SPICA
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SPICA (スピカ、Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics) は日本の次世代赤外線天文衛星。口径3.5mという大口径望遠鏡を、JEM/SMILES (超伝導サブミリ波リム放射サウンダ) に搭載したものと同様の機械式冷凍機により絶対温度4.5Kという極低温にまで冷却し、高感度の赤外線天体観測を可能にすることを目標にして、基礎研究が進められている。
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[編集] 概説
2005年(平成17年)度に、宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部・宇宙理学委員会に提案が行われた、次世代の赤外線天体観測衛星計画のこと。これまで、赤外線領域における大型の天体観測衛星計画は、アメリカ合衆国の進める次世代大型赤外線天文衛星である。しかしながら、全天捜天を目的にしているため、精密分光観測などは予定されていない。そのため、地球軌道に近いところに展開した大型天体観測衛星を用いることで、長期間に渡る精密観測を実施することで、宇宙史の謎の解明につなげようという計画が持ち上がっている。本計画は、その研究を実現するための提案(プロポーザル)であり、今後の基礎研究や実現可能性を含めた検討が行われるべきものとして記載した。
[編集] 今後
国立天文台で進めている超軽量鏡や精密分光観測装置の基礎研究を継続。宇宙空間運用計画の立案、打ち上げミッションなどとの調整が残っている。
[編集] 新たな技術
JEM/SMILES(愛称「きぼう」/宇宙空間暴露モジュール)に搭載した機械式冷凍機。これまでの赤外線衛星では、液体ヘリウムを用いるため、運用期間が1年程度という短いという弱点があった。それを克服するために、宇宙空間の温度の低さを利用した、放射冷却と機械式冷却技術を用いることで、4.5Kという低温を確保する技術。
4.5Kならば近赤外線から可視光までを正確に捉えることが出来るため、SPICAミッションでは、この領域を対象にした精密分光観測を行う。
日本で計画している衛星としては始めて、太陽-地球系のラグランジュ点(L2)に衛星を同期させることによって、長期間の安定した観測を可能にする。また、この位置ならば障害物などが少ないため、観測時間も十分に確保できるなどのメリットがある。
[編集] 関連項目
[編集] 研究分野
[編集] 推進機関
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
- 宇宙科学研究本部(ISAS)
- 国立天文台
[編集] 国際推進機関
- アメリカ航空宇宙局(ジェット推進研究所)
- ヨーロッパSPICA コンソーシアム
- アメリカBLSS研究チーム
- 韓国天文台
[編集] 技術開発協力企業
- NEC東芝スペースシステム(株)
- 住友重機(株)
- 三菱電機(株)
- NEC 航空宇宙システム(株)
[編集] これまでの赤外線天文衛星
- あかり (赤外線天文衛星)
- IRAS (赤外線天文衛星)
- スピッツァー宇宙望遠鏡 (赤外線宇宙望遠鏡)
[編集] 外部リンク
- 宇宙史の解明に挑む 次世代赤外線天文衛星SPICA (JAXA 第5回宇宙科学シンポジウム 将来計画(2005年1月)