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辰馬財閥 - Wikipedia

辰馬財閥

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

辰馬財閥(たつうまざいばつ)は、江戸時代中期以降、灘西宮の銘酒「白鹿」の醸造元である辰馬家 当主辰屋吉左衛門が初代辰屋(当時の屋号)で酒造業を創業したことにはじめる。阪神財閥の1つである。

目次

[編集] 辰馬家

辰馬家は、寛文2年(1662年)以来、西宮で酒造業を営み、銘酒白鹿を生産した。酒の江戸積出との関連で、自家帆船辰丸による海運業にも乗り出し、また余裕資金の貸出を行っていた。幕末から明治前期にかけて、辰馬家では数多くの分家が生じた。分家は酒造業を独立して営んだ。

  • 十代吉左衛門の婿養子悦蔵の北辰馬家白鷹を生産)
  • 十代の四男喜十郎の南辰馬家
  • 一一代の娘の松辰馬家
  • 南辰馬家初代の娘の柳辰馬家、女婿の勇治郎が当主となる。

このうち、松辰馬柳辰馬両家は酒造業を廃業し、宗家と共同出資で事業を行うようになった。とくに、柳辰馬家の辰馬勇治郎は、宗家の共同出資者でもあるとともに、宗家の幹部社員として協力した。これに対し、北辰馬家南辰馬家両家は完全に宗家とは独立する方向に進んだ。

[編集] 財閥の形成

辰馬宗家の事業は、酒造業の必要から出た海運や資産運用のための金融などで、明治以降、海運部門が汽船を多く所有、運航するとともに、酒造業とは独立して顧客を開拓するようになっていった。宗家は、その他、米殻、薪炭の取引、マッチ製造業等を兼営した。家業の法人化は、明治42年の辰馬汽船合資会社設立が最初である。社長には辰馬勇治郎が就任した。辰馬汽船は、新船の建造・購入につとめ、大阪の岸本汽船と対抗する存在となった。

第一次大戦に入ると、ますます営業を拡充して、大正5年資本金150万円の株式会社に改組、翌年1000万円に増資した。9年さらに1500万円に増資したところで、大戦後の海運不況に遭遇した。

辰馬家は、海運業に引き続き、大正6年には辰馬本家酒造株式会社(50万円)を設立し、酒造部門も法人化した。大正期には、西宮鉱業(長崎県の炭鉱を経営)、夙川土地(宅地売買)、辰馬海上火災保険(東京海上との共同出資)等と多角経営網を拡大した。西宮鉱業は失敗に終わった。

第一次大戦後、辰馬汽船はきびしい海運不況に直面し、長期にわたって損失、無配を継続した。大正10年、資本金を1500万円から1000万円に減資、さらに15年に500万円へと減資することになる。経営困難は、昭和12年5月にいったん300万円に減資した後、8月、1000万円に増資するまで続いた。

辰馬汽船と同様、辰馬海上火災も経営難に苦しんだ。同社は、大正8年に資本金200万円(払込50万円)で創立された。社長には辰馬吉左衛門が就任した。株式総数4万株のうち、宗家が1万5千株、辰馬一族と役員従業員が1万7千株を引きうけ、残り8000株は東京海上火災が所有した。

第一次大戦の不況期に、損保業界の競争激化、辰馬汽船の経営難の影響に加え、昭和3年、横浜火災との共同引受による海上船体保険の買再保険取引で異常な損害を生じたことで、経営は危機的状態に陥った。会社解散も議論されるにいたった。

[編集] 大番頭・山県勝見

この危機に直面して、山県勝見外国課長は独り整理存続を主張し、辰馬吉左衛門社長を説得して、会社の方針を解散から再建へと転換させた。山県は、辰馬宗家の縁戚に当たる酒造家の辰馬卯一郎家に生まれた上、宗家一三代主人で社長の辰馬吉左衛門の要請にもとづき、一三代の実弟浅尾豊一の次女富貴子と結婚した。富貴子がかつて一三代が一時養嗣子となったことのある東京の酒問屋山県家の名跡を継いでいたので、山県家に入夫する形をとった。

山県は、昭和7年以降、辰馬海上火災の常務と辰馬汽船の取締役を兼ね、13年、辰馬汽船社長に就任、15年、辰馬海上火災副社長、18年、社長に就任した。なお山県が社長に就任した翌年、辰馬海上火災保険は、他の3損保と合併し、興亜海上火災運輸保険を設立し、山県は初代会長に就任した。

山県は、大戦後の昭和21年にいったん辰馬汽船社長を辞任したが、23年、新日本汽船(22年に辰馬汽船が社名変更)社長に就任し、日本の海運業界の指導的経営者であった。参議院議員も兼ね、第三次~五次吉田内閣の国務大臣、厚生大臣であった。

[編集] 辰馬合資会社

以上記した、辰馬家の複数の家業会社の株式を集約的に所有して、事業の運営方針を統括する目的で昭和12年3月26日、辰馬合資会社(資本金2000万円)が設立された。設立を推進したのは一三代吉左衛門の長男吉男と山県たで、24日に一三代が隠居したわずか2日後のことであった。家督は吉男が相続し、18年に一三代が死んだ後、十四代吉左衛門を襲名した。 辰馬合資設立時点の事業内容は次の通りである。

  • 辰馬合資 社長辰馬吉男 専務理事山県勝見
  • 辰馬本家酒造 社長吉男 副社長辰馬勇治郎
  • 辰馬汽船 社長勇治郎 副社長山県
  • 辰馬海上火災 社長辰馬吉左衛門 常務山県
  • 夙川土地 社長吉男 取締役勇治郎、辰馬悦蔵
  • 辰馬商会(株式会社、台湾)社長山県
  • 辰馬商会(合資会社、大連)代表大川幾之助
  • 辰馬海運商会(合資会社)代表豊浦宗太郎
  • 兵庫鉄工所 取締役山尾敬次郎ほか
  • 財団法人辰馬学院理事長勇治郎

[編集] 持株会社指定

辰馬合資会社が改称した合資会社辰馬本家商店は、昭和22年9月、持株会社指定を受けた。新日本汽船、興亜火災海上(昭和29年に社名変更)に対する支配力を失い、税制改革の影響もあり、辰馬宗家には大打撃であった。

その後、新日本汽船山下新日本汽船ナビックスラインとなり、平成11年4月商船三井と合併することになる。

また興亜火災海上保険は、現在 の日本興亜損害保険となっている。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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