鰓曳動物
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?鰓曳動物門 | ||||||
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鰓曳動物(えらひきどうぶつ、Priapulida)は、棘の生えた伸縮性の吻を持つ海洋性の動物である。鰓曳動物の化石は、少なくともカンブリア紀中期からのものが知られている。分類学的に最も近縁な門はおそらく動吻動物と胴甲動物で、これらの3門はまとめて有棘動物と呼ばれる。節足動物と有爪動物のほかには、脱皮動物の中で肉眼で見えるサイズであるのはこの門の動物のみである。バージェス動物群や澄江動物群などでこれに属すると見られる化石がいくつも発見され、カンブリア紀には主な捕食者として栄えたと考えられる。鰓曳動物門に属する動物としては現在16種が知られている。
鰓曳動物は円筒の形状をした虫に似た動物で、体の前方中央に口あり、その周りに口器や触手は一切ない。体表面は環状に区切られ、棘が並んだ輪を持つことがあり、それはしばしば咽頭にまで続いている。消化器は直線状で、体後端の肛門まで繋がるが、Priapulus では腹部末端が肛門を越えて伸び、一または二の鰓状の突起となる。これを鰓と見て、かつてはこの類をエラヒキムシ(鰓曳き虫)と呼んだ。神経系は環状部と腹面神経索からなり、外胚葉との原始的なつながりを残している。
感覚器、循環器、呼吸器については特化したものを持たない(酸素の運搬に関与するタンパク質はヘムエリトリンである)。体内に広い空洞があるが、これは排出器、生殖器とは関係ないため体腔とは見なされず、血体腔であると考えられている。
鰓曳動物は雌雄同体で、雄性器と雌性器は排出器と一緒になり、片側で肛門とつながっている。
成長については詳しいことは分かっていない。鰓曳動物門には3つの属が含まれる。
- Priapulus属の P. caudatus はとげで覆われ、南極海などの冷たい海に生息する。P. bicaudatus は北大西洋と北極海に生息する。
- Priapuloides属の P. australis は南極海周辺に生息する。
- Halicryptus属の H. spinulosus は北方の海に生息し、90m以浅の比較的浅い泥の中に住む。