスポットの地球科学上の意味は、前述のようにマントル内部のプリュームテクトニクスが地表に顔を出したものであるほかに、プレート運動の証言者という意味がある。
ホットスポットの典型例として挙げられるのは、ハワイ諸島及び天皇海山群である。ハワイ諸島及び天皇海山群は、アリューシャン列島とカムチャッカ半島の付け根部分からハワイ諸島まで「く」の字を横倒しにしたように並ぶ古い海底火山(海山)と火山島の列であるが、北端では7000万年前、海山列の折れ曲がる北緯40度付近では、4200万年前であることが判明している。つまり北から順に古い海底火山(海山)と火山島が並んでいることが証明された。このように岩石の年代からホットスポットの軌跡が描かれていると考えられる場所は世界で20ヶ所ほどあると考えられている。Minsterは、それらのホットスポットの軌跡のある場所がプレートの動く方向と一致しているか検証したところ、ほぼ一致するという結果が得られたばかりか、太平洋プレート、ココスプレート、ナスカプレート、インドプレートの動きが他のプレートの動きよりも早いことまで判明した(Minster et.al.1974)。反面同時に、ハワイ諸島及び天皇海山群がホットスポットによって生成された海底火山が火山島となり、プレートの移動によって活動をやめ、ベルトコンベアーに載せられたように順次北西方向に連なる海山となって海底に眠っていることも証明された。
[編集] 現在ホットスポットが所在する主な場所
- ハワイ諸島
- タヒチ島及びその付近
- アイスランド(大西洋中央海嶺と重複)
- アゾレス諸島(同上)
- アセンション島(同上)
- トリスタン=ダ=クーニャ諸島(大西洋中央海嶺の東方、南緯38度)
- アフリカ大地溝帯
- イエローストーン
- ガラパゴス諸島
- カナリア諸島(大西洋、モロッコの西方の海域)
- カーボベルデ(大西洋、西アフリカ、セネガルの西方の海域)
- カロリン諸島(太平洋、マリアナ諸島の南方、ニューギニア島の北方)
- イースター島
- マルケサス諸島(南太平洋、タヒチの北東)
- レユニオン島(インド洋、マダガスカルの東方)
- セント・ヘレナ島(大西洋中央海嶺の東方、南緯15度)
- サモア(南太平洋)
ホットスポットの発生は、大陸の移動には影響されないが、ホットスポットがプレート内部で多く発生することによって、大陸移動の契機になりうると考えられている。つまり、ホットスポットができるとプレートに放射状に3方向へ割れ目ができるが、そのようなホットスポットが多数あることによって割れ目同士がつながり中央海嶺の成因になるということである。実際現在の大西洋中央海嶺はホットスポットと重複している場所が多く確認されており、アフリカの大地溝帯もアフリカスーパープリュームの地表部分をなすホットスポットであり、巨大な割れ目となって大陸が分裂し、将来的に中央海嶺が形成されるだろうと考えられている。
[編集] ホットスポットの種類及び形状
ホットスポットの種類は大きく分けて2種あると考えられる。地震波トモグラフィーの画像によって南太平洋の海底の下のマントルが非常に高温であることとその高温域がハワイに枝状につながっていることが明らかになった。つまりタヒチは南太平洋の高温域である下部マントルのスーパープリュームが部分的に地表に直接的に現れた姿であり、ハワイはスーパープリュームの影響を受けつつ上部マントルの第3次ホットプリュームが表出したものであると考えられるようになった。このタヒチ型とハワイ型の違いは、地震波トモグラフィーの画像のほかに双方の火山噴出物の違いからも明確である。ハワイで噴出する玄武岩は、地表からの深さ200kmよりも浅い海嶺玄武岩の元になる物質と200kmよりも深い「始源的」ともいうべきマントルの物質の混合物であるが、タヒチのそれは、鉛の極端に少ない玄武岩で「始源的」なマントルの物質が吹き出したものである。タヒチの他にはセントヘレナが知られている。タヒチの噴出物である玄武岩に鉛が少ないのはプレートが沈み込む段階で鉛が失われるという説と核に鉛が吸収されるという説があるが実際にはその理由はわかっていない。
一方ホットスポットには多様な形状がみられる。
- ハワイ型;断続的にマグマのかたまりが吹き上げてくる。
- 東経90度海嶺型;東経90度海嶺は、インド洋、ベンガル湾の南方の海底にある。連続的にマグマが吹き上げてくる。
- オントンジャワ型;オントンジャワ海台は、現在のニューギニア島の東方の海底で1億2千年前(中生代)に活動を行っていた海底火山の一種。スーパープリュームの先端部分がリソスフェアを突き破って、だらだらと大規模に溶岩を吹き出し巨大な海台を形成する。オントンジャワの噴出規模は周辺の海台を合わせると8,000万m³に及び、これはデカン高原の200万m³の40倍もの規模である。
- 中部太平洋海山列型;プリュームが吹き上げる中で散在的に高温のマグマ部分があって、それが噴きあげて散在的に海底火山や海山、火山島を形成する。
- ナウル海盆型;ハワイ型とオントンジャワ型の中間であり、オントンジャワほど大規模ではないが、プリュームが吹き上げる物質を数回に2~3回にわたって多量に噴出する。
[編集] 脚注
- ^ J・A・タルドゥーノ (2008 4). “ホットスポットは動いていた”. 日経サイエンス 三八 (五): 64. ISSN 0917-009X.
