ピアノソナタ第30番 (ベートーヴェン)
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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第30番ホ長調作品109は、異形の大作《ハンマークラヴィーア》の次に書かれたピアノソナタで、続けて作曲された第31番、第32番とともにベートーヴェン最晩年の円熟期を示す作品である。
前作《ハンマークラヴィーア》ソナタが演奏時間40分を要する大曲なのに対して、このソナタは20分に満たないコンパクトな仕上がりとなっており、曲の重心のほとんどを第3楽章に置いている。全体的に叙情性に富んだ温かみのある曲である。
- 作曲時期:1820年完成、翌年出版。
- 献呈:マキシミリアーネ・ブレンターノ嬢に献呈。
[編集] 曲の構成
- 第1楽章 Vivace, ma non troppo
- ホ長調。ロンド形式、あるいは不完全なソナタ形式。流れるような叙情性を持つ2つの主題が繰り返されるが、第1主題は2/4拍子でヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ、第2主題はこれとうってかわって3/4拍子でカデンツァ風のアダージョ・エスプレッシーヴォである。しかしエトヴィン・フィッシャーは、2つの主題の速度記号の落差は外見上だけのものであり、全体が一つの型として作られたかのように即興的に演奏されねばならないと講義している。やや不満足感を残したままあっさりと終止し、第2楽章に続く。
グレン・グールドがこの第1楽章を高く評価していたことは有名。
- 第2楽章 Prestissimo
- ホ短調。ソナタ形式だが、きわめて速く演奏されるため間奏曲風の印象を与える。第1楽章の透明な明るさを否定する暗い激情に満ちている。前楽章の終わりから二重線を置いて転調しそのまま続いているため、本来ならば第1楽章の長大なコーダと見るべきだが、楽想が完全に独立しているため第2楽章と解釈するのが通例である。
- 第3楽章 Andante molto cantabile ed espressivo (Gesangvoll, mit innigster Empfindung)
- ホ長調。変奏曲形式。"じゅうぶんに歌い、心からの愛情をもって"と付記されている。主題と6つの変奏からなる。
- 主題:3/4拍子。ゆったりとしたテンポで静かに曲が開始される。特に高度な作曲技法は使われておらず、純粋なメロディーが歌のように流れる。
- 第1変奏:3/4拍子。Molto espressivoの指示が与えられている。曲の雰囲気や主題のテンポは主題から引き継がれている。装飾音が巧みに使われている。
- 第2変奏:3/4拍子。第1変奏とは打って変わって軽快なメロディーで開始される。間に対照的な旋律を挟みながら見事な対比をなしている。
- 第3変奏:2/4拍子。対位法を駆使した情熱的でテンポの速い変奏。パッセージが左右で何度も入れ替わるのが印象的。
- 第4変奏:9/8拍子。非常に高度な対位法を用いた温かみのある変奏。後半部分のアクセントの付け方が特徴的。
- 第5変奏:2/2拍子。後期のソナタによく見られるフーガ的変奏。スタッカートを多用した快活な変奏になっている。
- 第6変奏:3/4拍子。トリルを多用した非常に高貴な変奏で、天上の音楽と評す者もいる。最後は次第に弱まりながら主題が回想され、静かに曲を閉じる。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ | ||
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初期 |
選帝侯ソナタ | ソナチネ | 19 | 20 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 (悲愴) | 9 | 10 | 11 | 12 (葬送) |
|
中期 |
13 (幻想曲風ソナタ) | 14 (月光) | 15 (田園) | 16 | 17 (テンペスト) | 18 | 21 (ヴァルトシュタイン) | 22 | 23 (熱情) | 24 (テレーゼ) | 25 (かっこう) | 26 (告別) | 27 |
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後期 |
28 | 29 (ハンマークラヴィア) | 30 | 31 | 32 |