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D言語 - Wikipedia

D言語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

D言語
パラダイム マルチパラダイム
登場時期 1999年
開発者 ウォルター・ブライト
最新リリース 2.014, 1.030 / 2008年5月16日
型付け 強い静的型付け
主な処理系 DMD, GDC
影響を受けた言語 C言語, C++, C#, Java, Ruby, 関数型言語
ウェブサイト www.digitalmars.com
  

D言語(ディーげんご, D programming language)はC言語の後継を目指したプログラミング言語のひとつ。

Digital Mars社のウォルター・ブライトによって作られたマルチパラダイムプログラミング言語であり、オブジェクト指向プログラミングも可能である。

ちなみに、Dと名乗るスクリプト言語が別に存在するが、こちらはSunが開発し同社のSolarisやアップルのMac OS X v10.5に搭載されているシステム情報取得機能「DTrace」用の言語であり、由来も言語としての位置づけもまったく異なるので注意が必要。

目次

[編集] 概要

C言語は元来OS記述用に開発された言語であり、複雑高度なアプリケーションを書くための機能が充実しているとは言い難い。一方で幅広いプラットフォームでの動作実績には抜きん出たものがあり、結局開発者の最大公約数としてC言語を用いる事が一般化している。このような状況に対して、C言語をより適切な言語で置き換えようという試みがなされてきたが、どれも決定打に欠けているのが現状である。

C言語の後継としてはC++が有名であるがその複雑さも随一である。Javaは複雑さを適度に抑え、豊富な標準ライブラリを持つが、仮想マシンを必要とするためパフォーマンスを求める場合には敬遠される。かといってC言語では低レベルすぎるといった、それぞれの言語の使いづらさに対して現実主義的な回答を模索した言語といえる。

2007年1月3日(現地時間1月2日)にようやくDMD(Digital Mars社製のD言語コンパイラ)のバージョン1.0がリリースされた。比較的新しい言語であるため、近年発達してきた概念や機能が多く取り込まれている。

具体的には、例外処理やテンプレートなどへの対応がなされているほか、正規表現やスレッドソケットなども標準ライブラリに含まれている。事前・事後条件のチェックや不変条件のチェック、debug識別子の導入などプログラムのデバッグ・保守にたいして重点的にサポートしている点もこの言語の特徴である。またコンパイラの作成を非常に重視しており、言語仕様そのものがコンパイラ側の効率を意識して作られている。これはC言語が幅広く普及した背景に処理系のポーティングの容易さがあったことを踏まえており、関連する解析ツールなどの開発環境までを含めて「言語の実用性」と捉えた現実的な考え方を反映している。

[編集] 特徴

  • 実用的 (goto[1]、インラインアセンブラ[2]、ABI[3]、C言語とのバイナリ(ABI)互換機能[4]、C++とのバイナリ(ABI)一部互換機能[5](2.xのみ))
  • ネイティブコードを出力する非常に高速なコンパイル
  • ワンパスで実行ファイルやライブラリが作成可能
  • 依存を考慮してコンパイルが可能 (rdmdのみ)
  • 前方参照の導入
  • 強いtypedef、型の別名定義
  • 複素数、虚数、列挙型、function型、delegate型
  • 機能強化された配列(動的サイズ変更、スライシング、連想配列、組み込みの文字列)
  • 参照型のクラス (Objectから派生)
  • 値型の高機能な構造体[6] (コンストラクタ、デストラクタ、コピーコンストラクタ、アラインメントの変更など。2.xのみ)
  • 実行時型情報
  • 文字列switch、goto case文、名前付きblock、foreach文
  • ガベージコレクション[7]
  • プリプロセッサの撤廃
  • 契約による設計例外処理、スコープガード
  • 単体テスト
  • 暗黙の型推論
  • 改良されたテンプレート構文、テンプレートミックスイン、可変個引数、タプル
  • ネストされた関数
  • 遅延評価が可能
  • 文字列をコードとしてミックスイン
  • 任意のファイルのコンパイル時読み込み
  • 関数のコンパイル時の実行
  • 多くのリテラル(関数リテラル、delegateリテラル、連想配列リテラル、構造体リテラルなど)
  • 変数や配列のアクセス制御(invariant、const、enum。2.xのみ)
  • Traits(型特性、関数特性、クラス特性など。2.xのみ)
  • 関数の引数の束縛(std.bind)、Variantクラス(std.variant。2.xのみ)
  • レキシカルクロージャ(2.xのみ)
  • スレッド (スレッドクラス(std.thread)、クリティカルセクション、スレッドローカルストレージ(2.xのみ))
  • 関数/メソッドの意図しない乗っ取りの軽減(オーバーロード集合など。2.xのみ)

など

  • バージョン2.0以降に実装の計画があるものの仕様が定まっていない機能(2006年現在)

[編集] 開発ツール

デバッガはC言語やC++と同じobjectフォーマットを使用するためCやC++用に書かれたものが使える。既存の開発ツールについては以下のページが詳しい。
http://www.prowiki.org/wiki4d/wiki.cgi?EditorSupport

[編集] 歴史

  • 1999年12月にウォルター・ブライトが考案。
  • 2007年1月にバージョン1.0リリース。
  • 2007年6月にバージョン2のブランチが切られる。
  • 2007年8月にD言語の第1回国際カンファレンス[1]がアメリカ合衆国のシアトルで開催された。

[編集] サンプルコード

[編集] Hello, world!

import std.stdio;  // シンボルを読み込む
 
void main()  // プログラムのエントリーポイントは C と同じ main
{
    writeln("Hello, world!");
}

[編集] 引数の和

import std.stdio, std.conv : to;
 
void main(string[] args)  // D の配列は要素数の情報を持っている
{
    int sum;
    foreach(arg; args[1..$])  // 変数 arg は型推論により string 型になる
    {                         // 配列のスライシングも組込みでサポートされる
        sum += to!(int)(arg);  // to はテンプレート関数
    }
    writeln(sum);
}

[編集] 関連項目

  • ABA Games - D言語を使用したゲーム開発で有名
    • BulletML
  • Eclipse (統合開発環境) - プラグインを利用することでD言語の開発環境として利用できる
  • Code::Blocks - D言語開発環境としても利用可能

[編集] 外部リンク

ウィキブックス
ウィキブックスD言語関連の教科書や解説書があります。

[編集] リファレンス

[編集] リソース

[編集] その他

[編集] ライブラリ

[編集] 参考文献

  1. ^ 文 - プログラミング言語 D 2.0#Goto 文
  2. ^ インラインアセンブラ - プログラミング言語 D 2.0
  3. ^ ABI - プログラミング言語 D 2.0
  4. ^ Cとのインターフェイス - プログラミング言語 D 2.0
  5. ^ C++とのインターフェイス - プログラミング言語 D 2.0
  6. ^ 構造体, 共用体 - プログラミング言語 D 2.0
  7. ^ ガベージコレクション - プログラミング言語 D 2.0


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