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 上田誠也・佐藤任弘他編 『岩波講座地球科学11 変動する地球II―海洋底―』 岩波書店、1979年、ISBN 4000102818。
- 都城秋穂・安芸敬一編 『岩波講座地球科学12 変動する地球III―造山運動―』 岩波書店、1979年、ISBN 4000102826。
- 丸山茂徳・伊藤笙他編 『朝日ワンテーママガジン11 最新・地球学』 朝日新聞社、1993年、T602011111300。
理論: | 大陸移動説 - アイソスタシー - マントル対流説 - 海洋底拡大説 - プルームテクトニクス |
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地球の内部構造: | 地殻 - マントル(上部マントル・下部マントル) - 核(外核・内核) // リソスフェア(プレート) - アセノスフェア - メソスフェア |
プレート境界: | 発散型 : 海嶺 // 収束型 : 沈み込み帯(海溝 - トラフ) // トランスフォーム型 : トランスフォーム断層 |
地殻変動: | 地震 - すべり - 褶曲 - 断層 - 地溝 - 地塁 - 断裂帯 - 構造線 - 付加体 - 造山運動 - マグマ - 火山 - 噴火 - ホットスポット |
ユーラシア: | アムール - 揚子江 - 沖縄 - スンダ - ビルマ - モルッカ海 - バンダ海 - ティモール - アナトリア - エーゲ海 |
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フィリピン海: | マリアナ |
太平洋: | カロライナ - 北ビスマルク - 南ビスマルク - マヌス - フツナ - バルモーラル暗礁 - コンウェイ暗礁 - ニューヘブリデス |
北アメリカ: | オホーツク - ベーリング |
カリブ: | パナマ |
ココス: | ファンデフカ - リベラ |
南アメリカ: | スコシア - サンドウィッチ - シェトランド - アルティプラーノ - 北アンデス |
ナスカ: | ガラパゴス - イースター - ファン・フェルナンデス |
南極: | - |
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超大陸: | ヌーナ - ローレンシア - コロンビア - パノティア - ロディニア - パンゲア - ゴンドワナ - ローラシア - ユーラメリカ - アフロ・ユーラシア - アメリカ - アメイジア - パンゲア・ウルティマ |
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古期地殻変動: | カレドニア造山帯 - ヘルシニア造山帯 - ウラル造山帯 - 中央アジア造山帯 - タスマン造山帯 - アパラチア造山帯 - インド大陸 - 洪水玄武岩 |
主要なプレート境界: | 発散型 : 大西洋中央海嶺 - 南東インド洋海嶺 - インド洋中央海嶺 - 南西インド洋海嶺 - 太平洋南極海嶺 - 東太平洋海嶺 - 大地溝帯…その他 // 収束型 : ペルー・チリ海溝 - 中央アメリカ海溝 - カスケード沈み込み帯 - アリューシャン海溝 - 千島・カムチャツカ海溝 - 日本海溝 - 伊豆・小笠原海溝 - マリアナ海溝 - 琉球海溝 - フィリピン海溝 - トンガ海溝 - ケルマデック海溝 - ジャワ海溝 - プエルトリコ海溝…その他 // 環太平洋造山帯 - アルプス・ヒマラヤ造山帯 |