近藤効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
近藤効果(こんどうこうか、Kondo effect):金属は通常 温度を下げていくとその電気抵抗も減少していくが、金属中に非常に低い濃度(希薄)で、磁性を持った不純物(普通磁性のある鉄原子など)が存在する場合、ある温度(=近藤温度)以下になると、電気抵抗が温度の低下に対し増加する現象が起こる。 これが近藤効果である。 現象そのものは古くから知られていたが、その物理的機構は1964年に日本の近藤淳が摂動の2次の効果まで考慮して初めて理論的に解明した。 近藤はこの仕事により 1973年に日本学士院恩賜賞を受章した。
近藤効果を含めた電気抵抗の温度依存性は
とかける(ここにRBはボルン近似での抵抗、Dはバンド幅、ρは状態密度)。近藤は右辺第二項を導いた。
また帯磁率は
とかける。
近藤の理論は絶対零度では物理量にlog発散をともなう(近藤温度で摂動論が破綻する)。この困難はフィリップ・アンダーソンのpoorman's scalingや、ケネス・ウィルソンの繰り込み群によって解決され、局在スピンの状態からパウリ常磁性の状態に連続的に移り変わることが示された。ウィルソンはこの業績により1982年にノーベル物理学賞を受賞した。芳田奎は、磁性不純物の基底状態が伝導電子と局在スピンが反強磁性的に結合した一重項(Kondo singlet)であることを証明した。とりわけ低温度に近づくにつれ、エネルギーギャップが生じ、フェルミ面がギャップ中に埋もれてしまうことに起因し電気的特性の温度依存性が半導体(あるいは絶縁体)的に振舞う相領域におけるものを近藤絶縁体という。
磁性不純物のスピンと伝導電子のスピンとの相互作用(散乱)が重要な意味を持つ。
最近、量子ドットにおける近藤効果も報告されている。