超重力理論
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超重力理論(ちょうじゅうりょくりろん)とは、一般相対論を超対称化したものである。量子化した際は、単なる一般相対論より紫外発散が弱くなるため、量子重力理論の文脈において1980年代初頭に精力的に研究された。超対称性のゲージ理論と考えることもできる。対応するゲージ場がグラヴィティーノである。
[編集] 概説
素粒子物理が、自発的に破れた超対称性理論で記述されているならば、一般相対論も自発的に破れた超重力理論に拡張されていると考えるのが自然である。それにともなってグラヴィティーノも質量をもつ粒子になると考えられる。LHCで実験的に確かめられる可能性がある。
通常の超重力理論は繰り込み不可能であるため、それ自身で超高エネルギーにいたるまで整合性の取れた理論であると考えることは出来ないが、重力と結合した超対称な理論の通常のエネルギー領域を記述する理論は必然的に超重力理論である。そのため、標準模型の超対称性を持った拡張の研究者は日常的に超重力理論を用いる。
また、超弦理論の低エネルギー極限、つまり、弦の長さを点、即ちゼロにすると超重力理論になるので、超弦理論の研究の一部として、さまざまな時空の次元のさまざまな超重力理論とその古典解をしらべることがなされている。
[編集] N=8 超重力理論の有限性
概説で述べられているように、超重力理論が1980年代初頭に注目をあつめた一因として、超対称性の存在により紫外発散が繰り込みが可能になるのではという期待があったことがあげられる。
通常の N=1 超重力理論、また N=2, N=4 超重力理論に関しては、1990年代初頭には繰り込めない発散が生じることが知られていたが、最大の超対称性をもつ N=8 超重力理論に関しては決着はついていなかった。
ところが、2006年になって、超弦理論、M理論を援用した議論から、4次元の N=8 超重力理論は超高エネルギーに至るまで有限な理論なのではないかという傍証があがるようになり、俄に研究が活気づいている。2006年冬には研究会が開かれ[1]、研究の現状に関して意見交換がはかられた。
残念ながら N=8 超重力理論はカイラリティを破らないなどの理由から、もし現在の予想のようにこの理論が有限な理論であったとしても、現実の素粒子物理を記述する為には役に立たないだろう。